2026年5月17日、カンヌ国際映画祭マーケット「マルシェ・ドゥ・フィルム」のCannes Animationの一環として、「From Japan to the World: Expanding the International Distribution Potential of Japanese Animation」と題されたパネルディスカッションが開催された。
登壇したのは、2005年以降、70本以上の日本アニメーション映画をフランスで配給してきたEurozoomの創業者兼CEO、Amel Lacombe氏。もう一人は、チリを拠点にラテンアメリカ17カ国でインディペンデント映画やイベント興行を手がけるBF DistributionのEduardo Calla氏だ。
それぞれの地域で日本アニメがどう受け止められているのか、そして、彼らがどのように作品を買い付け、劇場公開を設計し、ファン層を育てているのかについて実体験をもとに議論が展開。日本アニメが強力なグローバルブランドとなった現在、配給会社はその価値をどう見極め、地域ごとの市場に合わせて届けているのかが語られた。
アニメを映画として扱う
Lacombe氏が日本アニメの配給に取り組み始めた背景には、フランスならではの文化的な土壌があった。フランスではもともとマンガ出版が盛んで、バンド・デシネ文化のなかでもマンガは大きな存在感を持っていた。加えて、1970年代末から80年代にかけて、テレビ局の編成上の事情から日本のアニメシリーズが大量に放送されたことも大きい。
「当時、フランスのテレビ局は新しいチャンネルに流すコンテンツを必要としていました。そこで日本から大量のアニメシリーズを買ってきた。買い付けた側は、それが何なのか十分に理解していなかったかもしれませんが、結果として、フランス人に日本文化への大きな窓を開くこととなりました」

そうした文化の蓄積があった後、彼女は日本を訪れた際、日本で大きな興行成績をあげているアニメーション映画の多くがフランスの劇場で公開されていないことに違和感を覚えたという。そこで、Lacombe氏は、日本アニメを特殊なジャンルやニッチ向けのイベントとしてではなく、通常の映画として扱う配給することに決めた。
かつてフランスでの日本アニメの劇場上映は、パリの一、二館、あるいは地方の大都市での限定的なイベント上映にとどまることが多かった。彼女はそれを、通常の劇場公開として展開したのだ。
「アニメーションはシネマです。日本アニメを特別なジャンルとしてではなく、一本の映画として扱う。それが私の出発点でした」
「ニッチはもうニッチではない」南米でのアニメ映画イベント興行の可能性
一方、Calla氏が所属するBF Distributionは、20年以上の歴史を持つラテンアメリカの独立系配給会社である。同社はもともとインディペンデント映画を中心に扱ってきたが、約15年前から観客の変化を感じ始めたという。
きっかけのひとつは韓国映画だった。BF Distributionは『新感染 ファイナル・エクスプレス』を配給し、大きな成功を収め、「ニッチコンテンツは、もはやニッチではない」と理解したという。

そこから日本のアニメ産業に目を向けると、Calla氏はひとつの巨大な宇宙のような広がりを感じたという。近年の象徴的な例として彼が挙げたのが、『ダンダダン』をイベント上映として公開した経験だ。
「そのとき私たちは、ファンとの会話を始めているのだと感じました。通常の劇場公開とは違う。イベントとして公開することで、コンテンツに劇場公開の価値を与えられると理解したのです」
BF Distributionにとって、日本アニメの劇場展開は単に作品を公開することではない。どのタイトルに劇場体験としての価値を与えるのかを選び、ファンとの対話を通じて市場を育てていく行為なのだという。








