【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介

カンヌ「マルシェ・ドゥ・フィルム」内のCannes Nextで開催された日本発のイノベーション・ショーケース。AI、ロボティクス、ニューロサイエンスを横断する登壇者たちが提示した、映画体験の次なる地平とは。

グローバル マーケット&映画祭
【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介
  • 【カンヌ現地レポート】AIと人間の『リミナル・スペース』が映画の未来を変える。フランソワ・オゾンや『火垂るの墓』のイマーシブプロジェクトも紹介

2026年5月13日、カンヌ国際映画祭のマーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」内のビジネスカンファレンス「Cannes Next」にて、EVISION主催のセッション「AI & Advanced Science Transforming Cinema: Japanese Showcase of Innovation」が開催された。フランスCNRSの研究者、東京大学発スタートアップEVISIONとJIZAIのCEOら、研究機関と産業界の双方から登壇者が集い、AIと先端科学が映画制作・観客体験をいかに変革し得るのかを議論した。

本記事では、AIと人間の境界に広がる「リミナル・スペース(境界領域)」という概念を軸に、ロボティクス、神経科学、ハプティクス、空中映像など多様な技術が交差するこのセッションの内容をレポートする。


「リミナル・スペース」:AIと人間の二項対立を超えて

AIは人間のクリエイターを「代替」するのか。今多くなされるこの問いに対し、フランス・モンペリエ大学のMadalina Croitoru教授が提示したのは、「白か黒か」の二項対立を脱する視座だった。

Croitoru教授はAI研究を25年にわたり続けるかたわら、心理学の第二の博士号にも取り組む研究者だ。冒頭、1956年のダートマス会議の写真を示しながら、「Artificial Intelligence」という言葉そのものが、命名者ジョン・マッカーシー自身が後年「適切でなかった」と振り返ったほど、人々の投影を呼び込む言葉であることを指摘した。1967年に最初のチャットボット「ELIZA」がチューリング・テストを通過した歴史にも触れ、「AIが人間のように振る舞う」という現象は決して新しいものではないとした。

そのうえで彼女が提案したのが「リミナル・スペース(liminal space)」という概念である。「人工」と「現実」の間には明確な境界線があるのではなく、グラデーションのある領域が広がっており、人間はそこに自らの期待や認識を投影する。「AIが私の仕事を奪うのか」「AIに信頼を置けるのか」といった問いの立て方そのものを更新し、「私たちはこの境界領域のどこに自分を置くのか」を議論すべきだ、と語った。


《杉本穂高》

関連タグ

杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

編集部おすすめの記事