株式会社IGポートは2026年7月15日、2026年5月期の連結決算を発表した。売上高は140億6,400万円(前期比3.7%減)、営業利益は7億6,600万円(同46.3%減)、経常利益は9億2,000万円(同35.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6億6,900万円(同19.1%減)となり、減収減益での着地となった。
減益の主因は、前期に大きく寄与した版権事業の反動減と、映像制作事業における受注損失引当金の追加計上だ。特に映像制作事業では、吸収合併した旧シグナル・エムディ作品の進行中案件で、スケジュール遅延や人件費高騰による予算超過が判明。アニメ業界全体で制作費が上昇しており、IGポートもその影響を受けた形だ。
一方で、IGポートは中長期的な成長シナリオとして、シリーズ作品を中核に据えた版権収入の拡大を掲げる。制作費高騰の圧力を受けながらも、中長期的な成長シナリオとして、シリーズ作品を事業の中核に据え、版権収入の積み上げを重視している。
反動減と制作損失で減収減益、営業利益はほぼ半減
前期の2025年5月期は、版権事業において自社100%出資作品のライセンス売上が一括計上されたほか、『ハイキュー!!』劇場版をはじめとする劇場作品の収入報告が大きく寄与していた。今期はその反動が表れ、全体の売上・利益を押し下げた。
加えて、映像制作事業では一部作品で受注損失引当金の追加計上が発生した。売上面では複数作品の制作進行により増収となったものの、利益面では大きな赤字が続いている。
単純な需要減ではなく、前期特需の剥落と制作コスト上昇が同時に表面化したことによるものと言える。
映像制作事業は増収も赤字拡大、人件費高騰が構造課題に
映像制作事業の売上高は81億500万円(前期比10.7%増)となった。『デモンズ・クレスト』『THE ONE PIECE』など複数作品の制作が進んだことで、売上は拡大している。
一方、営業損失は13億4,100万円となり、前期の11億100万円の赤字からさらに悪化した。
最大の要因は、2025年6月に吸収合併した旧シグナル・エムディ作品の影響だ。進行中案件の予測原価を精査した結果、スケジュール遅延や人件費高騰の影響によって予算超過が判明。これにより、受注損失引当金、実現済みの損失、進行基準で計上していた利益の取消が発生した。
決算説明資料によれば、旧シグナル・エムディ作品による2026年5月期の利益影響額は約7億7,000万円のマイナス。内訳は、受注損失引当金が約5億2,000万円、実現済みの損失が約8,000万円、進行基準により計上していた利益の取消が約1億7,000万円となっている。
問題は、これが一過性の損失にとどまらない点だ。IGポートは中期経営計画の中で、映像制作事業について、2027年5月期と2028年5月期は大型かつ高粗利の受注により黒字化を見込む一方、2029年5月期以降は継続的な黒字化は難しいとの見方を示している。
背景にあるのは、人件費と外注費の高騰だ。自社の人件費だけでなく、外注先も人件費上昇の影響を受けており、発注単価の上昇につながっている。日本政府が給与水準の引き上げを掲げる中、同社は今後も人件費・外注費の高騰が続くと見ている。
アニメ市場は拡大している。しかし、制作現場は労働集約型であり、規模拡大がそのまま利益拡大につながりにくい。IGポートの決算は、アニメ制作会社が抱える構造的なジレンマを改めて浮き彫りにした。

