2026年5月13日、カンヌ国際映画祭マーケット部門「マルシェ・ドゥ・フィルム」内のビジネスカンファレンス「Cannes Next」のオープニングセッションとして、「Industry & Innovation 2026: Financing, IP and the State of Play」が開かれた。
プロデューサー、セールス、ファイナンサー、テクノロジーと映画の交差点に立つ実務家たちが、独立系映画の資金調達構造の変化、IPの価値、Z世代以降の観客との向き合い方など、産業の根幹を揺さぶる問題を議論した。本稿では米国市場の構造的危機、ジャンル映画の戦略的有効性、AI時代における「人間の思考」の価値という三軸から、約1時間のセッションを振り返る。
米国インディペンデント映画が直面する構造的危機
モデレーターのジャーナリストMarta Bałaga(Variety寄稿者)は冒頭、「この1年で何に驚き、何に怯えたか」と問いを投げた。
口火を切ったのは、Letterboxd(会員約3500万人の映画SNS)の元事業責任者で、現Harpoon MediaパートナーのDavid Larkin。「Letterboxd会員の大半は米国外で35歳未満が圧倒的多数。映画を愛する新世代がグローバルに台頭している。彼らに届く優れた映画を作り、届ける方法を見つけるのが我々の仕事だ」と希望を語った。

対照的に厳しい現状を示したのが、Vanishing AngleのBenjamin Wiessnerだ。「アメリカでは地政学的にもビジネス的にもすべてが壊れた。SXSWやサンダンスで、米国インディペンデント映画がやってきたことがことごとく機能しなくなっている」。
これを裏付けたのが、20年超のキャリアを持つRawk Moving Pictures CorpのTodd Brownだ。米国映画が真っ先に危機に陥った理由は「バッファー(緩衝装置)」の欠如にあるという。欧州やカナダには公的助成、国家支援基金、公共放送局による買い付けの三重の安全網があるが、米国にはない。「HBOとShowtimeがOTTに吸収されて以降、米国には映画の権利を買う放送局が文字通り一つも存在しない」と嘆く。
Wiessnerは配信依存となった業界の弊害を指摘する。「OTTが業界全体を支えると当てにしていたので、彼らが関心を失った瞬間、業界そのものを失った」。HuluのDisney統合で、年間ペイワン契約を取れる作品数はさらに40~50本減ると見込まれると悲観的な予測を口にした。









