公正取引委員会、映画・アニメ制作の取引実態調査を公表。製作委員会方式・著作権契約の現状と法的見解を示す【映画編】

公取委は映画・アニメの取引実態調査を公表。製作委員会方式での予算硬直化や著作権の「無償譲渡」など、現場を圧迫する商慣習にメスを入れた。「買いたたき」等の法的リスクの所在と、業界適正化に向けたガイドライン策定の動きを解説する。

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出典:公正取引委員会
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2025年12月24日、公正取引委員会(以下 公取)は、映画・アニメの製作現場の取引環境に関する、実態調査の結果を公表した。製作委員会側とプロダクション、さらにはフリーランスへのアンケートとヒアリング調査を実施したこの調査では、物価上昇下でも制作費が据え置かれる現状や、権利の帰属を決める際の契約内容の認識のズレなど様々な面での課題を浮き彫りにしている。

本記事では、映画に関する取引実態の調査と、公取がそれぞれの課題に対して示した法的見解を詳述する。


【アニメ編はこちら】


調査趣旨:クリエイターの創造性が守られる環境へ

本調査の背景には、映画やアニメなどのコンテンツ産業が「国の誇るべき財産」と位置付けられているにもかかわらず、クリエイターが安心して持続的に働ける環境がいまだ未整備であるという課題認識がある。

そこで公取は、岸田内閣時代の令和6年6月21日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に基づき、本調査を実施。クリエイターの創造性と産業の成長・持続可能性を両立させ、取引環境を整備するための基礎資料とすることを目的としている。

調査対象は、制作会社1,607社とフリーランス2,000人超で、回答の回収数は制作会社436社でフリーランスは143人。また、アンケート調査のみならずいくつかの会社とフリーランスにヒアリング調査も実施している。

製作委員会方式のメリット・デメリット

報告書は、日本映画の製作概況として製作委員会方式の仕組みについて解説している。日本映画では、映画会社や広告代理店、放送局や出版社、芸能プロダクションなどが共同で出資し任意組合として製作委員会を組成、利益は出資比率などに応じて配分される仕組みが一般的だ。

出典:公正取引委員会

また、二次利用などの許諾契約を締結する窓口運営権(放映権、動画配信権、商品化権など)を「窓口権」と呼ぶ。製作委員会の各事業者はこれを分担し、二次利用収入から窓口手数料を控除した残額が、製作委員会全体の収入となる。配分収入だけで出資分を回収できない場合でも、窓口手数料によって回収できるケースがあるため、出資者はリスクを低減しつつ映画製作が可能となる。

製作委員会方式の利点は、各事業者が協力して配給・興行・宣伝を行える点や、商品化など各々の得意領域で利益最大化を図れる点にある。後述するように、完成作品の著作権は原則として委員会で共有され、その運用によって利益を生み出すモデルだ。

一方、プロダクションは製作委員会と「制作委託契約」を結ぶ形で映画制作を行う。権利運用に関与せず制作に集中できるため、「製作(出資・事業)」と「制作(実作業)」を分離し、互いの強みを発揮できる構造と言える。

しかし公取委は、この構造に課題も指摘している。製作委員会は原則として全会一致で意思決定を行うため、元請制作会社が制作費の増額や条件変更を求めた際、幹事会社の一存では即決できず、交渉が難航・停滞する要因になっているという。


《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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