【コラム】トランプ「映画関税」第一の狙いは外国映画の排除ではない

世界の映像産業を混乱に陥れたトランプ大統領の「映画関税」発言。その真意は、ハリウッド映画の国内回帰にある。

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Photo by Andrew Harnik/Getty Images トランプ大統領
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  • 出典:トランプ大統領のTruth Sicialのアカウントよりhttps://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114452117143235155

米国時間の5月4日、トランプ大統領が、「米国以外の国で作られた映画全てに100%の関税を課す」と発表したことで、世界の映像産業に激震が走っている。

トランプ大統領の真意を巡って、様々な憶測が生まれているが、外国映画を米国市場から排除するのが狙いなのかと考える人も一定数いるようだ。

だが、おそらくトランプ大統領の第一の狙いは外国映画の排除ではない。この「映画関税」は、ハリウッドのプロダクションを国内に回帰させることが目的だと考えられる。奇妙な話に聞こえるかもしれないが、標的は米国映画なのだ。


ハリウッドの「ランナウェイ・プロダクション」現象

わかりやすくするため、自動車産業に例えよう。

トランプ大統領は、米国国内の製造業復活を掲げて世界各国に関税を課した。だが、米国メーカーの自動車も中身の部品は、日本や中国、メキシコなど世界中から輸入している。米国メーカーの自動車であっても、中身の製造地は国際的であり、部品にも関税がかかることで、米国産の自動車の値段まで上がってしまうと懸念されている。

トランプ大統領は、高い関税が嫌なら部品も含めて米国内に工場を作れと要求している。中身も100%メイド・イン・アメリカにすれば関税はかからないというわけだ。

ハリウッド映画も、自動車メーカーと実は似ている部分がある。表向きは米国映画だが、実際には米国内で制作されていない作品が増えている。


《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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