Photo by Antony Jones/Getty Images
ゴールデンウィーク期間の興行収入が歴代最高の売上を記録するなどコロナ禍前に劣らない盛り上がりを見せている日本の映画業界。中国でもゼロコロナ政策が終了し、直後の春節シーズンでは週間成績が歴代最高を記録。全米の年間興行収入も昨年から28%高い水準で推移しているとのことだ。
そんな中、コロナ禍以前のペースを取り戻せていないのが韓国市場。コロナ禍前の2019年時点では、韓国市場は北米、中国、日本に次ぐ世界4位の巨大映画市場として大きな存在感を放っていた。世界人口ランキングが28位であることも踏まえると、国民と映画の親和性が非常に高い国と言える。しかし、コロナ禍以降は数字が伸び悩み、年間興収は世界4位から7位にまで転落。4月の月間興収はコロナ禍前の65.6%ほどの水準までしか数字を戻せていない。
また、最近では一部の作品に対し、配給会社や映画館が観客動員数を不正に水増しする「幽霊上映」という手法で、興行収入ランキングを秘密裏に操作していたことも発覚。警察が強制捜査を行うまでの事件に発展している。このような事件が起きてしまうほど現在の韓国映画市場は深刻な状態で、一部では、1980年代以降の30~40年間で過去最悪との声もある。なぜこのような事態になってしまったのだろうか。
自国コンテンツ伸び悩み…赤字作品が続出
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その根底にあるのは自国コンテンツの人気減少だ。5月末時点での映画ランキングを見てみると、1位が『すずめの戸締まり』、2位『THE FIRST SLAM DUNK』、3位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』と続く。外国映画が上位をほとんど独占しており、8位でやっとヒョンビン主演の『交渉(교섭)』がランクイン。累計動員数は170万人超となかなかの数字に見えるが、実のところは損益分岐点を半分程度しか満たさず、興行は失敗に終わった。
※日本映画の製作費と比べると、プロデューサーが製作費について「邦画5本分」と語った映画『キングダム』で総製作費は10億円以上になるのではないかと推測されていた。
そのため、韓国映画はヒットに向けた水準も自然と高く設定され、現在のように損益分岐点に満たない作品が多く生まれてしまっている。その例としてパク・ソジュン×IU主演『ドリーム(드림)』『対外秘(대외비)』『幽霊(유령)』『リバウンド(리바운드)』など100億ウォン(10億円)以上の予算をかけた作品は軒並み興行失敗という状況だ。
製作費の違いは出資システムにあり
そもそもなぜ製作費が高いのかということだが、まず1つは映画製作費の出資に大きな違いがある。