アニメの海外展開に必要なこととは?東京都がコンテンツ事業のグローバル展開支援を開始、シンポが開催

「グローバルライセンスビジネス」のアニメ編をテーマにIntoGlobalの第一回シンポジウムが開催された。アニメの海外展開における実務で起こりがちな7つのポイントを解説していく。

映像コンテンツ マーケティング
アニメの海外展開に必要なこととは?東京都がコンテンツ事業のグローバル展開支援を開始、シンポが開催
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東京都が、グローバル市場に挑むコンテンツ事業者を支援するプログラム「IntoGlobal~東京都コンテンツ産業海外展開支援プログラム~」における第一回シンポジウム「グローバルライセンスビジネス シンポジウム/アニメ編」を7月30日に開催した。

本プログラムは2024年6月から始まった。東京都内に登記簿上の事業所をかまえるコンテンツ産業の企業・個人事業主向けの無料相談窓口を開設しており、ジャンルごとに専門家が課題に合わせた内容の相談に乗ってくれる。コンテンツに関する資金調達や士業関係の相談も受け付けているという。また、海外展開経験者を招き、最新情報や留意点を共有するシンポジウムも随時開催していく。

第一回のシンポジウムは、「グローバルライセンスビジネス」のアニメ編がテーマ。登壇者は(株)FIELD MANAGEMENT EXPAND ドワーフ事業部の岡田由里子氏と、日テレアックスオン 企画戦略センター 新規事業・海外事業開発部の渡邊衣里氏、ファシリテーターは同プログラムコンシェルジュの今泉裕美子氏が務めた。

「海外市場」とひとくくりにしてはいけない

シンポジウムは7つのトークテーマに沿って展開された。

最初のテーマは「海外市場に対しての感受性」。渡邊氏は海外のアニメーション市場はキッズ向けが中心と以前はよく聞いたが、今年のアヌシー国際アニメーション映画祭の見本市MIFAに参加して、より上の年齢層であるヤング・アダルト向けの企画を求めている声も多く聞いたという。海外市場は変化のスピードが速いので、最新のトレンドに触れることが大切だという。情報の入手はMIFAなどの見本市に参加するのがいいが、渡航費用もかかるので、それ以外の情報の集め方も重要だそうだ。

岡田氏は「海外をひとくくりにしないこと」が大切だと語る。渡邊氏も、欧米とアジアで傾向が異なり、さらには欧州でもイタリアとフランスでは好みが分かれると実体験で感じたという。

また著作権などの考えも各国で異なり、制作という観点では国ごとに助成金があるので、それぞれ対象や応募制度が違ってくるとのこと。

テーマ2は「オリジナル企画を海外に持っていく」。岡田氏は、コマ撮りアニメーションを強みとするドワーフで複数の海外との取引を行ってきている。企画を海外に持っていく際には、まず、どのようなパートナーを求めているのかなどの目的を明確にしていくことが重要だという。

作品を持っていく際の企画書はバイブルともよばれ、それをプレゼンすることをピッチと呼んだりする。そういった用語に慣れていくことも大切だという。ピッチにパイロット映像は必要かとの問いに対しては、企画書だけでどんな作品か伝わればいいが、映像の方が説得力があるので(パイロット映像を)作ることは多いという。また、パイロット映像を英語化することについては、作品内容によりけりだが、ネイティブに刺さるものを作るのは簡単ではないので、岡田氏はセリフがさほど重要でない作品については字幕にとどめるなどにしていると話した。

渡邊氏は、完成作品を持っていく場合は、あらすじや話数を紹介するセールスシートを用意するという。アニメに関しては、近年日本と同時に海外でも放送・配信することが求められるため、映像制作前の企画段階で、人気原作や有名スタジオなど海外でウケる要素をもとに、プリセールが決まることが多くなっているという。

また、東京都では、「アニメーション海外進出ステップアッププログラム」など、海外見本市などでのピッチトレーニングのプログラムも実施している。

テーマ3は「企画のリクープや交渉ごと」。海外で交渉するためには、どう制作費を回収し利益を出すのかという視点は重要だ。そして、販売以降のプロセスも視野に入れておくことが大切だという。日本では製作委員会方式で委員会のメンバーでリスクを分散させることが多いが、海外との共同製作では複数の座組があることも念頭に入れておかねばいけないという。例えば欧州では助成金を前提に製作を検討するのが多いが、助成金を使用する場合はその国で制作する比重が高くなるので、自分たちの目的が何かをよく考えて交渉のテーブルにつかねばならない。

そして、海外との契約締結には契約書が何種類にも渡ることになる。商習慣も海外では日本と異なる場合があり、ファーストドラフトでは一番強気のものを出してきて、そこから交渉を経て落としどころを探るのだという。また、日本では担当者が最後の契約書締結まで管理することが多いが、欧米では縦割りの組織が多い。契約作業で法務担当に引き継がれた際に、それまでの経緯を最初から話さないといけないこともよく発生し、そのため、交渉の内容は議事録やメールなどで必ず書面に残しておくことが大切とのことだ。

海外と行う事業の形態によっては、「チェーンオブタイトル」(「現権利者から現在の権利者までの連続する権利移転」公益財団法人ユニジャパン『プロデューサ用語集』作成:楠純子より)を求められることもあるという。必要な権利が正しくクリアされているかを確認するものだが、渡邊氏の知る範囲では、リメイク販売の際などに求められる傾向があるとのことだ。相手先によって求められる書類等は様々なパターンがあるため一概には言えないが、まずは制作時に各関係者と契約をきちんと交わし、保管しておくことが基本になるのではとのことだ。

海外との交渉における書面での記録の大切さ


《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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