WOWOWの業績不振が鮮明になってきた。
2023年度上半期の売上高は、前年同期間比4.8%減の366億1,400万円、営業利益は51.2%減の10億3,900万円だった。営業利益率は5.5%から2.8%まで下がっている。
WOWOWが抱えている最大の課題が加入者数の減少だ。動画配信サービスであるWOWOWオンデマンドを2021年1月から開始しているが、加入者数は上向いていない。
9月1日から作品単位で都度課金する「WOWOWオンデマンドPPV」を開始した。新たな料金体系を設けて会員数の減少に歯止めをかけ、増加へと転じることができるのか注目だ。
営業利益率は1.2%まで低下する見込み
2023年10月末時点での、累計正味加入件数は249万だった。前年同月比で4.0%減少している。WOWOWは2018年に累計加入件数が頭打ちとなり、減少へと転じた。それ以降は下がり続けている。
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※加入件数推移より筆者作成
WOWOWの業績は会員による視聴料に支えられているため、会員数が業績に直結するといっても過言ではない。売上高は会員数が減少に転じた2020年3月期から減収となった。2024年3月期の売上高は前期比2.1%減の755億円を予想している。
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※決算短信より筆者作成
2022年3月期は別事業のテレマーケティングが好調で若干の増収となったものの、主力のメディア・コンテンツ事業は減収を重ねている。WOWOWの苦境は営業利益率の推移によく表れている。2024年3月期は赤字ギリギリの1.2%まで下がる見込みだ。2020年3月期は10%を超えていた。
ひとたび赤字に転落すると、中長期的な赤字になる公算が高まる。WOWOWは会員の減少が鮮明になってからは経費削減に努めている。2023年度上半期は広告宣伝費を前年同期間と比較して2億7,100万円、WOWOWオンラインなどのネット運用費を同2億3,300万円削減した。それでも会員収入の減少が減益要因として15億円近い押し下げ要因になっている。
これでは、いくら経費を削減しても減益と赤字を食い止めることができない。
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※決算説明資料より
経費削減を推し進めれば、番組制作費を削る必要性も出てくる。WOWOWは260億円程度を毎年番組費に投じていて、2023年度上半期は133億6,200万円だった。
WOWOWの制作費の多くはスポーツの放映権の獲得だ。2023年は「UEFAスーパーカップ2023」の独占放送を行っており、スポーツファンのつなぎ止めに成功している。番組費を削ることはキラーコンテンツを手放すことになり、致命傷になりかねない。
なお、Disney+はインドで苦戦していると言われているが、その主要因はクリケットの動画配信権を獲得できなかったことがある。ディズニーは2022年までのクリケットの配信権を持っていたが、2023年から2027年までの4,300億円にのぼる巨額な入札を見送った。
インドの視聴者の単価が低く採算がとれないためだが、規模は違えどWOWOWもそろばんを弾いて不採算のものからは手を引く可能性もある。キラーコンテンツの不在、加入者数の減少、減収、減益そして赤字という負のスパイラルだ。そうなる前に手を打つ必要がある。