【TIFFCOMセミナー】配信・商品化・海外の3つが売り上げの伸びを支える 「アニメ産業レポート」から現状と課題を読み解く

東京国際映画祭と併催で開催中の、アジアを代表するコンテンツマーケット「TIFFCOM」内のオンラインセミナーにて『「アニメ産業レポート2022」に見えてくるアニメ最前線』が開催された。今回は本セミナーの内容をレポートする。

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【TIFFCOMセミナー】配信・商品化・海外の3つが売り上げの伸びを支える 「アニメ産業レポート」から現状と課題を読み解く
【TIFFCOMセミナー】配信・商品化・海外の3つが売り上げの伸びを支える 「アニメ産業レポート」から現状と課題を読み解く
  • 【TIFFCOMセミナー】配信・商品化・海外の3つが売り上げの伸びを支える 「アニメ産業レポート」から現状と課題を読み解く
  • 増田弘道氏
  • 藤津亮太氏

東京国際映画祭と併催で開催中の、アジアを代表するコンテンツマーケット「TIFFCOM」内のオンラインセミナーにて『「アニメ産業レポート2022」に見えてくるアニメ最前線』が開催された。今回は本セミナーの内容をレポートする。

オンラインで開催された本セミナーには、スピーカーとして、ビデオマーケット顧問・アニメ産業レポート編集総括の増田弘道氏と、東京国際映画祭「ジャパニーズ・アニメーション」部門プログラミング・アドバイザーでアニメ評論家の藤津亮太氏が登壇した。

藤津氏がアドバイザーを務める「ジャパニーズ・アニメーション」部門では『雨を告げる漂流団地』、『夏へのトンネル、さよならの出口』、『ぼくらのよあけ』などが放映。本作の監督たちは、次のアニメ業界を担っていく存在である。そのような現在のアニメができるまでのアニメ業界の動向と、これから予想される傾向を、2009年から発刊されているアニメ産業レポートの最新版をもとに分析していく。

✅記事のポイント


  • アニメ業界の売上は過去最高値を更新。「配信」、「商品化」、「海外」の3つが伸びを支える

  • Netflixの会員数減少や中国の配信規制への懸念。「動画配信」にもピークがくるかも?

  • 2022年の劇場アニメは、すでに450億円を超え好調。『すずめの戸締まり』などの期待作も待機しており、伸びに期待

  • 日本アニメの海外収入は、中国を含むアジアの比率が高まっている


「アニメ産業レポート2021」の統計から見た現状

まず、「アニメ産業市場」が指す範囲は、アニメ映像(放送、映画、ビデオ、配信)やグッズ、遊興※、音楽、海外、ライブエンタテインメントの市場規模(ユーザー支払いベース)であることが定義された。

アニメ業界の売上は、前年度比113.3%アップの2兆7,425億円。過去最高の2019年よりも109.1%を上回る過去最高値となった。

どの業界も頭を抱えた新型コロナウイルスの影響があったのは、2020年からの約一年間のみとなっており、アニメ業界は数年先を見て動いていることから、現在は二年前の成果が出てきているのではないかと推測される。さらに2015年から海外市場の拡大も続いていることも読み取れた。

「ビデオ」は近年かなり低迷していたが、「鬼滅の刃」「ウマ娘 プリティーダービー」が売り上げを支えた。この2作品のような、根強いファンがつく作品はコレクション意欲が高く、統計にもかなり影響することは明らかだ。

全体的に見ると、過去最高の2019年に比べてもプラスだった「配信」、「商品化」、「海外」の3分野がアニメ産業の伸びを支えているという現実が見えてきた。「海外」にフォーカスを当ててみると、2009年から2014年にかけて違法配信の急拡大や中国のテレビアニメ規制などにより低迷していたが、2015年以降中国の爆買いやNetflix、Amazonプライム・ビデオ、Crunchyrollなど動画配信サイトの普及により市場が急拡大したことがわかる。

さらに、アニメ制作会社約57社からのアンケート回答によると、現在のアニメ産業の景況感は悪くなく、根強い制作需要があるとのこと。2020年は落ち込んだが、それは制作から公開までの遅れによる売上計上のズレにより生じたものであると考えられる。

課題としては、働き方改革やコロナ対応により、アニメの制作費も急上昇していることであると言う。コストの上昇は人材不足や人件費も影響しており、その原因として、

  1. 世界的なニーズがあるため生産力よりも国内外含む企画・需要の数が多いこと

  2. フリーランス中心になった結果、技術力が高い人の取り合いとなっている

  3. 高密度なものをつくるため、かかわるスタッフの要員が増えたこと

が、挙げられた。そのような課題から、デジタル化と人材育成が進んでいることも、今後の大きな動きとして挙げられた。

※パチンコ、パチスロの台の売上



《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。