増収が続く東宝、『SAND LAND』をヒットさせられるかが分水嶺に【決算から映像業界を読み解く】#18

東宝が増収を続けている。

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増収が続く東宝、『SAND LAND』をヒットさせられるかが分水嶺に【決算から映像業界を読み解く】#18
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東宝が増収を続けている。

2023年2月期の売上高は前期比7.0%増の2,442億9,500万円。新型コロナウイルス感染拡大で映画館の営業が制限された2021年2月期の最悪期を抜けて2期連続の増収となった。2024年2月期の売上高は前期比3.6%増の2,530億円を予想している。

2023年2月期は『すずめの戸締まり』『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』が大ヒットした他、『キングダム2 遥かなる大地へ』や『シン・ウルトラマン』が話題作となった。東映の『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』による増収効果も大きかった。

2023年2月17日に公開した『BLUE GIANT』が興行収入10億円、3月17日公開の『わたしの幸せな結婚』も10億円、4月14日に公開したばかりの『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が早くも58億円を突破するなど、滑り出しは好調だ。

完全回復に至らない映画館が迎える試練

決算短信より

東宝は2024年2月期の営業利益を前期比10.9%減の400億円と予想している。予想通りに着地をすると、営業利益率は15.8%となって2.6ポイント下がる見込みだ。ただし、東宝は保守的な予想を出す傾向が強く、2023年2月期も期首予想の営業利益は380億円だった。結果は予想比18.1%増の448億8,000万円だ。

今期の予想より営業利益率が2ポイント程度高く着地すると、2024年2月期の営業利益は450億円となる。予想よりも増収となる可能性も高く、今期も増収増益となるのではないか

東宝は『すずめの戸締まり』を公開したが、同じく新海誠監督の『天気の子』が業績に寄与した2020年2月期の売上高には届かなかった。7%程度の遅れをとっている

主要因は映画館を運営する映画興行事業の回復の遅れだ。映画館はコロナ禍の最悪期を抜け出すことができたが、TOHOシネマズなどの主力映画館の2023年2月期の売上高は710億5,400万円だった。2020年2月期の売上高の8割に届いていない。

決算短信より

2020年2月期は『アラジン』や『アナと雪の女王2』、『トイ・ストーリー4』などの話題作が公開されていたこともあるが、2023年2月期は『トップガン マーヴェリック』、『ミニオンズ フィーバー』、『「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が公開されている。『ONE PIECE FILM RED』というスマッシュヒットした作品も公開された。

それでもコロナ前の水準を回復しないというのが、今の映画館の現状なのだろう。話題作にだけ観客が集まる、一極集中化が進む可能性はある。東宝の映画興行事業の売上推移は、映画業界の行く末を占うものとして注視したい。

実験的要素の強い『SAND LAND』はヒットするか?


《不破聡》

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