韓国でロケ・撮影をする際に受けられる支援は?TIFFCOMで海外作品向けプログラム・事例が紹介【レポ】

韓国映像委員会(KFCIN)・韓国映画振興委員会(KOFIC)・ソウルフィルムコミッション(SFC)による資金援助の詳細と、『ドライブ・マイ・カー』を手掛けたプロデューサーのイ・ウンギョン氏と山本晃久氏による事例紹介が行われた。

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TIFFCOM「外国映像作品向け韓国の支援プログラムの紹介」
編集部撮影 TIFFCOM「外国映像作品向け韓国の支援プログラムの紹介」
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10月31日(木)にTIFFCOMにてセミナー「外国映像作品向け韓国の支援プログラムの紹介」が開催された。

会場では韓国でのロケを希望する海外制作者および韓国との共同製作を検討しているプロデューサーに向けて、韓国映像委員会(KFCIN)・韓国映画振興委員会(KOFIC)・ソウルフィルムコミッション(SFC)による資金援助の詳細と、『ドライブ・マイ・カー』を手掛けたプロデューサーのイ・ウンギョン氏と山本晃久氏による事例紹介が行われた。本記事では3団体の支援内容と事例を順に紹介していく。

韓国映像委員会(KFCIN)の支援

韓国映像委員会は韓国15地域のフィルムコミッションと4つの映像関係団体で構成されており、機関・企業・人材連携の役割を担う。主に韓国での撮影を計画している映画関係者に、資料提供やロケハン費用の補助を行っている。航空券、宿泊費、車両、コーディネーターを支援し、通訳の紹介や地域のフィルムコミッションと協議の上で追加的な支援も可能となっているとのこと。各地域では「シナリオ開発」「ロケハン支援」「ロケーションインセンティブ」の支援があるが、今回の発表ではKFCINも行っているプリプロダクションのロケハン支援について詳しく説明された。具体的には以下の通り。

📍支援対象
・60分を超える長編映画・ドキュメンタリー・テレビシリーズ・ウェブドラマ
・シリーズの場合、全体のシリーズが60分を超えていること

📍支援内容
・最大2名の航空券(エコノミークラス)
・最大6泊の宿泊
・ロケーションコーディネーターおよびロケハン車両(最大6日まで)

📍申請および支援結果の通知
・ロケハン予定日の4週間前に申請書および必要書類を提出。受付後、2週間以内に審査結果、内容などを通知。
・申請は随時受け付けるが予算がなくなり次第終了
(KOFICと地域インセンティブプログラムの両方に応募することも可能)

詳細:https://engfilmkorea.or.kr/incentives/support.html

プレゼンテーションを行ったソ・スミン氏は注意事項として、本事業は全体予算の上限があるため、申請を考えている場合は上半期に申請するほうが良いとアドバイスをしていた。

映画振興委員会(KOFIC)の支援

映画振興委員会は、韓国の映画産業の強化を目指し、映画制作者の雇用機会を創出、アジアにおける最高の映画製作拠点として韓国を確立するために活動をしている。今回のセッションでは、KOFIC国際交流チームのパク・ジンヘ氏より映画映像ロケーションインセンティブ支援事業についての紹介がされた。

📍支援対象
・長編映画:国際共同製作作品
・長編映画またはシリーズ作品:韓国以外の出資が80%以上の国際プロジェクト
・年内に撮影が終わる作品

📍支援内容(最大3億ウォン
・韓国で10日以上撮影し、制作費8億ウォン以上のQPE(※)を支出するプロジェクトには最大25%を返金
・韓国で5日以上撮影し、制作費を1億ウォン以上8億ウォン未満のQPEを支出するプロジェクトには最大20%を返金
※ QPE(Qualifying Production Expenditure):韓国の映画/映像制作者が提供する物品およびサービス、韓国人またはビザを所有し1年以上韓国に居住する個人によって提供されるサービス。(撮影開始日から遡って3ヵ月以内に発生した費用はQPEとして請求可能。主要キャストの総費用は総人件費の30%を超えてはならない。)

📍応募手続き
①申請前
・韓国での撮影初日の30日以上前に提出すること
・脚本の最終草案、撮影スケジュール、費用見積など
②撮影後
・韓国での制作完了後、2ヵ月以内に提出
・報告書、撮影データのコピー、支出報告書など

📍評価基準
・韓国内のロケ地、施設、企業を使っているか
・韓国人の制作者(監督、脚本、制作なども含む)が参加しているか
・国際的な成功が見込まれるか

本プロジェクトは昨年までは韓国外の資本が80%以上出資した長編映画またはTVシリーズに対してのみ支援を行っていたが、今年からは長編映画に限り国際共同製作プロジェクトも支援の対象に拡大された。KOFICの支援実績にはマーベル映画の『ブラックパンサー』や『パスト ライブス/再会』、TVシリーズではApple TV+の「パチンコ - Pachinko」、Netflixの「愛をこめて、キティより」などが挙げられる。そのほか、注意事項として、主演俳優に対する人件費は全体人件費の30%を超えることはできないことや、アニメ・台本なし番組・バラエティ番組等は対象外となるため、細かい要件はサイトをチェックしてほしい。

詳細:https://www.koreanfilm.or.kr/eng/coProduction/locIncentive.jsp

ソウルフィルムコミッション(SFC)の支援

ソウルフィルムコミッションは、ソウルでの撮影に関する情報・アドバイスの提供、撮影許可取得のサポート、オンラインロケーションライブラリ・プロダクションディレクトリの提供、国内産業支援のためのインセンティブ・作業空間の提供を行っており、2007年から海外映像作品を対象としたインセンティブプログラムを運営している。支援には「企画・開発」「プリプロダクション」「撮影」の3段階がある。今回はスタッフのメン・ジュンヨン氏より同プログラムについて紹介された。

企画・開発

ソウルが舞台の作品へのシナリオ創作をサポート。海外の制作者が最大30日間ソウルに滞在しながら執筆できるように作業場所・往復航空券を支援する。毎年3月から4月に募集しており、メールにて申請書を受け付けている。さらに、韓国の制作会社やプロデューサーとのネットワーキングもサポートしているとのこと。毎年世界中から30本以上の応募があり、そのうち5,6本ほどのプロジェクトを採択しているそうだ。

📍支援対象
・ソウルが舞台の長編映画、ドキュメンタリー、テレビドラマ、ウェブドラマを企画・開発している監督、プロデューサー、脚本家
・トリートメントまたはシナリオ草稿を提出できる作品(韓国語または英語)
※プロデューサーは脚本家もしくは監督とチームとして申請すること

📍支援内容
・ソウル往復航空券(エコノミークラス、最大2人)
・作業場所(指定のホテルまたはレジデンス、最大30日)
・ロケーションツアー、会議スペースなど

プリプロダクション

撮影チームが3日間ソウルでロケーションハンティングする費用をサポート。最低4週間前に、英語版ホームページより申請する必要がある。

📍支援対象
・ソウルで撮影を計画している海外映像作品(上映時間が最低60分以上ある長編映画、ドキュメンタリー、テレビ作品、ウェブシリーズ)
・監督、助監督、プロデューサー、撮影監督、美術監督、ロケマネージャー
・監督または主演俳優の契約書、製作費の50%以上の投資を受けたことを証明する投資契約書、放映確約書、配給契約書、先行販売契約書のうち2つを提出

📍支援内容(最大2人)
・ソウル往復航空券(エコノミークラス)
・宿泊費:最大120万ウォン(1日1名あたり最大20万ウォン/約2万円)
・韓国内ロケーションコーディネーター・車両レンタル(3日間)

撮影

ソウルで使用した制作費の最大30%(最大3億ウォン)を現金でサポート。ソウルでの撮影開始4~6週間前に、英語版ホームページより申請する必要がある。

📍エントリー資格
・休日を除きソウルでの撮影期間が4日以上あること
・上映時間が最低60分以上ある長編映画、ドキュメンタリー、テレビ作品、ウェブシリーズ
・プロデューサーが申請すること
・韓国との国際共同製作作品の場合、海外からの投資が20%以上あること
・配給契約書または先行販売契約書の提出が可能な作品

📍支援内容
・撮影に関わるソウルでの支出の最大30%
・基本的に最低10%をサポート。残りの10~20%はソウルの広報・経済効果を基準に決定。

詳細:https://english.seoulfc.or.kr/ict/ov/

ソウルフィルムコミッションの支援対象はソウルに限定される。そのため、韓国の全地域をカバーする場合はKOFIC等と組み合わせて支援を受けることができる。

日韓でタッグを組んだ『ドライブ・マイ・カー』の実体験

『ドライブ・マイ・カー』のプロデューサーであるイ・ウンギョン氏と山本晃久氏が事例を紹介してくれた。本作は広島を中心に撮影されたが、当初は韓国・釜山を舞台にすることを構想していたという。


《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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