フジテレビジョンが2025年3月期上半期を減収で折り返した。日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京の各社が増収で通過する中、フジテレビジョンが取り残された格好だ。
第1四半期の番組制作費を抑制するなど経費削減を進めて黒字化を果たしているものの、肝心の売上高が伸び切らない。今のフジテレビの苦境を物語っている。ただし、FODの有料会員が150万を突破するなど、周辺事業は育ちつつある。グループ全体で収益を拡大する体制づくりが成長のポイントとなりそうだ。
『逃走中 THE MOVIE』は3日間の興行収入が1.1億円と不発
フジテレビジョンの2025年3月期第2四半期累計(2024年4月1日~2024年9月30日)の売上高は、前年同期間比1.2%減の1,156億円だった。
同期間における日本テレビ放送網の売上高は前年同期間比1.8%増の1,386億円、テレビ朝日が同2.7%増の1,117億円、TBSテレビが同0.6%増の1,103億円、テレビ東京単体は同6.5%増の281億円だった。

※決算資料より筆者作成
フジテレビは放送収入が減収基調にあるが、前期は映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 ・運命』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編・決戦』の興行収入が50億円を超えるヒットとなった他、総来場者数が84.7万人を超えた「アレグリアー新たなる光ー」など、映画とイベントが好調だった。そのため、2024年3月期上半期は4.8%の増収。今期はその反動減に見舞われている。
フジテレビは看板番組である「FNS27時間テレビ」を2024年7月20日から21日にかけて放送。局を挙げて映画の宣伝を行ったが、結果を出すことができずに終わった。
その直前、7月19日には『逃走中 THE MOVIE』を公開したが、週末3日間の興行収入は1.1億円と振るわない結果に。人気バラエティー番組20周年記念として製作され、番組のシステムをそのまま映画化するという野心的な取り組みだった。ヒカキンや安田大サーカスのクロちゃんなど、おなじみの番組出演者が役を演じたものの、酷評ばかりが目立つ結果となった。
『逃走中 THE MOVIE』は子ども向けなのか大人向けなのかが判然とせず、ターゲットを絞り込めていなかった印象がある。20周年記念の映画化ありきで、企画段階での練り込みが足りなかったのではないか。
今年はパリオリンピックが開催されたため、フジテレビの放送収入は増収だった。業種別のスポット収入においては、「化粧品・トイレタリー」、「交通・レジャー・観光」、「自動車・関連品」が好調だ。
取り組みを強化した2023年からFODの好調ぶりが際立つ
フジテレビで特に勢いが強いのが配信事業だ。
2024年7月1日~7月31日の期間、自社配信プラットフォームFODとTVerの広告付き配信で月間1億再生の大台を突破。民放で月間再生数が1億回を超えたのは初めてだ。FODは2024年8月に有料会員数が150万人を突破している。
2024年4月以降、『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』や『HERO』など、フジテレビの大ヒットドラマを毎月5タイトルずつ配信する取り組みをスタート。女性層の開拓に成功した。今年の夏は「お台場冒険王2024」に登場したアーティストの『めざましライブ』を生配信。会員数の底上げに一役買っている。映画『逃走中』にも出演したJO1、ONE N' ONLY、IS:SUEなどのライブシーンを放送しており、やはり女性層を主要なターゲットとしているようだ。