『ゴジラ-1.0』『怪物』企画プロデューサーが語る、世界で戦う日本コンテンツの勝ち筋【レポ】

第15回コンテンツ東京にて特別講演「世界で戦う日本コンテンツの勝ち筋 ~『ゴジラ-1.0』『怪物』制作の裏側~」が開催。東宝のプロデューサー・山田兼司氏が登壇し、国際映画祭やアカデミー賞で存在感を発揮した邦画2作品を通しての経験と、世界で勝負する上で重要なポイントを教えてくれた。

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7月3日(水)東京ビッグサイトで開催された第15回コンテンツ東京にて特別講演「世界で戦う日本コンテンツの勝ち筋 ~『ゴジラ-1.0』『怪物』制作の裏側~」が開催された。

東宝のプロデューサー・山田兼司氏が登壇し、国際映画祭やアカデミー賞で存在感を発揮した邦画2作品を通しての経験と、世界で勝負する上で重要なポイントを教えてくれた。インタビュアーはエンタメ社会学者の中山淳雄氏が務めた。

山田氏はテレビ朝日で報道局を経て、映画・ドラマプロデューサーとして10年以上勤務。ドラマ『BORDER』シリーズ、『dele』などを手がけ、2019年に東宝に移籍した。東宝では、第76回カンヌ国際映画祭にて2つの賞を受賞した『怪物』、第96回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』等を企画・プロデュースしている。昨年日本をはじめ世界中で劇場公開されたこの2作品に共通しているのは、邦画実写作品として海外の権威ある場で高い評価を得た点だ。この2作品での経験から、日本のコンテンツが世界で受け入れられていくためには何が必要なのか、そのポイントを教えてくれた。

『怪物』とカンヌ国際映画祭

世界3大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭は、世界で最も権威がある映画祭と呼ばれている。芸術性が高い作品の品評会であり、作家性を認めてもらうために世界中の監督が目指す場所だ。

第76回カンヌ国際映画祭『怪物』のフォトコールの様子。

山田氏は映画祭常連の是枝裕和監督とカンヌを訪れたが、映画祭の特徴として、「人種も言語も超えてここに選ばれている人への文化としてのリスペクトがある場所だと感じた」という。

『怪物』は第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション作品に選ばれた。コンペ部門には上映会が設けられており2週間程度の期間があるが、『怪物』の上映は一番初めにセットされていたそうだ。実は、それはコンペティションにおいて不利だったと山田氏は振り返る。コンペ部門では一番期待が薄い作品が最初に公開され、期待値が高い作品が後半に組まれているのだそう。そのような状況下であったが、『怪物』は11分以上のスタンディングオベーションがあり、脚本賞とクィア・パルム賞の2冠を達成することができた。

また、『怪物』はアカデミー賞も視野に入れていたため、山田氏はオスカーキャンペーンのやり方をこのタイミングで学んでいったそうだ。キャンペーン中にはアカデミー協会のプレジデントを務めるジャネット・ヤン氏と知り合うことができたと言い、彼女が日本の作品を気に入り後押しをしてくれたことが、『ゴジラ-1.0』にも影響を与えていると思うと述べた。『ゴジラ-1.0』の躍進には『怪物』で繋がった人脈が点から線につながっていくような要因もあったと思うと振り返った。

『ゴジラ-1.0』アカデミー賞受賞までの道のり

山田氏はカンヌとアカデミー賞授賞式のどちらにも参加し、「カンヌ国際映画祭は映画文化としての祭典として権威がある場だが、アカデミーは産業エンタメとしての祭典のような場所だと感じた」と語った。

『ゴジラ-1.0』はTOHO Globalが配給を担当しているが、TOHO Globalにとっては『ゴジラ-1.0』が自社配給として初の作品であり、作品の展開そのものが大きな試みだったそうだ。この取り組みは自然発生的にうまれたもので、新しいことにチャレンジする場として手探りで挑んでいったのだという。本作は海外で大きく展開することができたが、当時そのようなノウハウは蓄積されておらず、一から構築していったそうだ。

そんな本作がアカデミー賞ノミネートに至った背景には、外的環境の変化により複合的な要因が味方した点が大きいと山田氏は語る。『ゴジラ-1.0』が北米で公開されたタイミングはハリウッドのダブルストライキの真っ只中でハリウッド映画のプロモーションが大きく止まっていたタイミング。ハリウッド映画の話題や公開が少なかった時期で、「ゴジラのオリジナルをつくる東宝がどうやら本気でゴジラの映画をつくったらしい」ということが話題になっていったのだという。テイラー・スウィフトのコンサートフィルム『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』が大ヒットしたり、アジアをはじめとする外国語映画がフォーカスされるチャンスがあったりと、従来の流れとは異なる環境での公開だった。

山田氏は、「もし『ゴジラ-1.0』の公開が、2024年だったら同じようにはなっていなかったと思う。そういった意味でも本作は(運を)もっている作品だった」と当時の雰囲気を振り返った。ただ、これは本作に限らず『バービー』や『哀れなるものたち』など昨年度のアカデミー賞にノミネートされたどの作品にも言えることであって、作品の企画やメッセージ、外的環境が生き物のように作用し、選ばれるべくして選ばれたものが揃っていると感じるそう。作品の質の高さはもちろんだが、世界でコンテンツを勝負させるには、複合的な要因を味方につける力や運が非常に重要だと語った。

アカデミー賞での気づき

山田氏と山崎貴監督(『ゴジラ-1.0』)

《marinda》

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Branc編集長 marinda

Brancの編集長とアニメ!アニメ!の統括をやっています。好きな動物はパンダです🐼

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