台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃

9月に開催されたトロント国際映画祭で台湾パビリオンを直撃。台湾の独立行政法人「TAICCA」が台湾映画やTV番組を世界に向けてプロモーションするためにやっていることとは?取り組みを聞いた。

グローバル アジア
台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
  • 台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
  • 台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
  • 台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
  • 台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃
  • 台湾映画のグローバル展開を支援する独立行政法人「TAICCA」とは何か。トロントで直撃

国際映画祭といえば、華やかなレッドカーペットや最新映画の上映で多くの観客がにぎわうものだが、それと並行して開催されるマーケットも重要だ。

9月に開催された北米最大の国際映画祭、トロント国際映画祭(TIFF)でもマーケットが開催された。世界の映画産業の最重要地である北米における最大の映画祭だけあってマーケットの存在感も大きい。マーケットには世界中から様々な企業や団体がパビリオンを設置して作品の売買・紹介を行っている。

Brancではそんなトロントのマーケットにパビリオンを展開していた台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)を直撃した。

話を聞いたのは、TAICCAのグローバルビジネスマーケティング所属のシャイニー・スー氏。台湾映画やTV番組を世界に向けてプロモーションする役割を担っているという。

シャイニー・スー氏。

TAICCAは、2019年に設立された独立行政法人で、台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進するために活動している組織だ。近年、様々な国際映画祭でパビリオンを設置し、台湾映画のプロモーションに積極的に乗り出している。韓国映画・ドラマのグローバル展開を後押しするKOFIC(韓国映画振興委員会)という組織があるが、TAICCAはその台湾版のような存在と言えるだろう。

トロント国際映画祭マーケットに参加するのは昨年に続き2回目だという。スー氏は、TIFF参加の動機は「台湾の作品を北米市場に販売していくこと。販売可能な作品を53本ほど用意している」と言う。今年はTIFFの公式プログラムにTAICCAが支援した2本の作品が選ばれているという。

TAICCAは完成した映画の海外販売支援だけでなく、制作の支援やファイナンスプログラムも実施している。その2本の映画はともにTaiwan's International Co-funding Program(TICP)と呼ばれる国際共同製作プログラムで製作され、プロモーションについてもサポートしているのだそうだ。

TICPはいわゆるギャップファイナンスと呼ばれるもので、すでに製作が決定しているが資金が足りていない作品に資金提供するもの。TAICCAではすでに70%の予算を確保している作品に対して、残りの最大30%を投資する形式で、作品に台湾の要素があることが条件。条件は、例えば、台湾の俳優が出演していることや、プロデューサーが参加していること、映画のポストプロダクションを台湾の会社で行うことなど、様々なパターンがあり、ケースバイケースで評価し、支援する作品を選んでいるとのこと。

このプログラムでTAICCAが支援した作品の一例がTIFFで公式上映された『The Settlers』だ。

これはチリを舞台にした作品で、20世紀初頭に広大な土地を大西洋に出るルートを開拓しようとする探検隊を描いた作品だ。台湾が舞台にはなっていないが、ポストプロダクションを台湾の会社が担当しているので、支援の対象となっている。もう1本が『The Human Surge 3』という作品で、こちらには台湾の俳優が出演しているようだ。こうした国際共同製作を支援する背景は「台湾の才能やプロダクションが、グローバルなステージで映画作りに参加する機会の提供につなげる」ことが目的だという。

今後はさらに、国際映画市場にエンゲージできるように、台湾のタレントやプロダクションと一緒に仕事するのは難しくないことを周知していきたいとのことだ。すでに多くの海外との共同製作を支援しており、今後、続々とそうした作品を海外市場へと送り出す予定だという。

今年、注目すべき台湾映画は何かとの問いに、スーさんは今年のアカデミー賞国際長編映画賞代表となる『Marry My Dead Body(邦題:僕と幽霊が家族になった件)』を挙げた。すでにNetflixで配信が始まっており、TAICCAもこのマーケットで周知しているという。

TAICCAは日本語の公式X(旧Twitter)も開設しているなど、日本での情報発信も積極的に行っている。どんな活動をしているか気になる人はチェックしてみるといいだろう。
《取材:Tomohiko Nogi 文:杉本穂高》

関連タグ