今年8月、ファンに惜しまれつつ10年に渡る連載の幕を閉じたマンガ「僕のヒーローアカデミア」。その終幕に重なるタイミングで劇場公開されたのが『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』だ。
ストーリーとしては、作中にて英雄的存在ながらヒーローを引退した“オールマイト”を継ぐものとして、姿形がオールマイトにそっくりの“ダークマイト”というヴィランが登場し、主人公たち雄英高校の生徒らの前に立ちはだかるというもの。現在放送中のアニメシリーズに合わせた時系列で、オリジナルストーリーが展開されている。
本作は今でも上映が続いているが、ついに先日累計興収が34.6億円を突破。前作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション(34.3億円)』を超えてシリーズ歴代最高記録を打ち立てた。そんな本作が、10月11日より北米での上映がスタートする。近年日本のアニメ作品は北米市場でも大きな存在感を放っている。そんな中、本作の北米公開は日本の映画界にとって大きなチャレンジとなりそうだ。というのも本作の配給を手がけるのは東宝グループ会社のToho Internationalとなっており、本レーベルとしてアニメ作品を配給するのは初の試みとなっている。
日本アニメの海外展開における「クランチロール」の存在
元々これまでのシリーズを配給してきたのは主に米国で日本アニメの配信やコンテンツ販売を行っていた「ファニメーション」という企業。2017年にソニーグループに買収され、日本アニメの北米配給会社としてはトップを誇る企業だ。
第1作目『僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE ~2人の英雄~』こそ北米500館規模の公開だったが、日本アニメの普及とともに規模を拡大し、第3作目『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』では北米1,500館規模にまで上映館数を伸ばした。
後にソニーグループが追加で買収した大手アニメ配信会社の「クランチロール」に統合され、社名こそ変わったが『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』では北米3,000館規模のスクリーンを抑えることに成功。興行収入は日本円(2022年9月レート)にして50億円を超えるヒットを記録し、日本アニメの存在感を世界に轟かせる成果を生み出した。また、クランチロールが展開するアニメ配信サイトは有料会員が1,500万人、広告付きの無料会員が1億2,000万人を超えており、200ヵ国以上の国と地域に作品を届けている。
つまり、これまで通りクランチロールの配給(北米以外ではクランチロールがほとんどの国で配給を手掛けている)であれば安定したヒットには期待ができるというわけだ。実際、東宝配給の『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』は今年5月にクランチロール配給で北米公開となり、700万ドル(約10.5億円)を超えるヒットを記録した。
ただし、東宝には海外展開をさらに強化していくという姿勢がある。その理由のひとつに挙げられるのは配給手数料の存在。