【独占】『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』を中国で大ヒットさせた会社が仕掛ける新事業とは

中国で『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』を今年の輸入映画の2位と3位に導いた配給会社「Road Pictures」。そんなRoad Picturesが新会社「GuGuGuGu」を設立し、二次元コンテンツのシームレスな展開を目指す。代表の蔡氏に、新会社設立の意図についてBranc独占で話を聞いた。

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今年、中国で大ヒットを記録した2本の日本アニメ映画、『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』。ともに中国における日本映画の興行記録を塗り替え、その快挙は日本国内でも大きく報じられた。

その立役者と言えるのが、両作品を配給したRoad Picturesだ。本サイトでは4月に同社代表の蔡公明(ツァイ・ゴンミン)氏の独占インタビューを掲載し、大きな反響があったが、その蔡氏が東京国際映画祭に合わせて来日した。


蔡氏は、新たに新会社「GuGuGuGu」を設立。この新会社はアニメ作品を配給するだけでなく、関連グッズや体験型のイベントの開催など、IPビジネスを多角化し、中国のファンにこれまで以上に深くアニメを楽しんでもらえるような事業を展開するという。


その蔡氏に今回、独占インタビューを敢行、新事業について話を聞いた。


上映・グッズ・イベント、バラバラだった展開をひとつに

蔡公明(ツァイ・ゴンミン)氏。

――本日はありがとうございます。今回の来日理由は映画祭のマーケット(TIFFCOM)でしょうか。

弊社は日本アニメの配給を多く行うと同時に実写映画も手がけていますので、東京のマーケットは我々にとって常に重要です。弊社は世界の主要マーケットにはほとんど参加しますが、私自身はカンヌ・ベネチア・ベルリンの3大映画祭とアメリカン・フィルム・マーケットに参加する程度でした。しかし、日本は今後我々にとってますます重要になるので、自ら参加することにしたんです

――なぜ、日本がますます重要になるのでしょうか。

新会社を立ち上げ、アニメの商品化やイベント展開を手がける予定だからです。

――その新会社の事業内容について詳しく教えてください。

まず、背景からご説明いたします。弊社は『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』をはじめ、多くの日本アニメ映画を配給してきました。その中で中国の二次元カルチャーの熱狂の凄さを思い知らされました。特にアニメファンは、関連グッズと特別な体験を重要視していることに気づいたのです。中国のアニメファンは、好きな作品とよりインタラクティブに関わりたいと考える人が多いのです。

これまでの中国市場では、映画配給、イベント展開、商品化をそれぞれ別の会社が手がけていて、連携が取れていませんでした。日本の映画館では上映中のアニメのグッズが並んでいるのは当たり前ですが、中国では、上映中にグッズ展開が間に合っていなくて、上映終了後にようやくグッズができるということがよくあるんです。そこで、我々は作品を配給するだけでなく、関連グッズ、インタラクティブな体験をワンストップで提供できるような仕組みを作っていきたいと思っています。そして、それをファンのための“家”となるような場所に成長させていきたいです。

――ということは、御社は今後映画の配給権だけでなく、商品化権なども一緒に獲得していくことになるのですか。

その通りです。すでに日本の会社と話を進めている最中です。商品展開については、BtoBのライセンス業務だけでなく、直接ファンに商品を届けるBtoCも展開する予定で、すでに10店舗ほどオープンする計画が進行中です。ただ商品を売るだけの場所にせず、イベント開催できる機能を持たせ、コンテンツとグッズ、イベントの3つを展開できる場所にしていくつもりです。例えば、コラボカフェなどを展開できる店舗も出したいと思っています。店舗ごとに特色を出したいので、物販とイベントスペースの割合などそれぞれの店舗で異なるものにしていくつもりです。

――御社で商品開発もされるのでしょうか。

はい。すでに社内に優秀な開発チームを抱えています。それから、日本の優れたクリエイターとも協力していきたいと思っています。ファンにとっては日本で作られたものが最先端のアイテムという思いがありますから、日本のクリエイターにも協力を仰ぎたいと考えています。

――いきなり10店舗も展開するとは、すごいスピード感ですね。

中国の感覚では決して速いということはありません。日本にも進出しているPOP MART(ポップマート)は2010年に創業してすでに中国国内だけでも340店舗ほど展開していますし、特別我々の動きが速いと言うことはないと思います。個人的な目標は、二次元コンテンツのテーマパークを作ることです。ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ、ウルトラマンのテーマパークが中国にありますが、二次元のアニメーション専門のテーマパークはありません。多くのコンテンツが集まり、グッズも売っていて飲食店もあるような場所にしたいです。

そうしたテーマパークもファンと一緒に作り上げていくものにしたいと考えています。新会社の「GuGuGuGu」という名前もファンの提案から決めました。GUは中国語では「谷」と書きますが、これはグッズの「グ」の音当てに使われる漢字です。さらに、「谷」が「家」と形が似ているので、家も連想できるという意味もあります。

――御社で商品開発されるとのことですが、中国ではどのようなグッズが売れるものでしょうか。日本とは異なる傾向があるでしょうか。

中国では、低価格帯の新商品は常に求められますし、高価格のフィギュアなども一定の需要があります。そして、今後は一般層に向けて、バッグや文具など機能性のあるものや日用品の需要が増加していくと考えています。

弊社は、配給業務に加えてマーケティングの仕事もしていて、その知見を商品とイベント展開で活用できます。中国では、物品を売る会社は物理的な物しか扱ったことがないことが多いので、コンテンツに関して詳しくないのですが、弊社は、マーケティング、配給、商品開発、イベント展開の4つをワンストップで提供できる強みがあると思っています。

北京大学のプレミアイベントは大成功だった

――映画の配給業務も今後並行して注力していくのですか。

そうですね。商品化とイベント、これらが盛り上がるためにも、映画作品が必要になります。これは相互作用のあるもので、映画が盛り上がればグッズも売れる、グッズが売れて話題になれば映画がさらに盛り上がるので、シナジー効果のある展開を目指していきます

――確かに、イベントやグッズ展開がさらにIPの人気を引き上げることがあります。

おっしゃる通りで、我々が北京大学で行った『THE FIRST SLAM DUNK』のプレミアイベントでそれを実感しました。全国でプレミアイベントに続いて本作の応援上映が企画されたのですが、これは各劇場をプレミアイベントのような熱量で盛り上げようとファンが自ら企画したものです。映画館にみんなで応援グッズを持ち込んで、声援を送りながら映画を観るという現象が自主的に起きるのは、本当に珍しいことです。

本作の上映は4カ月に渡りましたが、通常、これだけ長く上映されると最終日は特に何事もなく終わってしまうものなのに、本作は最終日にも200万元(約4,000万円)の興収をあげています。こうした盛り上がりを生み出したのは間違いなくプレミアイベントの成功です。今回のプロモーションで最も大きな効果があったと思います。37メートルある1回きりの巨大スクリーンを設置するだけで200万元かかり、体育館で5.1chサラウンドを実現することにも、とてもお金がかかりましたが、やった甲斐がありました。しかし、こうした盛り上がりは、商品展開をより活発にすれば、さらに大きく出来たと思っています。

――日本の応援上映は配給会社が企画しますが、中国の場合は、ファンが自主的に映画館と交渉して企画しているのですか。

そうです。自分たちで企画して映画館と交渉しています。だから、公式が行うものよりも情熱的になるんです。『THE FIRST SLAM DUNK』の応援上映の成功を受けて、国産映画でもやってみようという動きが拡がっています。

――御社はアニメの他、日本の実写映画の配給もされています。アニメの国際展開は進んでいるのですが、日本の実写映画はそれに比べてやや遅れています。どうすれば日本の実写作品をもっと中国市場に広げているでしょうか。

日本映画のクオリティは非常に高いと思います。中国で人気の高い日本映画は、大きく2種類に分けられます。1つはラブストーリー、もう1つはサスペンスです。『万引き家族』が中国で上映された頃は文芸作品が人気だったのもありますが、あの作品はリズム感が良いというか、物語が展開していくペースが早い作品でした。今はそういう早いリズムで展開していく作品が市場に求められています。是枝監督の作品は娯楽性と芸術性のバランスが良いと思います。実写映画が難しいのは、やはり中国の観客にとって日本の俳優は馴染みが少なく、言葉の問題もあると思います。その点、アニメは中国の声優が吹き替えることで受け入れられやすくなります。アニメの方が文化的差異を小さくしやすいという要素があると思います。

――次の『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』クラスのヒットを生み出せると期待をかけている作品はありますか。

弊社の今後の展開として、11月から宮崎駿監督の『紅の豚』を中国で初上映します。映画上映ではありませんが、『すずめの戸締まり展』の中国展開も弊社が請け負っています。それから、まだ作品名は言えないのですが、来年2本のアニメ映画を配給する予定です。しかし、『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』ほどの記録を作ることは容易ではありません。この2本は、今年の輸入映画で2位と3位の作品です。これまでは輸入映画のトップ10はほぼ全てハリウッド映画に占められていたので、これはすごい快挙なんです。この記録をもう一度達成するのは簡単ではありませんが、来年以降も良い成績を上げられるように頑張っていきたいです。

《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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