フジ・メディア・ホールディングスが2025年3月期通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の売上予想を500億円引き下げた。
フジテレビジョンの一連の報道を受けてクライアントがテレビCMを見合わせる事態となり、広告出稿キャンセルも相次いだ。フジテレビはACへの差し替えやキャンセルについて、広告料金を請求しない方針を掲げた。クライアントとの信頼関係の維持を優先した形だ。
前代未聞の事態に見舞われているテレビ業界だが、番組制作会社への影響も計り知れない。
来期からはクライアントの信頼を回復して従来の事業活動が行えるか?

※決算短信より筆者作成
フジ・メディア・ホールディングスが下方修正したことにより、2025年3月期の売上高は前期比3.2%減の5,482億円、営業利益は同46.3%減の180億円となる見込み。コロナ禍の2021年3月期以降は増収を重ねてきたが、再び転落。今期の営業利益率は予想通りの着地で3.3%であり、2021年3月期とほぼ同じ水準まで下がることになる。
フジ・メディア・ホールディングスは「今後早期に広告の発注を再開していただくため広告料金を請求しない方針としました。」と発表している。中居正広氏の問題に関連する第三者委員会を立ち上げたのが2025年1月23日。これは日本弁護士連合会が策定する「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠するもので、徹底した調査と専門家による分析を踏まえ、再発防止策等を提言するもの。信頼回復に向けたベスト・プラクティスを取りまとめたものだ。
この調査報告書の提出は2025年3月末が目途となっている。フジ・メディア・ホールディングスとしてはこの報告書をもって一連の問題の幕引きを図り、必要に応じて役員や関係者の処分を下し、2026年3月期からは視聴者やクライアントなどステークホルダーからの信頼を回復して新たなスタートを切りたいところだろう。
日枝氏の去就はいかに
しかし、フジ・メディア・ホールディングスの一番の山場は2025年6月の株主総会だ。
仮に調査報告書で「上納システム」なる組織的な関与はないと明らかになったとしても、組織内で力の強い人物が社員などに対して食事会への参加を強要し、それを周囲が咎められないような空気感が醸成されていたとしたら、その組織風土を形成するに至った役員の責任は重くなる。
事業内容は異なるが、日野自動車は排気ガスや燃費の不正が2022年に発覚した。その第三者委員会からは不正の要因の一つを「上意下達の気風が強過ぎる組織、パワーハラスメント体質」と結論づけている。過去の先駆者や功労者に対する尊敬の念が強く、上の世代が言うことは素直に従うことが美徳であるという気風があるように見受けられるというのだ。一連の問題を受け、日野自動車生え抜きの取締役3人は経営責任をとって退任した。
フジ・メディア・ホールディングスの先駆者であり、功労者といえば日枝久取締役相談役だ。フジ・メディア・ホールディングスに悪しき組織風土が形成されるに至ったと調査報告書で指摘されているとすれば、やり玉にあがるのは間違いないだろう。
米アクティビストのダルトン・インベストメンツは2月3日の書簡で、企業統治に欠陥があるとして取締役会に絶大な支配力と影響力を持つ日枝氏の退任を要求した。一方、放送局は外資規制によって持株比率は20%までと定められている。従って、ダルトンとその他海外の株主に強い支配力はない。
ただし、堀江貴文氏がフジ・メディア・ホールディングスの株式を取得したと公言している。6カ月以上前から株式を継続保有し、議決権の1%以上を持っていれば提案は可能。つまり、株主総会で株主提案ができることになる。
ダルトンだけでなく、こうした個人株主が合流して大きな力を持つ可能性もある。そうなれば、株主総会の取締役選任は紛糾するだろう。2025年3月末の調査報告書の発表後、フジ・メディア・ホールディングスが然るべき処分を行わなかった場合、この問題は6月まで尾を引くことも十分にありえるのだ。
中小零細やフリーランスにとって死活問題に
なにより厳しい立場に置かれているのが、実際に番組の制作や進行に携わっている社員やスタッフ、番組製作会社だ。