東宝の業績が絶好調だ。2024年2月期は2桁の増収営業増益だった。
特に2022年10月1日の組織変更によって強化したアニメ事業が好業績をけん引している。2024年2月期アニメ事業の劇場公開作品の売上高は、前期の2.7倍に跳ね上がっている。特に、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』と『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』、『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』の収益貢献が大きい。
ただし、2025年2月期はビッグタイトルに欠けており、減収減益を予想している。東宝は決算発表のタイミングで自社株買いを発表しており、株主に対する配慮も充分に行っている印象だ。
「名探偵コナン」、26作目にして初の100億円を突破
2024年2月期の売上高に当たる営業収益は、前期比16.0%増の2,833億円、営業利益は同32.0%増の592億円だった。
なお、東宝は2023年2月期から収益認識に関する会計基準を適応しており、その前の売上高や営業利益を単純に比較することはできない。ただし、本業で稼ぐ力をみる営業利益率は別だ。2024年2月期の営業利益率は20.9%。2023年2月期から2.6ポイントも増加している。コロナ禍を迎える前の2020年2月期の営業利益率は20.1%だった。2024年2月期の決算はコロナからの復活を印象づける内容だ。
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※決算短信より筆者作成
2024年2月期主力の映画事業の売上高は、前期比22.0%増の1,927億円、営業利益は同53.8%増の447億円だった。映画事業の営業利益率は18.4%から23.2%へと急伸している。
東宝の映画事業は3つに分割される。配給を行う映画営業、映画館の収入である映画興行、権利収入などの映像事業だ。
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※決算説明資料より
映画営業の売上高は、13.7%増の465億円。『ゴジラ-1.0』が話題となったほか、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』、『君たちはどう生きるか』、『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』、『劇場版ハイキュー ‼ ゴミ捨て場の決戦』などのヒット作に恵まれた。
2024年2月期の公開作品で外せないのが、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』だろう。興行収入は138億円を突破した。このシリーズの劇場版は1997年からスタートしているが、国内興行収入が100億円を超えたのは今回が初めてだ。
興行収入10億円以上の作品
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※決算説明資料より
ヒット要因は劇場版コナンの集大成となったことだろう。2022年4月15日に公開された『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』で、次回作は全シリーズの核心を貫く「黒ずくめの組織」と、灰原哀がキーパーソンであることが明かされていた。コナンシリーズのファンであれば、見逃せない内容になっていたのだ。
東宝のプロモーションも巧みで、2022年11月7日にYouTubeの東宝MOVIEチャンネルで「劇場版『名探偵コナン2023』超特報【2023年GW公開】」と題して特別映像を流した。これは『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』のリバイバル上映で突如として流したものと同じ内容だ。
「黒ずくめの組織」にフォーカスしたものであることに加え、人気キャラクター・灰原哀が活躍することが相まって予告動画がSNSで話題となっていた。東宝が話題作りを行ったと見るべきだろう。
それも爆発的なヒットへと繋がったのだ。