今や紙の本よりも売上を伸ばしている電子書籍。そのさらなる取り組みとしてKADOKAWAが着手したのが、韓国発の新たなコミックカルチャー『縦読みコミック』だった。その最前線の取り組みを紹介する。
「TIFFCOM」とは国際映画製作者連盟の国内唯一の公認国際映画祭「東京国際映画祭(TIFF)」と併催されるコンテンツマーケットのこと。2022年は「TIFFCOM ONLINE 2022」と題し、2022年10月25日から27日までの3日間、オンラインを舞台にさまざまな映画作品の上映、セミナーなどが実施された。
本稿で紹介するセミナーもそこで配信されたオンラインセミナーのひとつ。セミナータイトルは「縦読みコミックから始まる新しいIPビジネス」。LINE Digital Frontier株式会社・代表取締役の金 信培 (キム・シンベ)氏、株式会社KADOKAWA出版事業グループタテスクコミック部部長の寺谷 圭生氏の両名が登壇し、株式会社ブックウォーカー代表取締役の森田 岳氏がモデレーターを務める中、約46分の公演を実施した。
新時代カルチャー「縦読みコミック」のWEBTOONとは?
縦読みコミックのWEBTOONとは、スマートフォンで読むことに特化した新しいコミックカルチャーのこと。コマ割りを縦につなげており、スクロールするだけで読めるフルカラーの作品群である。
通常のコミックをスマートフォンで読もうとすると、文字が小さかったり、1ページ分の画像の中にコマが複数あったりして読むのに苦労した方も多いはず。そのため1コマずつじっくり見られるよう数珠つなぎにしたり、セリフを大きく表示したりして見やすくしたのだ。また全ページフルカラーのリッチな仕様も表現の解像度を上げる手助けとなっている。
なお販売形式は1話ずつ。単行本の概念はなく、「待てば無料。課金をすれば待たずに読める」というビジネスモデルも確立した。しかし、ただコマを縦につなげればいいというものではない。時には画面をトリミングして注目させたい部分を強調したり、コマとコマの間の余白にセリフを配置したりして「間」を演出するなど、「縦読みコミック」ならではの表現が必要となってくる。
韓国では国策でITを推進したこともあり、2000年代に「縦読みコミック」が急速に発展。韓国大手ポータルサイト「NAVER」が、原稿料にプラスして一部広告料も入る「クリエイター親和的ビジネス構造」制度を取り入れたことでさらに加速した。現在はWEBTOONを原作としたドラマや映画が制作されるに至っている状況である。
KADOKAWAでは「縦読みコミック」を「タテスクコミック」と呼び、現在新たな事業を展開中。「スマホユーザーに最適化した新たなデジタル読書体験の提供」をコンセプトに、「フルカラー」「縦スクロール」「単話販売」の新たなカルチャーを積極的に提供している。また従来のコミックと違ってコマの順番を気にせず読めるというメリットを活かし、将来的には「多言語での世界流通」も視野に入れているという。
一方、「LINEマンガ」の運営元であるLINE Digital Frontier株式会社・代表取締役の金 信培 (キム・シンベ)氏は、日本の編集者や作家と協力しあい、「これが日本のWEBTOONだ!」と言える独自性あるコンテンツを生み出し、将来的には世界中に提供したいと未来像を語ってくれた。