カナダのメディア・プロデューサー協会(CMPA)の年次経済報告によると、同国におけるハリウッド作品の撮影・サービス制作費の1年間(2024年3月31日まで)の総支出が47億3,000万ドル(約7,400億円)に急落し、前年同期の66億5,000万(約1兆400億円)ドルから26%も減少した。その結果、地元のサウンドステージは閉鎖されて制作スタッフは休業状態になり、ハリウッドのカナダでの制作プロジェクトの大幅な減速につながったという。
2023年はダブルストライキを受け、特にNetflixやAmazonプライム・ビデオ、ディズニープラスなどの主要ストリーミングサービスがカナダの撮影セットを閉鎖したため、その打撃は甚大だった。2023~24年にかけてカナダで撮影された外国、主に米国のテレビ番組の数は、前年の345本から125本減少の220本に。
直近カナダで撮影された米国のドラマシリーズは、「THE LAST OF US」や「FARGO/ファーゴ」シーズン5、「ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~」シーズン3などがある。
一方、カナダにおけるハリウッド作品以外の外国語長編映画の制作は、それほど打撃は受けなかったという。撮影本数は190本から14.7%減の162本だったが、制作費は16億ドル(約2,500億円)から4.9%減の15億2000万ドル(約2,382億円)に留まった。
ダブルストライキがもたらす長期的な影響
ダブルストライキ終了後、大手スタジオやストリーミング企業はカナダでの撮影を再開したが、まだ支出はストライキ前のレベルに戻っていないという。2023年、カナダの総制作費は9%減の95億8,000万ドル(約1,485億円)で、テレビ番組の制作は13%減の32億5,000万ドル(約4,925億円)だったが、長編映画制作は比較的安定していた。
CMPAの報告書は、ダブルストライキがもたらす長期的な影響について厳しい警告を発している。特にテレビの衰退が続いている現状を踏まえると、その余波はカナダで何年も続く可能性があるとのこと。不確実性が続くことで制作活動に影響が及び、業界の規模や勢いが長期的な縮小傾向に直面する可能性があるとされている。カナダの映画・テレビ業界で問題視されているのは、外国作品の制作に依存しすぎている点だ。しかし、適切な戦略とサポートがあれば、地元の業界は成長する可能性を秘めていると見られている。