長年にわたり、女児向けアーケードゲーム市場を牽引してきた二大巨頭、『アイカツ!』と『プリパラ』。良きライバルとして互いを意識し、市場のパイを広げてきた両シリーズが、「アイカツ!」のあかりGenerationと「プリパラ」の10周年を機にコラボレーション映画『アイカツ!×プリパラ -THE MOVIE 出会いのキセキ!-』で手を取り合った。
当時、筐体に夢中になった子どもたちも、今や中高生や大人になっているかもしれない。そんな「かつてのファン」を再び劇場に呼び戻し盛り上がりを見せている。
アニメ制作会社や、筐体ビジネスを展開する企業も異なる両作品は、いかにして一つのスクリーンに集結したのか。プロジェクトのキーパーソンであるタカラトミーアーツの大庭晋一郎氏、バンダイの原田真史氏に、企画誕生の経緯から、異なる世界観を融合させた制作の舞台裏、そしてIPが目指す未来について、話を聞いた。

潜在的なファンを可視化できる周年プロジェクト
――今回のコラボ映画が誕生した経緯をお聞かせください。
大庭:流れとしては、バンダイナムコピクチャーズとタツノコプロが、別件で一緒に仕事したことがあり、『アイカツ!』と『プリパラ』の10周年に何か一緒にできないだろうかという話から始まりました。今回が始めてのコラボというわけではなく、雑誌で同じテーマのカード付録を展開したり、DNPのドリームコラボフェスというプロジェクトでプリティーシリーズと『アイカツ!』で一緒に展示会とバーチャルライブを行うなど、これまでの歴史の積み重ねがありましたので、一緒に映画を作ることに対するハードルはそんなに高くはなかったです。僕らはおもちゃ屋として、アニメ制作陣と一緒にIPを作っていくという点ではひとつの大きなチームなので、アニメ制作側から相談を受けたという感じです。
原田:今回のプロジェクトは、4つの象限で考える必要があって、バンダイとタカラトミーアーツが展開する筐体ビジネス、それからそれぞれのアニメの現場があるわけです。今回はアニメ側の象限からお話が始まったということです。
――どちらも現場の制作と製作との一体感のあるチームということなのでしょうか。
大庭:そうですね。ストーリーもアニメとゲームどちらが先かというより、お客さんに体験してもらいたいことを考えて、常に一緒に考えてきました。
原田:アニメで面白いことをやればゲームで拾って、またはその逆もあるので、お互いをリスペクトしています。

――両作品は、ライバル関係でもあると思います。これまでお互いの事業を意識することは、やっぱり多々あったのでしょうか。
大庭:それは意識しないといけないですよね。色々なところでお話していますけど、『オシャレ魔女 ラブ and ベリー(ラブベリ)』という大先輩がいて、タカラトミーアーツがこの市場にもう一回チャレンジしようと『プリティーリズム』を始めて孤軍奮闘していた中、『アイカツ!』が新規参入してきたのは、お店やお客さんに対して、こういうブームがあるよと認知を広げることにつながったと思っています。1つのIPで頑張るより、全体のパイを広げるためには良かったなと思っています。
原田:筐体ビジネスは、現地にまで足を運んでもらわないといけませんから、バイを広げて足を運んでもらう人を増やすことが重要ですからね。
――今回のコラボ映画制作には、協力して全体のパイを広げるという狙いもあるのでしょうか。
大庭:今回は純粋に10周年を盛り上げたいという思いです。
原田:それぞれのシリーズにファンの方がいますが、新作が始まれば、そちらを盛り上げないといけないので、普段はどうしても新しい方を優先せざるを得ません。でも、これまでのキャラクターにもファンがいるわけですから、そうした方たちにもきちんと向き合いたいんです。
大庭:今回の映画では、当時遊んでくれていた人たちがたくさん来てくれています。やっぱりちゃんと覚えていてくれているんです。こういう作品を作ると、それがきちんと可視化されるのがこういう周年プロジェクトのいいところですね。

――潜在的なファンが可視化されることは、それぞれの事業の今後にとっても大きなメリットがあるわけですね。
大庭:そうですね。長い間IPを続けていくと、コアなファンだけ残っていると思って、その人たちだけに向けて何かやろうと考えがちですけど、節目にこうした映画を作ると、きちんと戻ってきてくれる人たちがいるんだというのはIPにとって幸せなことです。









