バンダイナムコホールディングスのアニメ・映像部門であるIPプロデュース事業が堅調だ。
2024年4-6月の売上高は前年同期間比4.9%減の333億3,700万円、営業利益は同32.1%減の23億4,700万円だった。減収減益だが、2024年3月期通期の売上高を前年同期比1.5%増の830億円、営業利益を同3.3%増の110億円と予想している。
IPプロデュース事業は下期に業績が偏重する傾向が強く、2023年3月期も上半期は減収減益だったが、通期は2.2%の増収、20.5%の増益だった。今期も下半期での巻き返しに期待がかかる。
バンダイナムコは、2022年4月にIP創出の中核を担う部門「IPプロデュースユニット」の組織再編を行った。その取り組みが奏功している。
ガンダムを生み出したサンライズが消える
再編は大胆な内容だった。
バンダイナムコアーツの映像事業、サンライズ、バンダイナムコライツマーケティングを統合。音楽・ライブイベント事業は、バンダイナムコアーツの音楽事業、バンダイナムコライブクリエイティブ、サンライズミュージックを統合した。
「機動戦士ガンダム」や「ラブライブ!」などの人気シリーズを手掛けるサンライズと、グループ内に分散していた映像関連事業をすべて集約した。統合して誕生した新会社がバンダイナムコフィルムワークスだ。数々の名作アニメーションを世に送り出したサンライズの名は消滅した。
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※「完全子会社間の吸収分割と吸収合併による組織再編のお知らせ」より
サンライズは1994年にバンダイが出資をしてグループ会社となった。
バンダイの業績を支える主力商品の一つがガンプラだ。国内のトイホビーにおける「機動戦士ガンダム」関連商品の売上高(2023年3月期)は、605億円に上る。バンダイナムコのトイホビー事業全体の売上高のおよそ3割を占めている。
ガンプラの売れ行きを左右するのが映像作品だ。ガンダムは初期シリーズからのファンが多く「ガンダム=サンライズ」のイメージが強いため、その名を消すことに対して少なからず抵抗はあったはずだ。あえてそこに切り込むことで、ガンダムシリーズとそれと肩を並べるIP創出するという、強い意気込みが感じられる。
そしてその成果は出ている。
アニメーション1作品の制作コストは上昇するも利益率は改善
組織再編によって、10あったアニメの制作チームは5つに集約している。1スタジオ当たりの人員を増やし、労働環境を整えると同時にスタジオごとの品質コントロールをしやすい体制を整えた。すなわち、マネジメントしやすい環境を整えてスタジオごとの生産性を上げたのだ。
バンダイナムコは、2023年3月期にアニメーション1作品当たりの制作費そのものは上がっていると説明している。しかし、「機動戦士ガンダム 水生の魔女」や「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」、「ブルーロック」などのアニメが人気を博し、IPの配信、番組販売、ライセンスなどによる収益が好調で増収だった上、利益率は2022年3月期の11.0%から13.0%まで2ポイント上昇している。
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※決算短信より筆者作成