SUPER EIGHT安田章大が語る「音はハグのよう」— Netflix『火垂るの墓』音声ガイド付き上映会レポート

Netflixの『火垂るの墓』音声ガイド付き上映会で、安田章大が音の温かさと感情の伝え方を語り、視覚に制限ある方も楽しめる工夫と作品の普遍性を紹介した。

映像コンテンツ 動画配信
SUPER EIGHT安田章大さん
SUPER EIGHT安田章大さん
  • SUPER EIGHT安田章大さん
  • SUPER EIGHT安田章大さん
  • 左から吉野菜穂子氏、安田章大氏、矢代新一郎氏
  • 左から吉野菜穂子氏、安田章大氏
  • 矢代新一郎氏
  • 左から吉野菜穂子氏、安田章大氏

2025年7月12日、Netflix主催によるスタジオジブリの名作『火垂るの墓』の音声ガイド付き上映会が開催された。会場には視覚に制限のある方が多数招かれ、介助犬を連れた人の姿も見られた。本作の日本語音声ガイドでナレーターを務めたSUPER EIGHTの安田章大さんが登壇し、音で物語を体験する意義と魅力を語った。

ステージのスクリーンにネットフリックスのロゴが映し出される中、マイクを持って話すSUPER EIGHTの安田章大氏(右)と、隣で進行役を務める吉野菜穂子氏(左)。

イベントは、Netflixのアクセシビリティへの深い配慮を象徴する形で始まった。司会を務めた同社で吹き替えチームを統括する吉野菜穂子氏は、マイクを持って登壇するとまず「私はショートカットで髪の毛の色は黒、身長は165センチです」と、自らの外見的特徴を丁寧に説明。視覚情報に頼らない参加者に向けたこの紹介は、本イベントの目的と音声ガイド制作の意義を体現していた。吉野氏は、Netflixが「国境や時代、言語、視覚や聴覚など様々な違いや制限を超えて」作品を届けることを目指しており、その一環として音声ガイドの提供に力を入れていると語る。Netflixオリジナル作品の多くで音声ガイドを提供しており、最大で30の言語で展開しているという。

続いて登壇したのは、原作小説を刊行し、映画の著作権も有する新潮社のコンテンツ事業室長、矢代新一郎氏だ。矢代氏は、2018年の高畑勲監督の逝去や世界で続く争いを背景に、「この貴重な作品を預かる会社の人間として、もう一度きちんと取り組み直す必要がある」と強く感じていたと明かした。

転機は2024年のカンヌ国際映画祭でのスタジオジブリへの名誉パルムドール授与だ。これを機に『火垂るの墓』は、Netflixでの世界190カ国以上での配信や50カ国以上での劇場公開が決定し、大きな成功を収めたという。特にベトナムでは8万人以上、中南米では約29万人を動員、旧作としては異例の大ヒットとなったという。「ベトナムの方のコメントは日本人と全く同じ感覚。この映画で世界はもっと一つになれる」と、矢代氏は作品の普遍的な力を熱く語り、音声ガイドの提供により、さらに多くの人に広がることでさらに世界がひとつになることへの期待を述べた。

映画『火垂るの墓』のポスターが立てられたステージで、マイクと紙を持ち挨拶する新潮社の矢代新一郎氏。

イベントのハイライトとなったのが、安田章大さんのトークセッションだ。安田さんは、2017年の脳髄膜腫の手術の後遺症で光過敏を患っている。その体験から「家の中でテレビを見るにしても、部屋をすごく暗くして光の刺激をなるだけ少なくする生活の中で、耳を大事にし、耳からもらった情報で感情を落とし込んでいくようになった」と語り、自身が日常的に音声ガイドを利用していることを明かした。


《杉本穂高》

関連タグ

杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

編集部おすすめの記事