「日本の精巧さと韓国の推進力が噛み合えばハリウッドとも戦える」。Amazon日韓共同製作映画『ナックルガール』シンポが開催

日韓がタッグを組んで製作し、米国の会社であるAmazonのプライム・ビデオで世界配信される映画『ナックルガール』。その企画の裏側が語られた。

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日韓の映画制作の未来 シンポジウム
©2023 TIFF 日韓の映画制作の未来 シンポジウム
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©2023 TIFF

第36回東京国際映画祭で10月25日(水)、日韓共同製作によるAmazon Original映画『ナックルガール』のシンポジウム、「日韓の映画制作の未来」が開催された。

『ナックルガール』は韓国の人気ウェブトゥーンを原作にした作品。女性ボクサーが妹を救出するため、グローブを捨ててナックルをはめて裏社会を牛耳る犯罪組織に戦いを挑むという内容だ。韓国人のチャン氏が監督を務め、出演者は主演の三吉彩花をはじめ、日本人が占めている。

日本と韓国がタッグを組んで製作し、米国の会社であるAmazonのプライム・ビデオで世界配信されるという国際色豊かな本作。その企画の裏側が語られた。

登壇者は、写真左からチャン(監督)、三吉彩花(俳優)、キム・トーマス(プロデューサー)、石坂拓郎(撮影監督)の4名。

主演の三吉氏は半年ほどアクションとボクシングのトレーニングに費やしたそうだ。はじめてボクシングに触れたそうだが、基礎から繰り返し練習に励んだと言う。プロデューサーのキム・トーマス氏は、キャスティングに関して、色々な俳優を検討したが、「三吉さんの演技を初めて見て、この人だ」と直観して、直接会いに行ったそうだ。チャン監督は三吉の演技について、ボクシングが身体に浸み込んでいるようにしてほしいとお願いしたそうで、その期待に見事に応えてくれたと賛辞を送った。

本作がなぜ日韓の共同製作で作られたかについてトーマス氏は、この原作はどの国でも展開可能な物語だと思ったそうだ。そんな時、Amazonプライム・ビデオが女性主人公の物語を探していると聞き、Amazonと企画を進めることになったという。本作はアクション映画なので、予算規模が大きい。日本でこの規模の作品が作れるか不安があったが、多くの人の尽力で完成したとのこと。

チャン監督の起用については、アクションやヒューマンドラマを得意にしていることで声をかけたそうだが、日本語ができないことに対して不安もあったという。しかし、チャン監督はコミュニケーション能力が高く、未知への挑戦に対して積極的だったために問題はなかったようだ。

そして、本作はロケとキャストが日本、そして裏方のスタッフには韓国クルーが多く参加している。どのように協業していったのかの問いに対して、トーマス氏はインドでのプロジェクト経験が活きたという。チャン監督が日本の撮影監督と組みたいと言ったことには驚いたそうだが、チャン監督を通訳した人物が映画の知識が豊富な人だったようで多くの助けになったそうだ。チャン監督が日本人撮影クルーを起用したかったのは、日本の情緒をよく知る人が必要だと思ったからだという。

撮影監督の石坂拓郎氏は、チャン監督との共同作業について、国をまたいで映画を作ると問題が起こりがちだが、監督が日本の事情を受け入れてくれたのでやりやすかったと語る。チャン監督は日本のスタッフの印象について、「慎重で細やか」とのこと。日本人スタッフの誠実さは素晴らしいが、現場で予期せぬ事態が起きた時の対応力は韓国スタッフの方が長けているという印象を持ったそうだ。韓国の推進力と日本の精巧なモノ作りの姿勢が融合すれば、ハリウッドを超えることもできるという可能性を感じたという。

『ナックルガール』の見どころについて、チャン監督はこれは青春映画だという。アクション映画にありがちな元軍人や特殊エージェントが主人公ではなく、20代でボクサーを夢見る女性が主人公であることに特徴があるとのこと。三吉氏は、「誰一人完璧な人はいない」人間味が溢れてる作品だという。撮影中はほぼ戦っていてアドレナリンが出まくっていたので感じ取れなかったが、完成した作品を観てみると、それぞれのキャラクターが色濃く掘り下げられているので多くの人が感情移入できる作品になっていると語った。

プロデューサーのトーマス氏は、日本映画だが日本映画らしくない作品だと本作について述べた。日韓共同製作でAmazonが出資するという国際色豊かな組み合わせが、日本映画に新たな息吹を吹き込んだと言えるだろう。

《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。