新潟国際アニメーション映画祭が開幕、OP上映『クラメルカガリ』塚原重義監督が登壇し歓び語る

第二回新潟国際アニメーション映画祭が開幕!オープニング上映作品として、塚原重義監督の『クラメルカガリ』が上映された。

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第二回新潟国際アニメーション映画祭
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第二回新潟国際アニメーション映画祭が3月15日(金)に開幕。オープニングセレモニーが新潟市内の日報ホールで開催され、オープニング上映作品として、塚原重義監督の『クラメルカガリ』が上映された。

3月15日から20日の日程で、国内外から60本近くのアニメーション映画が上映される。長編アニメーションに特化した映画祭は海外でも珍しく、アジアで最大規模のアニメーション映画祭を目指して昨年誕生した。


セレモニーは、フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎氏の開会宣言から始まった。井上ディレクターは、今年初めに発生した能登半島地震に触れ、新潟も被害に遭ったこと、亡くなった方・今も避難生活を送っている方にお見舞いの言葉を述べた。「13年前の東日本大震災の時にも、エンタメ産業に関わる人間として、何ができるだろうかと悩んだが、震災後に再開した東北の映画館や本屋に多くの人が訪れているのを見て、エンタメが希望を与えることを実感した。世界も戦争などで大変な時代が、アニメーションが希望を与え、世界をつないでくれると思う」と開会を宣言した。

続いて、今回の審査員を務める、ノラ・トゥーミー氏、マイケル・フクシマ氏、齋藤優一郎氏が登壇。審査員長のトゥーミー氏は「初めて日本に来たが、すでに素晴らしい体験をさせてもらっている」と語った。フクシマ氏は、「素晴らしいプログラムばかりなので、自分が3人くらい欲しい」と言い、齋藤氏は「新潟から新しい長編アニメーションの可能性を発信したい」と審査に向けての豊富を述べた。

オープニング上映作品に選ばれた、『クラメルカガリ』はこの日が世界初上映。上映前には、プログラム・ディレクターの数土直志氏と塚原監督が登壇、オープニング作品に選出された経緯を語ってくれた。

数土氏は塚原監督の才能に昔から目を付けていたそうで、長編映画『クラユカバ』の制作を聞きつけて、映画祭に出品してほしいと直接お願いしていたそうだ。その時に、もう一本制作をしていることを塚原監督から明かされ、こちらをオープニング、しかもワールドプレミア上映することになったという。

『クラメルカガリ』は、『クラユカバ』制作の際にクラウドファンディングを実施したところ、支援者の中に小説家の成田良悟氏がいたことで、サイドストーリーの小説を依頼したそうだ。それが分厚い小説となったことで、これはもう一本アニメを作れるのではとプロデューサーからの発案で実現した企画だという。

ちなみに『クラユカバ』の方は、同映画祭のコンペティション部門に選出されている。本公開は4月12日からで、『クラメルカガリ』と『クラユカバ』の同時上映となる。

『クラユカバ』

塚原監督は、上映後にも登壇。塚原監督にとって一般観客の前で上映をするのは、昨年のファンタジア映画祭での『クラユカバ』上映と、この日だけだそうで、国内での上映を経験するのはこれが初めて。「気持ちがいっぱいになって、まだ実感がわかない」という。

『クラユカバ』は長年構想していた内容で、メッセージを強く込めた作品だが、『クラメルカガリ』はより純粋にエンタメとして作ったとのこと。どちらの作品も同じ世界を舞台にしているが、『クラメルカガリ』はより明るい作風になっている。主人公の少女・カガリと幼馴染の少年・ユウヤの成長物語で、社会とどう関わっていくかを描いた作品とのことだ。

非常に特異かつ、奥行きを感じさせる世界観を持った両作品だが、この世界でもっと物語を作ってみたいかとの質問に対し、塚原監督はもっと深堀りしていきたいと語り、さらなる続編やスピンオフ作品の可能性をにじませた。また、この世界は塚原監督にとって、物語を作りやすい道具立てのようなものだそうで、ロジックはないが時間がかかるアニメ作りにおいて、飽きないのだという。

最後に、ワールドプレミア上映に訪れた観客に向けて、映画祭の残りの期間を楽しんでほしいとメッセージを述べ、舞台挨拶は幕を閉じた。

《杉本穂高》

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映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。