FLAGSHIP LINE株式会社は2026年1月、文化庁の補助金により日本芸術文化振興会に設置された「文化芸術活動基盤強化基金」を活用したアニメクリエイター育成プログラム「PLUS CREATORS CAMP」の始動を発表した。本プログラムは、世界市場を見据えたスキル習得を掲げ、企画から制作実習、さらには海外研修までを含む実践的なカリキュラムを複数年に渡って提供するのが特徴だ。
世界的なアニメ需要の拡大に対し、国内の制作現場は慢性的な人材不足という課題を抱えている。また育成をスタジオ自身が手掛けるには多額の資金を必要とする。そんな業界全体の課題に対して、このプロジェクトがどう風穴を開けるのか、メーカー出身者ならではの視点で新興スタジオを手掛ける同社代表の松村一人氏にインタビューを実施した。
新興スタジオ設立の背景にある「内製化」への意思と、公的支援を活用して挑む「制作工程の全体像を知るグローバル人材」の育成意義、そして業界全体への波及効果について話を聞いた。
新興スタジオが育成プログラムを手掛ける理由
――FLAGSHIP LINEは、昨年アニメ制作スタジオSTUDIO GRAPH77の設立を発表されていますね。
松村:設立自体は2024年の10月だったのですが、その時はまだ手がける作品タイトルを発表できない時期でして、翌年の2025年9月に発表する形になりました。前身のFLAGSHIP LINEは、エイベックスとグラフィニカの合弁で平成30年に設立されたプロデュース会社です。これまでいくつかの作品をプロデュースしてきましたが、自社で制作可能なリソースを持つべきだと考え、立ち上げたスタジオがSTUDIO GRAPH77です。やはりアニメ制作に対する需要は大きく、現場を確保するのが年々難しくなっています。
――今回の育成プログラムを立ち上げたのは、新スタジオ設立とも関わる部分はあるでしょうか。
松村:そうですね。このスタジオはアニメ制作の内製化の実現を目標に置いています。そのために人材を採用するわけですが、いざ現場に入って仕事を始めると、自分のパート以外のことを学ぶ機会が少なく、アニメーション制作の川上から川下までの全体フローを理解するのが難しくなるんです。アニメーション制作の全体像を知っておいた方が将来のキャリア育成につながると思うので、そういうプログラムを作れるといいなと思っていたところに、こうした公的助成を見つけ、応募しました。
さらに言えば、エイベックスでアニメ製作をする中で海外とのコミュニケーションの重要性を痛感したことも影響しています。それに、海外と日本ではアニメーションの作り方も違います。アメリカは、日本よりもシステマチックですね。日本の場合、最初から最後まで監督が全部責任を持って見るので、一人の人間への負荷が大きい。米国の場合は、もう少し責任が分担されていて、本来の仕事である演出にもっと集中できるようです。
そういうやり方はハリウッドメジャーの予算があるからこそできるのかもしれませんが、僕自身がもっと色々なやり方を学びたいという想いもあり、今回のプロジェクトを立ち上げました。


――今の日本アニメの育成と制作のスキームに変化が必要という認識ですか。
松村:そうですね。全体のアニメーターの数はそれほど増えていませんし、上手い人を有力スタジオで取り合う状態です。重要なのは、アニメ業界に流入しやすい体制を作れるかどうかだと思います。
アニメーターのキャリアは、日本の場合は動画から始めて、原画から作画監督に昇格か、あるいは演出に行く場合が多いです。そこで、海外のやり方を参考に、もっとキャリアの多様性が出ると良いなとも思っています。それぞれの人には得意と不得意なものがあるはずで、もっと作業を細分化した方がいいのかもしれない。そうした方がアニメ業界に入るハードルを下げられるかもしれないと考えています。
アニメ制作の川上から川下まで教えたい
――今回のプロジェクトで対象とする育成範囲は広く、ほぼすべての工程に対して募集していますね。
松村:最終的にうちに定着してくれれば嬉しいのですが、それ以上に業界の活性化につながればという想いです。カリキュラム的には座学と制作実習の2つに大別できるのですが、一度業界に入ってどこかのパートに所属すると、自分のパートのことだけ掘り下げる形になって他の工程のことがわからなくなりがちです。ですので、この育成プロジェクトでは、企画書の作り方から始めて、脚本、作画、撮影、音響など一通り学んでもらおうと思っています。そうすると例えば、作画を目指している人が、他に自分が向いている道を発見するきっかけになるかもしれないと思いますので。各講義には、それぞれのパートの専門家をお呼びする予定です。





![文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等支援事業[育成プログラム構築・実践])|独立行政法人日本芸術文化振興会](/imgs/p/YvWQf5r8fsC9841p4xlHsNPRqN_m3Nzb2tnY/11062.jpg)

