5月18日、カンヌ国際映画祭で、IMAGICA GROUPによる「IMAGICA GROUP オリジナル映画製作プロジェクト」第2弾作品の発表会見が行われた。
2025年に始動した同プロジェクトは、カンヌ国際映画祭をはじめとする国際映画祭への出品・受賞を見据え、IMAGICA GROUP内から映画企画を募り、毎年1作品を選んで制作する取り組みだ。第2弾には、関友太郎監督、ハン・サングンプロデューサーによる『OUR SON』が選出された。
会見には、IMAGICA GROUP CEOの長瀬俊二郎氏、審査員を務めた石川慶監督、市山尚三氏、坂野ゆか氏、そして第2弾作品に選ばれた関監督とハンプロデューサーが登壇。会見後には映画メディアScreenによるガーデンパーティも開かれ、プロジェクトの背景や『OUR SON』の企画意図について、より踏み込んだトークが交わされた。
長瀬氏「継続してほしいという声をたくさんもらった」

冒頭、IMAGICA GROUP CEOの長瀬俊二郎氏は、昨年の第1弾発表以降、多くの反響があったことを明かした。業界関係者からは「素晴らしい試みだから継続してほしい」といった声が届き、応募を検討するプロデューサーや監督からも「1本と言わず、2本、3本とやってほしい」という期待が寄せられているという。
長瀬氏は「これからも良い作品を作っていけるよう、引き続き努めていきたい」と語った。
同プロジェクトは、IMAGICA GROUPのグループ会社に所属するプロデューサーが応募主体となる。外部の監督やクリエイターも、グループ内のプロデューサーと組めば参加できる仕組みだ。対象は、日本未公開で、既存の著作物を原作・題材としないオリジナル企画に限られる。
昨年カンヌで発表された第1弾企画『マリア』は、今年夏の撮影に向けて準備が進んでいるという。
市山尚三氏「国際映画祭に展開しそうな企画が増えた」

昨年に続き審査員を務めた、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏は、第1回と第2回の応募企画の違いについて「今年は全体の企画のレベルが大幅にアップした」と話した。
初年度も優れた企画は多かった。ただ、「国際映画祭を目指す企画」という観点で見ると、通常の日本映画として商業的に成立させる方が向いている企画も少なくなかったという。対して今年は、「国際映画祭にかなり展開しそうな企画がすごく増えた」と振り返る。
最終的には関監督の企画が選ばれたが、選外にも映画化を期待したくなる企画が複数あったという。市山氏は「日本のインディペンデントの映画監督たちの企画には、面白いものがいろいろ眠っていることがわかった」と述べた。
坂野ゆか氏「不穏でスリリングな世界が、さらに一歩進んだ」

川喜多記念映画文化財団の坂野ゆか氏も、昨年に続いて審査に参加した。坂野氏は、二次審査に上がってきたリストの中に関友太郎の名前を見つけた時点で、強く関心を引かれたという。
関監督は、かつてカンヌ国際映画祭で短編『八芳園』が選出された監督集団「5月」の一員として活動してきた。坂野氏は当時からその活動を見ており、5人で監督するというユニークなスタイルや、独特の作品性が印象に残っていたと語る。今回の『OUR SON』では、関が単独で監督を務める。
脚本とプロジェクト内容について、坂野氏は「『5月』から脈々と続く、不穏な中に非常にスリリングな世界」がありつつ、そこからさらに一歩進んでいると評価した。現代社会の危うさや暗部が、関監督ならではの感覚で高い完成度へ結びついているとし、「国際映画祭への出品および受賞という本プロジェクトの趣旨に対して、高いポテンシャルを持っている」と述べた。
石川慶監督が語る、オリジナル企画を支える意義

今回初めて審査員として参加した石川慶監督は、昨年の第1弾発表も同じカンヌの場で見ていたという。プロジェクト自体に強い関心を持っていたといい、「隙あらば自分が応募できないかなと思って見ていた」と話して笑いを誘った。
石川監督もまた、『八芳園』の頃から「5月」の作品を見てきた一人だ。関監督の作品は形式的な新しさが語られることが多いが、石川自身は「役者がすごくいい」という印象を持っていたという。今回の『OUR SON』については、これまでの作品にあったフォームの新しさに加え、ストーリーとキャラクターの魅力が強く加わっている点を評価した。
「これが加わった時にどういう映画になるのか、個人的にすごく見たいと思いました。いいものになったら、本当にすぐ映画祭に飛んでいくんだろうなという印象を受けた企画でした」
ガーデンパーティでも石川監督は、関監督を「新人というより、すでにいくつもの興味深い映画を撮ってきたベテラン」と表現。今回の企画では、新しい物語に挑もうとしていることが見て取れたと説明し、「審査員一同、これはすごく面白い映画になるのではないかと、全会一致で選んだ」と明かした。
IP原作の映画やシリーズが増える中、オリジナルストーリーを支える意義にも話は及んだ。石川監督は、自身も原作ものを数多く手がけてきた一方で、長くオリジナル映画を作りたいと思ってきたと語る。日本ではこれまで、原作本や既存IPの売れ行きが、資金調達の大きな判断材料になる状況が続いてきた。
石川監督は、こうしたプロジェクトが生まれたことを歓迎し、映画作家にとってオリジナル企画を実現できる機会があることは「本当に血の通う、大事なこと」だと強調した。
精子提供をめぐる実際の事件から生まれた『OUR SON』

『OUR SON』の発想の出発点になったのは、関友太郎監督が目にした、あるニュース記事だった。
ある夫婦の女性がSNSで精子提供者を募り、現れた男性から精子提供を受けて子どもを産む。しかし出産後、その子どもに愛情を注ぐことができず、やがて別の過ちを犯していく。『OUR SON』は、実際に日本で起きた事件に着想を得た物語だという。
関監督がその記事を読んだのは、3年、あるいは4年ほど前。事件そのものへの単純な疑問というより、その背景にあるものを想像した時に生まれる「怖さ」や「緊張感」に強く惹かれたと話す。
明確な目的を持って企画を立ち上げたというより、最初は書き始めるところからだった。その後、IMAGICA GROUPのプロジェクトの話を受け、物語をさらに深掘りして応募に至ったという。
ハン・サングン氏「来年制作し、再来年またここに来られたら」

プロデューサーを務めるハン・サングン氏は、制作会社PICSの所属。関監督とは数年前、共通の知人を通じてドラマ企画で一度会っていたが、その時はタイミングが合わず、制作には至らなかったという。
その後、昨年からドラマを一緒に作る中で、関監督が普段から見つめている社会の事象や事件、そこに向ける視点に強く惹かれるようになった。
ハン氏は「関が普段考えている世の中の事象だったり事件、それに対する考えやポイントがすごく面白くて、ぜひそういうストーリーのものを一緒に映画にできたらと思いました」と語った。
会見の最後に、ハン氏は「映画を作る楽しさは、みんなが一緒にものを作ること」と話した。IMAGICA GROUPがきっかけを作り、関監督とハン氏が企画を立ち上げ、そこに関心を寄せる人々の力が重なっていく。その協働の中で『OUR SON』を形にしていきたいという。
今後については、「来年制作して、再来年また形にしてここに来られたら」と展望を語った。

IMAGICA GROUPが5年間の継続を掲げるオリジナル映画製作プロジェクトは、グループ内のプロデュース力と外部クリエイターの才能を結びつけ、国際映画祭へ向けた新たな日本映画の可能性を探る取り組みだ。第1弾を含め、今後の展開が注目される。
なお、第3弾の募集も6月30日から開始している。











