『チ。―地球の運動について―』で新局面を迎えたスカパー、新たな事業展開で停滞感を脱することができるか?【決算から映像業界を読み解く】#75

スカパーJSATホールディングスが上半期を堅調な数字で折り返したものの、成長鈍化を改めて浮き彫りにする結果となった。

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【決算から映像業界を読み解く】#75
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スカパーJSATホールディングスが上半期を堅調な数字で折り返したものの、成長鈍化を改めて浮き彫りにする結果となった。

2025年3月期第2四半期(2024年4月1日~2024年9月30日)の営業収益は前年同期間比0.9%増の610億円、営業利益は同3.5%増の138億円だった。通期計画に対する進捗は5割に達しており、順調に折り返している。しかし、今期はわずかな増収、営業減益を見込んでおり、成長性が失われている。宇宙事業の伸びが今一つだったことに加え、メディア事業が足を引っ張った。スカパーはメディア事業での巻き返しに邁進している。

宇宙事業は前期の好調を受けての反動か

スカパーの2025年3月期通期の営業収益は前期比1.2%増の1,233億円、営業利益は同2.8%減の258億円を予想している。3期連続の増収となる見込みだが、1%程度の微増に留まっている。前期、前々期の営業利益は2桁増だったものの、今期は営業減益の予想だ。

決算短信より筆者作成

スカパーの業績を支えているのは、宇宙事業とメディア事業の2つだ。

宇宙事業は同社が保有する16機の静止衛星を活用し、航空機・船舶・離島エリアなどに通信サービスを提供。自然災害時の形態基地局のバックホール回線としても使われている。今期は東日本高速道路株式会社などとの間で、10年間の次期衛星通信サービス契約を締結した。契約内容は明らかにしていないものの、スカパーは衛星回線を活用した無人運航船プロジェクト MEGURI 2040に参加しており、将来的に無人運航船を実現させる実証実験を行っている。国土交通省は2024年11月から自動運転トラックの技術検証を開始すると発表した。スカパーの衛星通信技術を自動運転技術を軸とした交通インフラの整備に適用する可能性は高い。

2025年3月期上半期の宇宙事業の営業収益は前年同期間比1.1%増の313億円、営業利益は同4.8%減の105億円だった。

前期は上半期において、高周波数帯による広帯域の通信などが行えるハイスループット衛星「JCSAT-1C」や「Horizons 3e」の利用が拡大。宇宙事業は1割の増収だった。今期はその反動とも見ることができる。
2023年12月からはStarlink Japan合同会社から再販事業者としての認定を受け、低軌道衛星によるブロードバンドサービス「Starlink Business」の提供も開始している。ビジネスマンの活動を支える通信手段の一つとして事業を拡大中だ。BtoB、BtoCサービスともにどこまで利用範囲を広げられるかが成長のポイントとなる。業績を急拡大することは難しい事業だが、底堅く推移するだろう。

4%を超えるペースで加入件数が減少

苦戦しているのがメディア事業だ。2025年3月期上半期の営業収益は前年同期間比3.7%減の329億円、営業利益は同37.4%増の36億円だった。増益となっているのは、4K放送を終了したことによる通信費の削減、コンテンツ費の減少、設備の最適化など運用効率の向上を通じた減価償却費の削減などを行ったため。要するに経費削減が効いたということだ。視聴料収入の減少が止まらず、経費削減に動かざるを得なくなっている。

補足資料より筆者作成


《不破聡》

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