映像クリエイター向けの事業を展開するVook主催のオフラインイベント「VIDEOGRAPHERS TOKYO 2024」が7月9日(火)・10日(水)に都内で開催された。
本イベントでは多様なテーマでトークセッションが催され、会場には多くの映像クリエイターが訪れ賑わっていた。今回は、その中から生成AIをテーマにした、「クリエイターは、生成AIに淘汰されるのか?」のレポートをお届けする。
本セッションでは、映像ディレクターとしてドラマ作品を中心に活躍する曽根隼人氏が、様々なAIツールの活用方法と動画生成AIツール登場後の映像業界の展望を語る。MCは演出家/コミュニケーション・プロデューサーの高島太士氏が務めた。
曽根氏はBABEL LABEL所属の映像監督でTVドラマ「封刃師」、「インフォーマ」等で監督を務めてきた。今年9月には単行本「実例をもとに映像ディレクターが作り方を解説! 生成AI×映像制作 解体新書」の刊行を予定しており、国内の映像ディレクターの中でも既存のツールと組み合わせながら積極的に生成AIツールを駆使する人物だ。多様化する生成AIツール
曽根氏は「まずはAIを触ってみてほしい。AIを知らずして良し悪しの判断はできないだろう」という思いから、様々な事例を紹介してくれた。
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絵コンテを描くことが苦手だという曽根氏は「Krea.ai」で自分の描いた絵をアップデート。そこから一段階応用し、Blenderで作った荒いCG画面をリアルタイムでキャプチャして、画像に生成するといった試みも行ったそうだ。リアルタイムと言えど現在の技術では多少タイムラグがあるが、もう少し進化すれば荒いCGからハイクオリティな映像に変換できるのではないかと展望を語った。
「ComfyUI」では多くのカスタマイズが可能なので、4枚の画像を読み込みモーフィングのような形で動かすなど様々なことに挑戦した。また、動画をアニメ風に変換できる「Domo.AI」は直観的に触ることができ、AIで実写映像をアニメーション風に加工したり、様々なテイストで質感も調整したりできるという。
▼「Domo.AI」を使用したCM。
これまでの映像生成AIは連続性の途切れや物体の崩壊、顎が伸びていくなどの形状破綻の問題があった。Open AIは動画生成AIモデルの「Sora」を発表。まだリリースされていないものの、このモデルから形状破綻がなく連続性があるハイクオリティな映像づくりが可能になってきているという。
本モデルのリリースを心待ちにしている間に、「Luma Dream Machine」というツールが登場した。これは読み込んだ画像から映像を作れるもので、画像をつなぎ合わせて映像にすることができる。
また、テキスト(プロンプト)から映像をつくれる「Runway」にGen3が新登場したので、曽根氏は「Luma Dream Machine」と組み合わせて映像を作ってみたという。
これらのツールを一通り使ってみて、「非常に自由度が低い」と感じた曽根氏。実際の映像撮影ではカメラを構えた時にアングルや映像が何ミリなのかといったセレクトができるが、それが生成AIでは難しい。“生成AIで映画を作る”ことは可能だが、それを言えるのは普段映像を作っていない人たちだろうと語る。クリエイターとしては、AIでは細かいこだわりをコントロールできずもどかしい気持ちになることが多く、“クリエイター視点での映画づくり”とはかけ離れたものになってしまうそうだ。
進化が速いAIツールだが、自由性を確保するために3DCGの技術を学んでいく必要があると感じた曽根氏は、新たにBlenderも勉強し始めたという。3Dモデルをつくる生成AIは既に存在していて、「TRIPO AI」やアドビの「mixamo」で骨や筋肉をいれてモデルを動かしたり、「Skybox」で画像を360度にして背景をつくったり、UVマッピングで絵のクオリティをあげたり、様々なツールでパーツをつくっていきながら、カメラレイヤーやライティングはクリエイティブしていくような形を模索しはじめた。
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ここまで多くのソフトの名前が登場し、生成AIツールも多様化していることが分かった。それらは単体でも活用可能だが、曽根氏は様々なツールを組み合わせてパーツを作成し、組み合わせていくような映像制作にチャレンジしていきたいと考えている。
クリエイターは生成AIに淘汰されるわけがない!
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