急成長する中国発ショートドラマ。ポイントは巧みな広告誘導と課金のしやすさ【インタビュー】

1話1~2分、1タイトルで80話~100話ほどで構成される超短尺の縦型ショートドラマが中国から世界で大流行している。成長を加速するショートドラマ市場の内実を、日本、中国及び全世界向けにショートドラマ取次・制作事業を手掛ける金氏に話を聞いた。

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中国で昨年から、1話1~2分の超短尺の縦型ショートドラマが流行しており、動画コンテンツの新しい形式として注目を集めている。すでに米国や日本をはじめ、海外にも積極的に進出しており、その勢いは世界へと拡大しようとしている。

ショートドラマとはどういうもので、なぜ人気を博しているのか。日本、中国及び全世界向けにショートドラマ取次・制作事業を手掛ける株式会社和雅のCEO金光国氏にその内実を聞いた。

優れた課金システムで急成長

――まずは、金さんのキャリアを教えてください。

日本の大学に留学し、卒業後に日中韓間のコンテンツビジネス事業を行っていました。『諸葛孔明 人間力を伸ばす七つの教え』などを日本語に翻訳して出版する事業や、アニメ『三国志』の日中共同製作にプロデューサーとして参加していました。2010年に中国へ戻り、現在はウェブトゥーンをピッコマやLINEマンガなどに提供する仕事をしています。そこから日本のモバイルコンテンツ市場のトレンドやローカライズの力を蓄積してきました。

2023年から中国で超短尺の実写ショートドラマが急速に流行しており、2023年は中国だけで約7,800億円の経済規模となっていて、すでに100社以上のショートドラマのプラットフォームが存在しています。海外市場にもすでに進出しており300億円の規模にまでなっていますが、これからどんどん伸びていくでしょう。中国では、2027年には2兆円の経済規模になると予測されています。

この流れに従って、弊社では昨年から中国・日本のショートドラマの取次・制作にも関わるようになりました。主な仕事は下記の3つです。弊社と提携することで、大手ショートドラマのプラットフォームであるShortMaxやDramaBox、ReelShortなどを通じてコンテンツを一気に全世界に広げることができます。

  1. 日本の既存のコンテンツ(長編ドラマ、アニメーションなど)をショート化(内容の編集はしない)してShortMaxなどのショートドラマプラットフォームに版権取次を行う

  2. 日本コンテンツIPのリメイク権を獲得し、ショートドラマプラットフォーマー(ShortMaxやDramaBox)と提携しながらショートドラマを制作

  3. 日本企業と上記ショートドラマプラットフォーマーと一緒に共同制作を実施し、世界に配信

――ショートドラマはどう定義できるものでしょうか。

明確な定義はありませんが、縦型で、ひとつのエピソードの長さは1分から2分、1タイトルで80話~100話ほどで構成されるものが多いです。スキマ時間にスマートフォンで見るコンテンツという点でウェブトゥーンの映像版みたいなものと言えます。

モバイルの映像コンテンツは大きく2種類に分類できます。物語(Scripted)と非物語(Unscripted)です。紙だと小説と新聞、テレビだとドラマとニュースという風に分けられると思います。モバイルにおいて、“非物語”はTikTokの日常系のコンテンツに代表されるものですでに存在していましたが、昨年になって“物語”のショートコンテンツが登場し、大きく発展しています。おそらくショートドラマの分野でもNetflixのような配信サービスができるのではないかと予測されます。

――中国でショートドラマが流行り出したきっかけはあったのですか。

きっかけとしてよく言われているのは2022年後半から中国国内のTikTok(抖音)が大きな宣伝形態や課金システムを構築したことでした。特に課金システムがよく出来ていて、動画を何秒か切り出し、AIなどを駆使して、ユーザーが気に入りそうなターゲット広告を様々なところに出すことができます。さらに、それをタップしてすぐに決済できるような仕組みになっています。課金までの仕組みが優れていたので、2021年には700億円程度だった経済規模が一気に7,000億円台にまで成長したのだと思います。

――成長速度が速いですね。ショートドラマの収益源は、基本的にユーザー課金だけですか。広告もあるのですか。

中国国内では都度課金がメインですが、中国以外の海外では都度課金に加えて、広告モデル、定額課金(サブスク)が含まれます。国によってビジネスモデルが少し違いますが、先進国には都度課金が多く、東南アジアのような人口が多く収入が比較的少ない国では広告モデルが多いです。現段階では基本モデルは都度課金で、どこの国も課金からの売上が多いです。広告モデルと定額課金にも力を入れればさらに売上はあがるでしょう。都度課金モデルは10話くらいまでは無料で見られて、それ以降を観たい人は課金してもらうような仕組みが多いですね。

――どういう企業がこのショートドラマに参入しているのですか。

主に5つの勢力があります。広告系、Web小説系、ターゲット広告の配信会社、ネットドラマのプロダクション、それから映画やドラマのプロダクションです。中国国内プラットフォームでは「ShortMax」の親会社九州文化と「DramaBox」の親会社である点衆科技の2社が断トツで大きいです。前者はターゲット広告の配信会社で後者はWeb小説系の企業になります。

作品として一番売れているのはターゲット広告系の会社が作ったもので、映画などの作品づくりのプロの人たちが作ったものほど品質は高いが現段階では売れていないのが現状です。広告系の人たちはどういうショートドラマ作品がこの分野では売れるのか、よく分かっていますね。質が高くてもショートドラマの作り方に合わないと質が高いものとしても売れるとは限らない世界です。

――今までの映像作品のロジックで制作しても売れるとは限らないわけですね。

ショートドラマはユーザーの感情を煽る作品でストーリーのロジックが通らなくてもユーザーは納得しています。逆にロジックを通すために説明が多ければ、展開が遅いとユーザーが離れていく場合が多いです。ショートドラマのコンテンツはもう既存の映像作品とは違うコンテンツと言っていいと思います。すでにショートドラマ専門の会社や俳優の事務所もありますし、その枠に既存の俳優やプロの制作者も参入してきているという状況です。

――中国ではどんな作品が人気なのですか。


《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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