【カンヌ国際映画祭2024】パルムドールは『Anora』ショーン・ベイカー監督の手に

5月14日から25日まで行われた第77回カンヌ国際映画祭が無事閉幕し、ショーン・ベイカー監督の『Anora(原題)』がパルムドール賞を受賞した。

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ショーン・ベイカー監督
Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images ショーン・ベイカー監督
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5月14日から25日まで行われた第77回カンヌ国際映画祭が無事閉幕し、ショーン・ベイカー監督の『Anora(原題)』がパルムドール賞を受賞した。

今年はグレタ・ガーウィグがコンペティション部門の審査員長、グザヴィエ・ドランがある視点部門の審査委員長に。審査員にはリリー・グラッドストーン、エヴァ・グリーンなどのほか、是枝裕和監督も選ばれた。

Photo by Neilson Barnard/Getty Images

映画界に貢献した人に贈られる名誉パルムドールジョージ・ルーカスメリル・ストリープ、そしてスタジオジブリが受賞。人物ではなく、団体に授与されるのは初とのことで、宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーからのビデオメッセージが届き、授賞式には宮崎駿監督の長男である宮崎吾朗監督らが出席した。

PALME D'OR D'HONNEUR – STUDIO GHIBLI – Rang I – English – Cannes 2024

またコンペティション部門には22作品が選ばれ、パルムドールに輝いたのは、セックスワーカーが主人公のロマンティックドラマ『Anora(原題)』。同作を手掛けたショーン・ベイカー監督は「過去、現在、未来のすべてのセックスワーカー」に賞を捧げるとし、また「携帯電話をスクロールしたり、メールをチェックしたり、中途半端な注意を払いながら、家で映画を観ることは、一部のハイテク企業はそう思わせたがっていますが、世界はそうではないことを思い知らされなければなりません。映画館で他の人と一緒に映画を観ることは、素晴らしい共同体験のひとつである」「映画の未来は映画館から始まると言っているのです」と力強くコメント。さらに同作の配給会社NEONは、『パラサイト半地下の家族』から数えて今年で5年連続でのパルムドールとなり、話題となった。


インドのパヤル・カパディア監督は『All We Imagine as Light(原題)』で、映画祭で2番目に名誉のあるグランプリを受賞。インド映画がコンペティション部門に選出されるのは30年ぶりのことだ。

昨年、役所広司が『PERFECT DAYS』で受賞した最優秀男優賞は、ヨルゴス・ランティモス監督による『Kinds of Kindness(原題)』にて3役を演じたジェシー・プレモンスに贈られた。最優秀女優賞はメキシコを舞台にしたミュージカル『Emilia Perez(原題)』からゾーイ・サルダナアドリアナ・ラパスセレーナ・ゴメスカーラ・ソフィア・ガスコンが受賞。同作は審査員賞にも輝いた。

さらに審査員たちは、『The Seed of the Sacred Fig(原題)』の製作で8年の実刑判決を受けたイランのモハマド・ラスロフ監督に特別賞を授与。カンヌ国際映画祭へはイランから極秘に出国して参加した。この作品の北米での権利もNEONが取得している。

日本作品はコンペティション部門に選出されなかったものの、ある視点部門に奥山大史監督の『ぼくのお日さま』が選出されていた。吃音のあるアイスホッケーが苦手な少年とフィギュアスケートのコーチ、そしてコーチに憧れるスケート少女を描いた作品で、公式上映では鳴りやまぬ拍手で包まれたという。また、監督週間に出品された河合優実主演の『ナミビアの砂漠』からは、山中瑶子監督国際映画批評家連盟賞を受賞した。

🎥コンペティション部門 受賞結果一覧

パルムドール🏆:ANORA(原題)/ショーン・ベイカー 

グランプリ:ALL WE IMAGINE AS LIGHT(原題)/パヤル・カパディア 

最優秀女優賞・審査員賞:EMILIA PEREZ(原題)/ジャック・オーディアール 

最優秀男優賞:KINDS OF KINDNESS(原題)/ヨルゴス・ランティモス 

監督賞:GRAND TOUR(原題)/ミゲル・ゴメス 

脚本賞:THE SUBSTANCE(原題)/コラリー・ファルジャ 

特別賞:THE SEED OF THE SACRED FIG(原題)/モハマド・ラスロフ※ 

THE APPRENTICE(原題)/アリ・アッバシ 

MOTEL DESTINO(原題) /カリム・アイノズ

BIRD(原題)/アンドレア・アーノルド

MEGALOPOLIS(原題)/フランシス・フォード・コッポラ

THE SHROUDS(原題)/デビッド・クローネンバーグ

MARCELLO MIO(原題)/クリストフ・オノレ

CAUGHT BY THE TIDES(英題)/ジャ・ジャンクー

ALL WE IMAGINE AS LIGHT(原題)/パヤル・カパディア グランプリ

L'AMOUR OUF(原題)/ジル・ルルーシュ

WILD DIAMOND(英題)/アガット・リダンジェール

OH CANADA(原題)/ポール・シュレイダー

LIMONOV - THE BALLAD(原題)/キリル・セレブレニコフ

PARTHENOPE(原題)/パオロ・ソレンティーノ

THE GIRL WITH THE NEEDLE(英題)/マグヌス・フォン・ホーン

LA PLUS PRÉCIEUSE DES MARCHANDISES(原題)/ミシェル・ハザナヴィシウス※

THREE KILOMETRES TO THE END OF THE WORLD(英題)/エマニュエル・パルヴュ※

※4月22日に追加

その他の受賞結果はこちらから。


Sources:Variety, Deadline, The Wrap
《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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