円谷プロダクションを傘下に持つ円谷フィールズホールディングスの業績が好調だ。
2022年3月期(2021年4月1日~2022年3月31日)はコロナ禍から急回復して売上高が前期の2.4倍に急増。そこから2期連続の2桁増収を達成した。2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)は1割近い増収を見込んでいる。
基幹事業のパチンコ、パチスロ台の販売が好調の背景にあるが、Netflix映画『Ultraman: Rising』を成功させるなど、グローバル戦略の要であるコンテンツ&デジタル事業の成長にも期待できる。
職人気質でハイクオリティな作品を作り続けた円谷プロも経営は迷走を続ける
円谷フィールズの前身は1988年設立の東洋商事。全国のパチンコ店に遊技機などを販売する事業を手掛けて成長した。1990年代に入るとCR機を中心とした液晶型の遊技機が主流となり、2000年代には「ウルトラマン」や「北斗の拳」、「新世紀エヴァンゲリオン」などのIPが活用されるようになった。遊技機はテレビや映画、ゲームのような娯楽性を獲得したのである。東洋商事は2001年10月にフィールズへと商号を変更。2003年に上場を果たすと、調達した資金でIPの商品化権を集中的に確保した。
ウルトラマンシリーズを手がけていた円谷プロダクションは、2001年に特撮シリーズを本格的に再開するものの制作費が増加。ヒット作に恵まれなかった上、東宝との資本関係を解消したことで銀行の後ろ盾を失って資金繰りが悪化していた。
その後も経営の混乱が続いたが、窮地を救ったのはコンテンツ制作会社のTYOだった。円谷プロダクションは運転資金や借入の返済に必要な資金の融資を受けた。しかし、その資金を返済できず、担保になっていた円谷エンタープライズの過半数の株式をTYOが取得。その後第三者割当増資を実施して保有比率は80%まで高まった。
円谷エンタープライズは円谷プロダクションの株式を保有しており、TYOは間接的に68.0%の株式を取得。実質的に経営権を獲得し、この時点で円谷ファミリーによる同族経営が終焉を迎えた。
2008年にTYOが円谷プロダクションの株式33.4%をバンダイに売却。続いて同社株の51.0%をフィールズに譲渡。2010年に円谷プロダクションはフィールズの連結子会社となった。
円谷フィールズホールディングスの2024年3月期の売上高は、前期比21.2%増の1,419億2,300万円、営業利益は同8.0%増の118億2,700万円だった。
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※決算短信より筆者作成
2025年3月期は売上高を前期比9.2%増の1,550億円、営業利益を同28.5%増の152億円と予想している。営業利益率は8.3%から9.8%まで1.5ポイント上昇する見込みだ。
2025年5月期第1四半期(2024年4月1日~2024年6月30日)の売上高は前年同期間比13.7%減の261億7,600万円、営業利益は同24.4%増の25億1,900万円。売上高、営業利益ともに計画に対する進捗率は17%ほど。やや後れを取っているように見えるが、会社側は通期予想を変更していない。
第1四半期はパチスロ『スマスロ ストライク・ザ・ブラッド』、『L ウルトラマンティガ』、『スマスロ ストリートファイターV 挑戦者の道』などを販売している。第2四半期はパチンコ『P 宇宙戦艦ヤマト2202 超波動』、パチスロ『L 真・一騎当千』の販売が控えている。円谷フィールズの業績は遊技台のヒットに左右されることが多いが、第2四半期以降のラインナップには自信があるのだろう。
米国人に好まれる親子と家族がテーマのウルトラマン
円谷フィールズは、2014年に相次いだパチンコ・パチスロの規制強化で経営は大打撃を受けた。しかし、2018年2月施行の「適法施行規則改正」で落ち着きを取り戻し、各メーカーが遊技機開発に注力できる環境が整った。これによって円谷フィールズも成長軌道に乗った。コロナ禍で2021年3月期は赤字に転落するものの、そこから力強く回復している。