経済産業省は2026年9月11日、「産業構造審議会 知的財産分科会 第30回 不正競争防止小委員会」を開催した。議題は「生成AIにおける肖像や声の無断利用についての関係者からのヒアリング」だ。
生成AIを使えば、特定の俳優に似た人物が演技する動画や、特定の声優・歌手に似た声で歌う音源、本人が発言していない内容を読み上げる音声などを容易に作ることができ、実際に被害が広がっている。
今回の小委員会では、こうした状況に対し、現行のパブリシティ権や肖像権、不正競争防止法でどこまで対応できるのか、また法改正が必要なのかが焦点となった。
小委員会で何が議論されたのか
第30回不正競争防止小委員会の配付資料には、法務省の提出資料に加え、協同組合日本俳優連合(日俳連)、声優有志、一般社団法人日本声優事業社協議会(声事協)、一般社団法人日本音楽事業者協会(音事協)の資料が並んだ。
法務省は、2026年4月から開催してきた「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」の取りまとめ内容を提示している。これは、生成AIによる肖像・声の無断利用について、現行法と判例法理に基づく解釈指針を示すものだ。
一方、実演家・業界団体側は、現行法の解釈だけでは救済が不十分だという問題意識のもと、実際の削除要請や調査事例、被害額の試算、権利行使の困難さを提示している。
法務省は「声」もパブリシティ権の対象になり得ると整理
法務省資料では、パブリシティ権について、最高裁平成24年2月2日のピンク・レディー事件判決を踏まえ、「人の氏名、肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利」と整理している。
重要なのは、保護対象となる「肖像等」に、人の「声」も含まれると示された点だ。声は人格の象徴であり、特定の声優や歌手の声が商品の販売やコンテンツ視聴を促す場合には、顧客吸引力を持ち得る。
たとえば、生成AIで特定の歌手に似た歌声を作り、SNSで公開して収益を得る場合や、声優の演じるキャラクターの声に似せた音源を作り「歌わせてみた」として投稿する場合には、パブリシティ権侵害が成立し得ると整理されている。
また、性的な音声や画像、本人が述べていない発言を読み上げる音声などについては、パブリシティ権だけでなく、肖像や声をみだりに利用されない権利の侵害が問題になる。
ただし、法務省の資料はあくまで現行法の解釈指針だ。ここで残された論点が、今回のヒアリングで業界団体から集中的に示された。

実演家・業界団体が訴える現行法の限界
業界の関連団体の資料で示されたのは、現行の不正競争防止法では、生成AIによる声・肖像の無断利用を十分に捕捉できないという課題だ。




