6月5日(月)、Branc(ブラン)が初めて開催するオフラインイベント「Dialogue for Brand New Creativity」の第一回が開催された。
初回は「中国映画市場のいま」をテーマに、中国最大のSNS、微博(ウェイボー)で約270万人のフォロワーを持つ映画ジャーナリスト徐昊辰氏と文京学院大学経営学部教授の公野勉氏をゲストに、ライターのSYO氏がMCとなって中国映画市場の今について議論した。
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2023年に入り、新海誠監督の『すずめの戸締まり』と井上雄彦監督の『THE FIRST SLAM DUNK』が立て続けに中国で大ヒットを記録し、中国映画市場に対する注目が日本国内でも高まっている。イベントは、この2本がなぜ中国で記録的な大ヒットになったのかを分析し、日本映画がこの2本の大ヒットから学べることは何かを議論した。
イベントでは、現地をよく知る徐氏から『すずめの戸締まり』のプロモーション戦略と新海誠監督訪中による話題作りについて解説があった。また中国の評論家からどのように『すずめの戸締まり』が評価されているかなど、大ヒットした「3つの要因」について詳しく解説してくれた。
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一方の『THE FIRST SLAM DUNK』の人気は、中国において日本のマンガやアニメがどのように受容されてきたかの歴史が大きいそうで、『SLAM DUNK』が90年代にどれほど中国で人気があったのか、そのノスタルジックな思い出をいかに喚起させるような宣伝を行っていたのかなど、『すずめの戸締まり』とは対照的なヒットの理由について解説してくれた。
『すずめの戸締まり』に関連して、中国の「テーマ映画館」がどういうもので、これがいかに中国で口コミを生む要因になっているのかについても詳しく話してくれた。そこからは、日本の映画宣伝とは異なる、ネットの口コミを重視する中国映画市場の宣伝手法が見えてくる。
また、中国映画市場全体の変化の歴史についても触れ、若い世代が多い中国映画の市場がいかに日本とは異なるかについてもわかりやすく解説。春節などの大型連休とそれ以外では中国の映画館の客層はまるで異なるという特徴がどうして生まれるのかについて、示唆のあるコメントも飛び出した。
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また、『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットから、他の日本映画にも道が拓けたと言えるかどうかについても議論が交わされた。日本映画、特に実写映画は海外プロモーションの意識がまだ希薄であり、宣伝用の素材の扱いも厳しいなど様々な指摘が相次いだ。
今後はよりグローバルな視点で制作することも重要で、そのためにはヨーロッパ映画では当たり前になっている国際共同製作をアジアでも活発化させるべきなどの意見も交わされた。
コロナ以降、中国でハリウッド映画の苦戦が続いており、徐氏はハリウッド映画への関心が低下していると指摘。逆に今、諸外国にはチャンスが到来しているなど、日本映画業界にとって有益な情報の多いイベントとなった。
Brancでは本イベント動画の見逃し配信を開始。下記ボタンから視聴チケットの購入が可能となっている。
視聴方法・価格
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視聴プラットフォーム:Vimeo
視聴回数:無制限
動画分数:1時間24分
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