カンヌ国際映画祭のマーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」で開かれた「16th Annual International Film Finance Forum」。そのセッション「The Power (S)hift: Creator Economy; From Story to Global Brand」では、クリエイターが自ら物語を所有し、ファンや資本を巻き込みながらグローバルブランドへ育てていくための具体的な仕組みが語られた。
登壇したのは、グラミー賞ノミネート経験を持つアーティストでフィルムメイカーのVic Mensa氏、Lil WayneやTravis Scottらのミュージックビデオで数十億再生を生み出してきたディレクターのEdgar Esteves氏、IP運用プラットフォーム「IPX Exchange」を率いるBrendan McCafferty氏、そしてモデレーターのTyler Sabino氏。

前のセッションで取り上げられたプリセールスの退潮やエクイティ依存の議論を、今度はクリエイター側から捉え直す場になった。中心に置かれたのは、Vic Mensa氏とEdgar Esteves氏が共同で立ち上げたばかりの短編『Halfrican』の事例である。
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“無償で働いたときに最も稼いだ”──エクイティを取りに行く独立制作の経済学
議論は、Edgar Esteves氏の初期キャリアから始まった。Esteves氏は「無償で働いたときに、自分は最も多く稼いだ」と語る。SoundCloudにいた無名ラッパーに「無料でビデオを撮らせてほしい。その代わり、何らかの取り分をもらえないか」と持ちかけ、後にレーベルから支払いが発生した際、自身の取り分も確保されたという。

当時、アトランタの若手弁護士だったBernice Lawrence氏(現・21 Savageのマネージャー)に依頼し、「ミュージックビデオ・エクイティ契約」を作成。それをテンプレート化した。のちに自身が関わった楽曲が大ヒットしてゆくことになった。「ヒットで得た資金で機材レンタル業、ポスプロハウス、制作会社を立ち上げた。そしてまた破産して、また取り戻した」と、彼は笑って振り返った。
要点は、「信じる相手やプロジェクトには、率直に意思を伝える」こと。そして「自分に投資し続ける」ことだ。Vic Mensa氏への『Halfrican』参加表明も、この行動原理の延長線上にある。
ファイナンスの議論では、この「クリエイター自身が時間と労力を資本化する」回路が見落とされがちだ。Esteves氏が示したのは、外部資本に頼る前の段階で、クリエイター同士の信頼関係がIPの初期価値を立ち上げているという現実だった。







