8月9日(水)、Branc(ブラン)のオフラインイベント「Dialogue for Brand New Creativity」の第二回が開催された。「中国映画市場のいま」をテーマにした第一回は、中国最大のSNS、微博(ウェイボー)で約270万人のフォロワーを持つ映画ジャーナリスト徐昊辰氏などを迎え、日本アニメが大ヒットしている中国映画市場のリアルについて活発な議論が交わされ好評を博した。
第二回のテーマは「日本実写作品のグローバル展望」というテーマを国際プロデューサーの視点から語るというもの。韓国ドラマは配信市場でグローバルに大きな成功を収め、日本アニメも世界市場に拡大している昨今だが、日本の実写作品はそれらに後れを取っている現状がある。だが、国内の実写作品製作者たちもグローバル市場へ挑む機運が高まりつつあり、国際的に活躍できるプロデューサーの必要性が叫ばれている。
そんな現状をよく知る人物として、TBSテレビで『糸』や『ラーゲリより愛を込めて』のプロデュースほか、現在は諸外国との共同製作企画の準備を進める辻本珠子氏を迎え、日本実写作品の国際展開について詳しく話してもらった。また、グローバルに成功を収めていると言われる韓国ドラマ業界が危機を迎えているとの声も聞かれるようになってきている。そんな韓国市場をよく知る、制作会社ROBOTの小出真佐樹氏が、韓国映像産業の実情について語った。
小出氏は、昨今の国内映像業界の風潮として、韓国を参考にグローバルコンテンツを作っていこうという流れが生まれているが、実際にグローバル市場とは何か、漠然と捉えられているのではないかと指摘。辻本氏は、まさに現場でプロデュースする側の意見として同調しつつ、国内市場だけで回収するこれまでのビジネスモデルに限界を感じており、「グローバル展開しないとまずい」という思いが先行しているような状態だという。
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辻本氏は、映画『スマホを落としただけなのに』のプロデューサーの1人で、小出氏とは同作の韓国リメイクの件で仕事をした仲だそうだ。その韓国版はNetflixで配信され、オリジナルである日本版以上の知名度を獲得しており、辻本氏は映画祭のマーケットで韓国版がオリジナルで、その日本版リメイクのプロデューサーだと勘違いされたこともあるという。日本の実写作品が、韓国と比べて海外展開ができてないことを示す顕著な例と言えるだろう。
辻本氏は、日本国内の市場動向について、今年から映画制作現場の労働環境改善を目指す「映適(日本映画制作適正化機構)」が始まり、製作費が増加することによって、予算回収のハードルが上がると指摘。そのため、国内市場だけでは難しくなっていくのではと考えているという。予算の増額と市場拡大のためには、国内企業だけでなく、海外と組んで国際共同製作の道を模索しているとのことだ。
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そんなグローバル展開の身近なお手本として例に出されることが多い韓国の映像業界について、小出氏が詳しい話をしてくれた。好調のように見える韓国ドラマ業界だが、儲かっているのはトップヒットを出している一部のスタジオだけで、つぶれかかっているスタジオが今、多くなっているという。そして、韓国ドラマに対する投資控えが進んでおり、Netflixで観られる一部のヒット作を覗いて、ドラマの製作本数が一気に縮小傾向にあるそうだ。また、映画の方もストックがなくなりつつあり、来年以降は厳しくなるとの見通しを小出氏は示した。
トークセッションの後は質問コーナーも設けられ、会場からは実際に日本映画の現場で制作をしている方からの切実な質問などもあり、イベント後の懇親会でもゲストを交えて活発な交流が繰り広げられた。
Brancでは本イベント動画の見逃し配信を開始。下記ボタンから視聴チケットの購入が可能となっている。
視聴方法・価格
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視聴プラットフォーム:Vimeo
視聴回数:無制限
動画分数:1時間24分
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