【レポート】小学生たちが東宝スタジオ見学で大興奮!是枝裕和監修「映画と夏の7日間」が開催

東京都と東京都歴史文化財団が主催、是枝裕和氏が監修するプログラム「映画と夏の7日間」が開催。子供たちが東宝スタジオに集い、プロの現場の熱気を肌で感じながら、表現することの楽しさや工夫する面白さを学んだ。

映像コンテンツ 制作
東京都、「ネクスト・クリエイション・プログラム」の「映画と夏の7日間」の模様
東京都、「ネクスト・クリエイション・プログラム」の「映画と夏の7日間」の模様
  • 東京都、「ネクスト・クリエイション・プログラム」の「映画と夏の7日間」の模様
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  • 東京都、「ネクスト・クリエイション・プログラム」の「映画と夏の7日間」の模様
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東京都と東京都歴史文化財団が主催する子供向け芸術文化体験プログラム「ネクスト・クリエイション・プログラム」の一環として、世界的な映画監督・是枝裕和氏が監修する新プログラム「映画と夏の7日間」が開催された。

このプログラムは、小学4年生から6年生までの子供たちが、7日間を通して映画鑑賞から企画、撮影、編集まで、映画制作の全工程をプロフェッショナルの指導のもとで体験するもの。そのプログラムの一環として、プロの映画制作現場である東宝スタジオのツアーが実施された。映画作りに興味・関心を持った子供たちが東宝スタジオに集い、プロの現場の熱気を肌で感じながら、表現することの楽しさや工夫する面白さを学んだ。

映画制作の聖地を探検!最先端技術と歴史に触れたスタジオ見学

日本映画の数々の名作を生み出してきた東宝スタジオの見学ツアーは、本プログラムのハイライトの一つ。普段は決して立ち入ることができない映画制作の裏側の世界に足を踏み入れた子どもたちは、一様に目を輝かせていた。

まず訪れたのは、映像の編集や音響作業を行う「ポストプロダクションセンター」。プロが使う編集室では、映画がどのように繋がれていくのかを学び、アフレコルームでは、俳優の声以外の響きが無いように吸音がほどこされた不思議な空間となっており、プロならではのこだわりに驚きの声を上げていた。また音響調整のMAルームやアフレコルームも見学。東宝スタジオはアフレコブースに対して、ディレクションルームが斜めに設置されている。これは音響監督たちが俳優たちの表情も見られるようにという工夫だという。子どもたちは初めて入るアフレコルームに興奮。普段入ることのない特別な空間に興味津々だった。

MAルームでは『ゴジラ-1.0』の1シーンを5.1chのサラウンドで視聴し、その迫力の音響と迫真のCGに「まるで本物みたいだった」と感嘆していた。

最も子どもたちの興奮度が高かったのは、最新鋭のバーチャルプロダクション撮影システムが設置されたスタジオの見学だ。巨大なLEDパネルに映し出される首都高速道路の8K映像を背景に、まるで車で走行しているかのような撮影を疑似体験。最新鋭の映画制作技術に触れ、その没入感とリアリティに圧倒されていた。

その後、東宝スタジオ敷地内にあるメイクアップティメンションズの作業場にも潜入。人間の遺体の特殊造形物には子どもたちも騒然。また、俳優たちの顔の型が壁一面に飾られ、多くの特殊メイクが所せましと並んでいる。子どもだけでなく大人でも興奮する空間だった。

自分たちの手で音を創り出すフォーリーに挑戦

スタジオ見学の後は、映画に臨場感を与える「音」作りを体験。「フォーリーアーティスト」と呼ばれる音響効果のプロフェッショナルの指導のもと、子供たちは自分たちが制作したストップモーションの短編動画に音をつける作業に挑戦した。

プロのアーティストは、パンケーキを食べるシーンの「ふわふわ」した音を出すために、何種類ものパンケーキやチーズケーキを実際に食べて音を探求したというエピソードを披露。一つの音にかける情熱と創造性に、子供たちは真剣な表情で聞き入っていた。

いよいよ実践の時間。子供たちは、映像に合わせて椅子をガタガタ鳴らしたり、床を踏み鳴らして足音を表現したり、用意されたおもちゃを使ってユニークな効果音を生み出したりと、チームで協力しながら作業を進めた。タイミングを合わせるのは難しい作業だが、試行錯誤の末に自分たちの作った音が映像とぴったり合った瞬間には、部屋中に大きな歓声が響き渡った。音が加わることで、自分たちの作品に命が吹き込まれていく過程を実感し、大きな達成感を得たようだ。

物語はどうやって生まれる?プロから学ぶ物語の作り方

午後は、講師の砂田麻美監督による、「物語の作り方講座」が開かれた。砂田監督は、面白い物語を作る上で最も大切なのは「どんな登場人物なのか(キャラクター)」を考えることだと語る。

講座では、プロが実際に使用する「脚本」と「絵コンテ」が紹介された。脚本がセリフや登場人物の動きを文章で記した「設計図」であること、そして絵コンテが映像のイメージを絵で共有するための「地図」であることが、実際の映像と比較しながら分かりやすく解説。解説に用いられたのは、砂田監督が監督した荒井由実の『ひこうき雲』のMVなどだ。

「どんな人が、どこで、何をして、どうなった話なのかを考えると、物語の骨格が見えてくる」とアドバイス。子供たちは、これから自分たちが作る映画の主人公について想像を膨らませ、物語のアイデアを活発に議論した。この講座を通して、子供たちは物語を創造するための具体的な手法を学び、自分たちの手でゼロから作品を生み出すことへの期待に胸を躍らせていた。

完成した作品は、9月21日、東京都写真美術館で上映される予定だ。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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