映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)が、1年半以上の交渉を経て、大手ビデオゲーム・パブリッシャーに対してストライキを実施すると発表した。主な争点は、AI(人工知能)の使用に対する、ビデオゲーム俳優やモーションキャプチャ演者たちの保護となっている。
Screen Dailyによると、SAG-AFTRAとビデオゲーム・パブリッシャー間の新契約に関する交渉は、2022年10月に開始した。SAG-AFTRAは、今年5月にビデオゲーム会社から送られた新提案に対し、7月19日に反対提案で返答。SAG-AFTRAは3日間の猶予を与えたが、最終的にパプリシャー側と交渉が決裂し、ポップカルチャーの祭典「サンディエゴ・コミコン2024」の開幕日となる7月25日にビデオゲーム俳優らのストライキがスタートした。だが、4日間にわたって開催されたコミコンでは、ビデオゲーム俳優らの活動はストライキから免除された。SAG-AFTRAのフラン・ドレシャー会長は、ゲーム会社が生成型AIで合成した俳優の音声を作品で使用し、俳優の仕事を奪う可能性があると懸念。AIの使用からビデオゲーム俳優の権利を保護する体制が整っていないと主張し、「企業がAIを悪用し、組合員に損害を与えるような契約には同意しない」と訴えた。
Varietyによると、SAG-AFTRAの主張に対してビデオゲーム・パブリシャーは、「歴史的な賃金引き上げや追加の安全規定など、25の提案うち24で合意点を見い出しており、SAG-AFTRAの懸念に直接応えている」と反論している。ビデオゲーム俳優のストライキにより、アクティビジョン・プロダクションズやテイクツー・インタラクティブ、ディズニー・キャラクター・ヴォイス、インソムニアックゲームズ、エピック・ゲームズ、エレクトロニック・アーツなどの大手パブリシャーが影響を受けることになる。
英国俳優組合エクイティもSAG-AFTRAに連帯
SAG-AFTRAがビデオゲーム会社に対するストライキを開始したことを受け、英国俳優組合エクイティのジョン・バークレー副事務局長が連帯を表明した。
英国の労働法により、エクイティの組合員はストライキに直接参加はできないが、バークレー氏はAIの革新を踏まえ、無規制のAI使用からパフォーマーを保護するための安全策の欠如や健康・安全の問題、賃金の停滞など、英国のビデオゲーム業界における継続的な懸念について強調。英国のビデオゲーム業界が、2022年だけで約2億ポンドの大幅な減税を受けているにもかかわらず、パフォーマーの報酬が業界の成長に追いついていないと指摘し、英国を拠点とするスタジオやプロデューサーに対して透明性を求めている。
なお、SAG-AFTRAが最後にビデオゲーム・パブリシャーに対してストライキを行ったのは2016年10月で、その約1年後となる2017年9月に終了した。