『化け猫あんずちゃん』MIYUプロダクション代表が語る、日仏共同制作の裏側「企画開発段階から、新たな作り方を模索」

映画『化け猫あんずちゃん』が7月19日(金)に公開される。本作は老舗アニメスタジオ・シンエイ動画と、『リンダはチキンがたべたい!』や『めくらやなぎと眠る女』などで高く評価されるフランスのMIYUプロダクションが共同で制作した。フランスと日本、異なるスタジオがどのようにコラボしたのか、プロデューサーに話を聞いた。

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『化け猫あんずちゃん』
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会 『化け猫あんずちゃん』
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7月19日(金)に公開される『化け猫あんずちゃん』は、カンヌ国際映画祭監督週間とアヌシー国際アニメーション映画祭へのダブル選出という快挙を果たした。

本作は『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』シリーズで知られる日本の老舗アニメスタジオ・シンエイ動画と、『リンダはチキンがたべたい!』や村上春樹の小説をアニメーション化した『めくらやなぎと眠る女』(7月26日公開)などで高く評価されるフランスのMIYUプロダクションが共同で制作した。

監督は久野遥子氏と山下敦弘氏の二人が担当。実写の映像をもとにアニメーションを製作するロトスコープという手法で制作された。キャラクターの作画はシンエイ動画が、背景美術と色彩設計はMIYUプロダクションが担当したという。

フランスと日本、異なるスタジオがどのようにコラボしたのか、MIYUプロダクションのプロデューサー、エマニュエル=アラン・レナール氏とピエール・ボサロン氏に話を聞いた。

写真左から、MIYUプロダクションのエマニュエル=アラン・レナール氏とピエール・ボサロン氏。

日本との共同制作が増えている理由

――MIYUプロダクションはどんなタイプのアニメーションスタジオなのでしょうか。

エマニュエル我々は、アニメーションとはこういうものだという固定観念や限界を超えていけるかどうかを大事にしています。ジャンルや物語についても、規制や固定観念に縛られずに新しいものに挑んでいきたいと思っています。アートアニメーションが得意だというように言われることもありますが、それだけでなく、子どものための作品も作っていますし、一方で、アニメーションは子どものためという固定観念にとらわれずに大人のための作品作りもしています。さらに、フィクションだけでなくアニメーションドキュメンタリーも手掛けています。今回、日本のスタジオとの共同制作が実現しましたが、これはフランスでは珍しいことで、だからこそ、我々は挑戦をしたかったのです。総じて、イノベーションと多様性を重視していると言えると思います。

――企画を選ぶ時に何を大事にされているのですか。

エマニュエルやはり、心が深く動かされるかどうかに尽きます。アニメーション作りは長い時間を要しますから、深く心が動かされていないとできないと思うんです。それから、監督にほれ込んでいることが重要ですね。

――MIYUプロダクションは近年、日本との共同制作が増えていますね。これはなぜなのですか。

エマニュエル我々は日本映画が大好きで、中でもアニメーション映画が好きだからです。そんな大好きな日本の映画制作者と一緒に作りたかったのです。これまでにも日本の制作者と短編アニメーションを製作してきました。日本のインディーズのアニメーション作家たちは、国内でのファイナンスに難を抱えていたようなので、そこを我々がお手伝いしたかったのです。

日本のクリエイターと作った短編は、アヌシー国際アニメーション映画祭に選ばれるなど実績を残せました。しかし、短編だけでなく、長編もやりたいと言う気持ちも持っていたので、今回は日本のシンエイ動画と一緒に長編映画に挑むことになりました。

ピエール近年、ストリーミング配信が世界に広まり、映画の作り方も大きく変化しています。その中で、これまで実現しなかった他国とのコラボレーションが可能となったり、新しい作り方を模索したりしている時期だと思うんです。そんな時期に、シンエイ動画も新しいことに挑戦したいと考えられていたようで、我々も同じ気持ちでいたというのがありますね。

パイロットフィルム作りが重要だった

――新しい作り方にも関わることかもしれませんが、日本とフランス、制作スタジオが2つある中でどのように制作が進められたのですか。


《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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