渡航費・出展費等を東京都が支援。アニメクリエイターが世界最大の見本市MIFAを目指せる「ステップアッププログラム」のセミナーが開催【参加者募集中】

東京都が都内のアニメーション関連企業や個人を対象に実施する「アニメーション海外進出ステップアッププログラム」。その幕開けとなる第一回セミナー「アニメ映画祭・海外マーケットについて学ぼう」が開催された。

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東京都が都内のアニメーション関連企業や個人を対象に実施する「アニメーション海外進出ステップアッププログラム」。その幕開けとなる第一回セミナー「アニメ映画祭・海外マーケットについて学ぼう」が開催された。

本プログラムは、海外展開を目指すクリエイターや事業者が、国際的なビジネスシーンで必須となる知識やピッチ(企画プレゼンテーション)技法を体系的に学び、世界最大のアニメーション見本市「MIFA(Marché international du film d'animation)」への出展という大きなチャンスを掴むことを目的としている。当日は、業界の専門家による市場解説から、実際にプログラムを経て世界に挑戦した参加者の生々しい体験談まで、示唆に富んだ情報が共有された。

世界最大の見本市「MIFA」へ。東京都が提供する強力なバックアップ体制

セミナー冒頭、事務局と東京都の担当者からプログラムの全体像が丁寧に説明された。本プログラムは、全4回のセミナーと全2回のワークショップで構成される。これらのうち、いずれか1回以上に参加することで、海外展開への登竜門となる「東京アニメピッチグランプリ」(2026年2月13日開催予定)への応募資格が得られる仕組みだ。

このピッチグランプリの魅力は、その先に広がる具体的なチャンスにある。最優秀賞受賞者には賞金100万円、優秀賞受賞者には50万円が授与されるだけでなく、2026年にフランス・アヌシーで開催されるMIFAへの出展支援対象者として選出される。

通常、個人や中小企業が単独で出展するには経済的な負担が大きいMIFAだが、本プログラムでは入場パスや渡航費・宿泊費(1名分)、ブース出展費などを東京都が負担する。

支援は金銭的なものに留まらない。出展前の準備段階では、海外のバイヤーに向けた商談やピッチのスキルを磨くための専門家による個別レッスンを実施。MIFA会期中には、事前に事務局がアポイントを設定した複数の海外企業とのビジネスマッチングや、商談時の通訳も手配される。さらに、出展後には商談を具体化させるためのフォローアップセミナーやコミュニケーションのサポートまで用意されており、海外ビジネスの経験が少ない事業者でも挑戦できる体制が整えられている。

数土直志が語る、グローバル化するアニメビジネスの今

セミナー前半では、アニメーションジャーナリストの数土直志氏が登壇。「アヌシー国際アニメーション映画祭、MIFAとは 2025年の世界のアニメーションの潮流」と題し、急変するマーケットの現状を多角的に解説した。

数土氏はまず、アヌシー国際アニメーション映画祭が、ここ十数年でインディーズ作品からハリウッドの大作までを網羅し、世界で「一強」状態のアニメーション映画祭へと成長したと語る。その併設見本市であるMIFAもまた、世界中からアニメーション関係者が集う巨大なビジネスのハブとなっている。近年は企業単体での出展だけでなく国や行政単位でのパビリオン出展が活発であり、商談やピッチセッションが至る所で繰り広げられているという。

日本のアニメ市場については、海外を中心に拡大を続けており、今や海外売上が市場の約半分を占めるに至っていると指摘。この成長は、グローバル配信プラットフォームによって牽引されてきたが、ここ数年は『鬼滅の刃』のような劇場作品の世界的ヒットや、関連グッズ、原作漫画の売上増などが市場拡大をさらに加速させていると分析した。

一方で、これは「海外市場を抜きにして、もはや日本のアニメビジネスの成長は語れない」状況であることの裏返しでもあるという。数土氏は、現在の日本アニメのグローバル化を単一の現象としてではなく、「マーケット」「制作現場」「ファイナンス」という3つの異なるレイヤーで捉えるべきだと提言した。

  1. マーケットのグローバル化: アニメファン人口は、日本国内よりも海外の方が多いという現実。

  2. 制作現場のグローバル化: 海外の優秀なクリエイターが、監督や作画監督といった主要なポジションを担うケースの増加。

  3. ファイナンスのグローバル化: 海外資本が製作委員会に参画したり、買い付けを前提として出資することで、企画の資金調達そのものがグローバル化している。

この3つのグローバル化が同時に、かつ急速に進んでいる今、日本のアニメ産業はこれまでとは全く異なる様相の時代に突入している、と数土氏は締めくくった。

MIFA参加経験者が語るリアルな手応えと課題

セミナーの後半は、数土氏をモデレーターに、本プログラムの支援を受けて2023年、2024年と2年連続でMIFAに出展した株式会社StudioGOONEYSの代表取締役・斎藤瑞季氏と、同社の藤巻香洋氏を交えた対談セッションが行われた。

3DCG制作を専門とする同社が、あえて困難の多い海外市場を目指した理由について、斎藤氏は「CG業界では仕事の数自体は多いものの、その多くがゲームのモーション制作などに偏りがちで、私たちが本来目指している“ストーリーのある映像づくり”とのズレを感じていました。自分たちのクリエイティブをより自由に追求していくためには、日本国内にとどまらず、海外へと視野を広げる必要があると感じたのです」と語る。

MIFAへの道のりは平坦ではなかった。企画書やピッチバイブルの作成には約3ヶ月を費やし、通常業務を終えた深夜に作業を重ねたという。藤巻氏は「元々英語が得意ではなかったので、5分間のピッチ原稿を完璧に暗唱できるまで、ひたすら練習を繰り返した」と当時の努力を振り返る。現地では、より多くの人の目に留まるよう、自社作品のキャラクターの衣装を身に着けてブースに立つなどの工夫も凝らした。

彼らが持ち込んだオリジナル劇場作品『Muguet』に対して、現地のプロデューサーからは次々と具体的かつシビアなフィードバックが寄せられた。「素晴らしい企画だが、実現には最低でも17億円は必要だ」という資金面での指摘に加え、「企画は非常に魅力的だが、制作は我々の国で行うべきだ」といった声もあった。

Co-Productionとして共同出資を行う場合、出資分の制作パートは海外側のスタジオで実施せざるを得ないという現実があるのだ。資金を得ることと、自社の手で作品をつくりたいという想いの狭間で、多くの海外挑戦者が直面するジレンマを実感した瞬間だった。

一方で、斎藤氏は「継続して参加することの重要性」を強調する。交渉はそれなりにタフで「来年もまた来るんだろう?」と当たり前のように言われたという。映画のような長いスパンの企画は、一度きりの参加で決まるものではない。粘り強く関係を構築していくことが何よりも大切」だと語った。

セッションの最後には、海外展開を目指す参加者からの「共同製作を成功させる秘訣は?」という質問に対し、斎藤氏は「ティザー映像など、実際に動くものを物理的に見せられると、やはり商談は格段に進みやすくなる」と、自身の経験談を語ってくれた。

また、東京アニメピッチグランプリを勝ち抜く秘訣について質問され、斎藤氏は、企画の完成度が一番重要ではないかと回答。ちょっとしたアイデアも考え込んで作り、キャラクターの背景やストーリーも様々な角度から検討し、デザインも用意していたという。

本プログラムのセミナーは今後も継続して開催され、11月末からはより実践的なワークショップも予定されている。今後のセミナーの予定は公式サイトにて確認可能だ。

【アニメーション海外進出ステップアッププログラム開催概要】

参加条件:
都内に登記がある中小企業者
都内税務署へ開業届出をしている個人事業主
将来、都内にて創業を検討されている、都内在住/在勤/在学(学校の本部が都内にある場合を含む)の方

参加費用:無料

参加申込み:各回2営業日前16:00まで

【東京アニメピッチグランプリ開催概要】

開催日時:令和8年2月13日(金)

会場:東京都23区内の会場にて開催

参加条件 ①セミナー4回、ワークショップ2回の計6回のうち、1回以上参加した方

②募集要項記載の応募資格を満たしている方

応募書類受付期間 令和7年12月17日(水)~令和7年12月26日(金)

詳細・申し込みは公式サイトにて

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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