動画で動かす、次の一手──マーケター100人の本音に見る“未来を切り拓くSNS戦略”とは

SNS戦略が転換期を迎え、マーケター100人の調査で「動画」が重要視されている。YouTubeやTikTokの活用が目立ち、短尺動画やライブ配信、コミュニティ形成が鍵となる。動画は共感を生む強力な手段で、今後の施策において再投資が求められている。

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アンケート調査:現役マーケター100人が本気で選ぶ『次の一手』とは? Wellmaレポート
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マーケティングの現場は今、大きな転換点を迎えている。SNSのアルゴリズム刷新や新興プラットフォームの台頭、生成AIの進化といった環境変化が同時多発的に起きており、従来の手法が通用しない場面も増えてきた。こうした状況のなか、マーケティングプラットフォーム「ウェルマ」は、現役マーケター100人に対してアンケートを実施。今後注目すべきSNSやチャネル、そして「次の一手」として何に投資すべきかについて本音を調査した。

本レポートでは、とくに「動画」に焦点を当てて、現在の潮流とマーケターたちの戦略的意図を読み解く。


「動画SNS」が支持される理由──YouTubeとTikTokの存在感

調査結果で最も注目を集めたSNSは、YouTube(37%)であった。続いてX(旧Twitter/35%)、Instagram(29%)、TikTok(21%)、Threads(17%)が続く。ここで注目すべきは、上位3つのうち2つが「動画コンテンツに強みを持つ」プラットフォームである点だ。

YouTubeはショートとロングの両形式に対応しており、視覚と聴覚を同時に刺激する訴求力が高い。また、検索プラットフォームとしての機能も備えており、SEO効果も期待される。とくに「YouTubeショート」は、TikTokユーザーのニーズを取り込みながら、新規流入と深いコンテンツ理解を同時に叶える施策として注目度が高い。

一方、TikTokやInstagramリールは「短尺動画」に特化しており、拡散性と瞬発力に優れている。流行やユーザー参加型の仕掛け(例:ハッシュタグチャレンジ)との親和性も高く、若年層への訴求に適している。

多くのマーケターが「短尺動画×高拡散力」という組み合わせに期待を寄せていることが、今回のアンケートからも明らかとなった。

SNSチャネルへの“注力実態”──YouTubeとLINEが示す戦略的活用

注力しているマーケティングチャネルとしても、YouTubeは38%の支持を得て1位に。次いでX(32%)、Instagram(26%)、LINE(21%)が並ぶ。

ここで興味深いのは、YouTubeへの注力が「ただの動画投稿」にとどまらない点である。多くの企業が「YouTubeショートとロング動画を併用」し、SNS拡散とSEO検索を両輪で回す設計を志向している。また、ライブ配信やQ&A形式での顧客参加型コンテンツを通じて、ファン化・コミュニティ形成につなげる動きも見られる。

さらにLINE公式アカウントでは、クローズドな空間での顧客コミュニケーションが活発化。LINEオープンチャットとの連携でコミュニティ運営に活路を見出す企業も増加中である。

YouTubeやLINEといった「継続的な関係構築」を前提としたチャネル活用は、動画という手段を起点に中長期的なマーケティング設計に進化しつつある。

「予算倍増なら何をするか」──動画・インフルエンサー・コンテンツが三本柱に

「もしマーケティング予算が倍になったら、最初に何に投資するか」という質問では、次のような回答が上位を占めた。

  1. インフルエンサー施策を強化(33%)

  2. SNS広告の予算を増やす(32%)

  3. コンテンツ(記事・動画)を大量投入する(28%)

  4. SEO対策を徹底強化する(21%)

  5. 動画広告を強化する(13%)


ここでも、動画はあらゆる側面から重要な投資対象として浮上している。特に「動画広告」や「動画コンテンツの大量投入」が上位に入った点は注目すべきだ。短尺動画の活用やライブ配信、商品紹介動画などは、視聴者のエンゲージメントを高め、購買導線へとスムーズにつなげる“即効性”のある施策である。

また、インフルエンサー施策と動画の相性は抜群である。インフルエンサーによるレビュー動画やコラボコンテンツは、SNS拡散だけでなくYouTubeやInstagramでの“信頼ベース”の導線形成にも効果的である。

これからの“勝ち筋”──1~2年を見据えた動画施策の本格展開

今後1~2年を見据えて、マーケターたちが「今から準備しておくべき施策」は何か? ウェルマの分析では、以下の4つの戦略が浮かび上がっている。

1. 動画 & ライブ配信の本格強化

TikTok、Instagramリール、YouTubeショートを中心に、短尺動画の連携運用がますます重要となる。撮影・編集を効率化し、素材をマルチユース化することで更新頻度を維持することが鍵となる。

さらに、ライブ配信では「ライブQ&A」「ライブコマース」など、視聴者とリアルタイムでつながる企画が有効。商品説明をライブで行い、その場で質問に回答しながら購入に誘導する手法は、ECと動画を組み合わせた次世代型販促の典型例である。

2. コミュニティマーケティング×動画

SNS施策は短期成果を生み出す一方で、長期的なファン形成にはコミュニティ運営が欠かせない。LINE公式アカウントやオープンチャット、FacebookグループやDiscordを活用し、動画コンテンツを通じて「参加したくなる空間」を設計することが求められる。

限定動画、裏側コンテンツ、プレミア配信など、「その場にしかない」動画体験が、コミュニティの活性化に直結する。

3. SEOとオウンドメディアにおける動画活用

E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)重視の時代において、動画は「体験や実例を可視化する」手段として非常に有効だ。記事だけでは伝わりにくいニュアンスや使用感を、動画で直感的に伝えることができる。

また、検索流入を目的としたコンテンツ内への動画埋め込みや、YouTubeへの最適化(タイトル・概要欄・タグの活用)によるSEO効果も見逃せない。

4. チームとスキルセットの拡充

動画施策は「企画→撮影→編集→配信→分析」というサイクルを高速で回す体制がなければ継続できない。よって、自社内でクリエイティブを内製化できる体制の整備や、分析人材の育成がカギを握る。

同時に、インフルエンサーエージェンシーや制作会社との連携によって“部分外注・ノウハウ蓄積型”の外部活用を推進することも現実的な選択肢である。

まとめ:動画は「共感」を生む最強の接点である

SNS戦略の中核として、動画の役割は今後ますます拡大していく。短尺動画による認知獲得から、ロング動画による深掘り、ライブ配信によるエンゲージメントまで、すべてのタッチポイントにおいて動画は「強い接点」を作り出す。

そして、それは単なる映像ではない。ユーザーとブランドが“共感”し、“信頼”し、“行動”を起こす──そのすべての瞬間に、動画が関与するのだ。

変化のスピードが加速する今だからこそ、マーケターは「動画をどう活用するか」から「動画をどう活きた体験に変えるか」へと、発想をアップデートしていく必要がある。

ウェルマが提示した現場マーケター100人のリアルな声は、未来のSNS施策の指針となり得る。目の前の流行に惑わされず、確かな基盤と共感を生む戦略を築く──その起点として、いま「動画」への再投資が求められている。

《杉本穂高》

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杉本穂高

映画ライター 杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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