台湾のコンテンツ投資への熱さを体感!大型展覧会「TCCF」とは?その盛り上がりをレポート

台湾で開催された「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ」の様子をレポート。グローバルとの接点を強化させ、コンテンツ投資を惜しまない台湾の本気が感じられる。

グローバル マーケット&映画祭
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台湾のコンテンツ投資への熱さを体感!大型展覧会「TCCF」とは?その盛り上がりをレポート
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「台湾に投資するなら今」――台湾文化コンテンツ産業の大型展覧会「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ」(Taiwan Creative Content Fest)で幾度も耳にした言葉だ。


台湾政府は今、文化コンテンツ産業のグローバルな展開と、オリジナルのコンテンツの育成に本腰を入れている。そんな台湾の本気度を感じたTCCFの様子をレポートする。

台湾の文化コンテンツのグローバル化を促進「TCCF」

文策院提供

TCCFの主催機関「台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー 」(以下、TAICCA 読み:タイカ)は、台湾文化部(文科省に相当)のもと、2019年に設立された独立行政法人。台湾文化コンテンツ産業のサポートと国際化の促進を使命としている。


開催4年目となる2023 TCCFは、台北市で11月7日~11月12日の日程で開催され、29か国・地域から業界関係者やバイヤーらが参加した。大きなテーマとして位置づけられていると感じたのは、多様なテーマを扱った台湾オリジナルのコンテンツの育成。「ピッチング」「マーケット」「イノベーション」の3つを柱として、グローバル展開できそうなコンテンツの発掘と世界的なプラットホームとのマッチングを強力に後押ししていた。国内外からのゲストがキャッチーなテーマに沿ってセミナーなどを行った「インダストリアルステージ」も注目を集めていた企画だ。

クリエイターと世界をつなぐ「ピッチング」

TCCFの目玉といえるのが、「ピッチング」部門だ。プロジェクトが製作にこぎつけられるかどうかは、クリエイターのプレゼン能力と企画を見込んだ出資者とのマッチングがものをいう。

「ピッチング」は、グローバルに展開できる潜在力を備えた台湾オリジナルのIP(知的財産)に世界のバイヤーやパートナー候補と出会う機会を提供する場だ。今年は初めて、台湾だけではなく海外からもプロジェクトを募集。29か国・地域から応募があった539作品の中から、計43作品が選出された。

TAICCAはまた、選出されたチームにピッチングのノウハウを教えるためのワークショップも実施。国内外から12名の講師を招き、効果的なプレぜンの方法をレクチャーするなど、台湾のクリエイターと世界をつなぐ架け橋としての役割を十分に発揮した。今年からは、フランスの国立映画映像センター(CNC)や台湾の大手テレビ局など国内外の企業・機関が各賞を設置。官民挙げてクリエイターを支援していく姿勢を明確に示した。

「ピッチング」は大きく2つのカテゴリーに分かれる。1つは「Project to Screen」。「長編映画」「ドラマシリーズ」「アニメーション」「ドキュメンタリー」の4つの部門に分かれ、選出された計43本の映像作品プロジェクトのプレゼンテーションが行われた。

ホラーから社会派まで、人気俳優も参戦しプレゼン合戦

持ち時間は各作品8分。ジャンルは多種多様だが、近年台湾がヒット作・良作を続々生み出しているホラーやミステリー、社会派ドラマの企画が目を引いた。特に映像化が楽しみだと感じたのは、以下の作品だ。

まず、ドラマ部門に選出された「打掃阿姨」(“おそうじおばさん”の意)は、プライベート動画の流出でニュースキャスターとしてのキャリアを断たれ、清掃員となった女性が主人公。ある日、彼女は清掃に入った家で性被害に遭った少女の自殺を目撃し、復讐に立ち上がるという物語だ。監督にはヒットドラマ「次の被害者」の荘絢維(ジュアン・シュンウェイ)監督がクレジットされており、完成すれば大きな話題になりそうだ。

「打掃阿姨」ポスター。

ドラマ「秋のコンチェルト」などで知られ、今年11月に48歳の若さで逝去した陳慧翎(チェン・フイリン)監督がプロデューサーに名を連ねていたドラマ部門の「祝你幸福」も、女性視聴者の共感を集めそうな内容だった。個性の異なる4人の女性の人生を時代の移ろいと共に描く作品で、大ヒットドラマ「悪との距離」の林君陽(リン・ジュンヤン)監督、永作博美さんと佐々木希さん主演の映画『さいはてにて ~やさしい香りと待ちながら~』の姜秀瓊 (チアン・ショウチョン)監督がクレジットされており、それだけでもすでに良作になりそうな予感がする。

「祝你幸福」ポスター。

長編映画部門には日本でもファンの多い俳優の何潤東(ピーター・ホー)さんが監督・脚本を務める『噬慾』が選ばれ、ピーターさんがピッチングに登壇し注目を集めた。台湾の作家・黄唯哲の小説「河童之肉」を映画化するもので、美食系ユーチューバーを主人公に、食べることを通して人間の貪欲さを描く作品になるという。

大賞に相当するTAICCAとCNCが共同で授与するTAICCA×CNC Award(賞金3万米ドル)を受賞したのは、ドキュメンタリー部門の台湾作品『雪水消金融的季節』と、長編映画部門のフィリピン作品『Mother Maybe』だった。『雪水消金融的季節』は、ネパールの山で親友を亡くした女性が、数年後に親友の足跡を追って同じ山への登山に挑戦し、癒しを得ていく姿を追った作品。『Mother Maybe』は、フィリピンからゲームショウに参加するため日本にやってくる少年が主人公。目的は賞金100万円の獲得と、ヘルパーとして日本で働いている母親に会うこと。しかし、やっと再会した母親は日本で吸血鬼になっていて……というフィリピンの民間伝承と家族のドラマを掛け合わせた成長物語だという。

『Mother Maybe』ポスター。

ピッチングのもう1つのカテゴリーは、今年新たに設置された「Story to Screen」。小説やコミックなど、台湾ですでに刊行されたものの中から、グローバルに展開できる可能性を備えた台湾オリジナルのストーリーを世界のバイヤーにプレゼンテーションし、映像化に向けた開発の機会を提供する。

今年選出されたのは小説6作品、コミック4作品の計10作品。フィクション、ファンタジー、ラブストーリー、スパイもの、サスペンス、職場ものなどジャンルは多岐にわたっている。

ぜひ読んでみたいと思い、プレゼンを聞いたあとに書店に走って買い求めたのが、本カテゴリーの最高賞である「遠傳FriDay影音原創故事奨」(賞金30万台湾ドル)などを受賞した小説『女二』。ある女優の仕事、家庭、愛についての物語で、作者の鄧九雲(ドン・ジウユン)氏自身がもともと女優だったという背景が興味をそそる。同じく女性の共感を得そうな小説『婚前一年』は、弁護士の男性が恋人にプロポーズしてから結婚するまでの1年をつづった物語。結婚までの1年間留学にいくという恋人を送り出したあと、元カノが現れて離婚調停を依頼され…...という不穏な展開で、たしかにドラマ化されればSNSなどで議論を呼びそうな内容だ。

そしてもう1本、精神病患者の内面に迫ったコミック『病人院之旅』にも注目したい。本作は台湾で初めてコミックの形式で精神疾患について描いた作品だという。

ピッチング会場の隣には、出場者がブースを構えるエリアがある。プレゼンテーションがメインの訴求の場ではあるが、こちらも大事な闘いの場。開期中を通して、出品作に関心を持つ各国の業界関係者との商談が行われていた。

台湾の技術力をアピール「イノベーション」、国内外からゲストを招いた「インダストリアルステージ」

TCCFは、日本時代の古い工場をリノベーションし、年中とおして様々な文化イベントなどが行われている「松山文創園区」を会場に開催された。広々とした倉庫に設置された「イノベーション」スペースでは、映像コンテンツの制作における台湾の技術力をアピール。台湾の最先端映像技術を体験できる趣向を凝らしたブースが並んでいた。

映画ファンとして見逃せなかったのは、先月発表された台湾金馬奨で、監督賞、助演男優賞、オリジナル映画音楽賞、メイク&コスチュームデザインの4冠に輝き、日本から門脇麦さんも出演している映画『老狐狸』(英題:Old Fox)で使われた技術の解説映像だ。1980年代を舞台にした本作は、写真を取り込み、映像作品の背景に利用できる「バーチャルプロダクション」を採用している。また、美術の美しさが評判のドラマ「茶金 ゴールドリーフ」の撮影セットや小道具などを3Dデジタル技術などを使って忠実に再現し、ドラマの世界をオンラインでバーチャル体験できるコーナーにもしばし時を忘れた。

台湾ではAI技術を使用するプロジェクトには政府から補助金が下りるなど、世界に通用する映像技術の発展を後押し。TAICCAも、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などのテクノロジーとカルチャーをミックスさせた企画を募り、選ばれた作品に支援金を提供している。

国内外からゲストを招き、トークなどが繰り広げられた「インダストリアルステージ」で盛り上がりを見せたのは、韓国の大人気BLドラマ「セマンティックエラー」のキム・スジョン監督とプロデューサーのイ・ハウン氏のレクチャー。台湾BLドラマ「HIStory3 那一天~あの日」に主演したウェイン・ソン(宋偉恩)氏をゲスト“生徒”に迎え、ビジネス的な視点からヒットするBLドラマの作り方について語った

日本の台湾ドラマファンにも人気のウェイン・ソン氏。

日本からはテレビ局、JETROなどが出展「マーケット」

大盛況となったマーケットの様子。

版権の交渉や商談などを行う「マーケット」には、テレビ局、制作会社や出版社など文化コンテンツ企業、行政機関などがブースを出展。出展者によると、今年で4年目ということで、最初から明確な目的をもって商談に訪れる人が多い印象だという。日本からはテレビ東京、フジテレビ、日本貿易振興機構(JETRO)などが出展。JETROは海外バイヤーが映像コンテンツを含む日本の企業や商品情報を掲載しているオンラインカタログサイト「Japan Street」などを紹介していた。

台湾は、来年から4年間で台湾発の文化コンテンツ産業に100億台湾ドル(約467億円)を投じる「黒潮計画」を実施することを決定。文化コンテンツ産業を「戦略的重点産業」の1つに位置付づけている。今回、初めてTCCFを取材してみて、それが机上の空論ではなく、しっかり実態をともなって推進されていくであろうということを、会場の熱気とともに感じた。

TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ:詳細はこちら

〈提供:台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー〉

《新田理恵》

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新田理恵

趣味と仕事が完全一致 新田理恵

大学卒業後、北京で経済情報誌の編集部に勤務。帰国後、日中友好関係の団体職員などを経てフリーのライターに。映画、女性のライフスタイルなどについて取材・執筆するほか、中国ドラマ本等への寄稿、字幕翻訳(中国語→日本語)のお仕事も。映画、ドラマは古今東西どんな作品でも見ます。