海外作品の国内ロケ誘致や、自国の映画産業を盛り上げるため、世界各国では様々な税制措置および補助金支援などの施策を行っている。
日本では、経済産業省や文化庁などが支援を行っており、国内作品への支援だけでなく、国際共同製作映画支援事業や海外に向けたプロモーション支援、海外制作会社の国内に誘致するための支援などが用意されている。海外作品を例にとると、実際にアーミル・カーン・プロダクション製作、インド人俳優サイ・パラヴィとジュネイド・カーン主演映画『Ek Din』が今年1月に北海道にて撮影され、また新たに米国・フランス・韓国から「海外制作会社による国内ロケ誘致等に係る支援」補助対象作品に選ばれている。そんな中、世界の国々ではどのような支援が取られているのか、2024年に入って報道された記事からいくつか紹介したい。(※記事掲載時点での情報。募集や制作のタイミングにより制度内容が変わる可能性がある)
オーストラリア
Deadlineによると、今年5月に発表され、7月1日より正式に施行されたオーストラリアの新法案では、国内で撮影されるテレビ・映画作品に対するリベート率が従来の16.5%から30%に引き上げられたとのことだ。制作団体AusfilmのCEOケイト・マークス氏は、この変更を歓迎し「これは業界にとって素晴らしいニュースだ。30%のリベートは、国際的なプロダクションに確実性を提供し、何千ものオーストラリアの映画関係者と企業にとって安定した仕事のパイプラインをサポートし、業界の新しい能力と能力への投資を誘発する」と述べている。
このリベートを受けるためには、オーストラリアの制作費の基準額が、映画の場合は1,500万豪ドル(約16億円)から2,000万豪ドル(約21億円)、テレビシリーズの場合は1時間あたり100万豪ドル(約1億円)から150万豪ドル(約1億6,300万円)に引き上げられる。また、少なくとも1社のオーストラリアのポスプロ、デジタル、VFX会社と契約すること、データを取得するための新たな報告書を提出することなどが条件として求められる。さらに、VFXとポスプロのためにオーストラリアを訪れる国際的なプロダクションに対して、30%のポストデジタル視覚効果(PDV)控除も提供される。さらに、地元制作を対象とし、オーストラリア文化テストが義務付けられた40%のリベート制度もある。英国のコンサルタント会社オールズバーグSPI社が、Motion Picture AssociationとAustralia New Zealand Screen Associationに依頼した調査によると、オーストラリアの映画・テレビに対するリベート制度は4年間で、オーストラリアの経済生産高に合計165億豪ドル(約1兆8,400億円)貢献したという。
ドイツ
ドイツ政府は、国際的な映画製作の誘致を目的とした新たなリベートプログラムを2025年度予算に追加することを約束したとThe Hollywood Reporterが報じている。この施策は、連邦政府と州政府からの資金提供により、ドイツでの映画やテレビシリーズの制作費に対して最大30%をリベートするというもの。内閣、議会、州政府の承認を経て、早ければ2025年1月1日に施行される。手厚い施策を提供する他のヨーロッパ諸国との競争に直面しているドイツのビジネスにとって、大きな後押しとなると考えられる。
イギリス
今年3月、英国政府は、10年以上前に開始された既存の映画・テレビなどが対象の税額控除制度を近代化し、予算が1,500万ポンド(約30億5,800万円)以下のインディーズ映画に対して新たな税額控除を導入するとともに、大手スタジオに対する事業税の軽減や追加のVFX控除の導入を発表したとDeadlineが報じている。また政府は、今回の予算で今後5年間に10億ポンド以上の税制優遇措置が追加されると発表。ナショナルシアターの舞台とインフラのアップグレードに2,600万ポンド、国立映画テレビ学校に1,000万ポンドの追加資金を提供するという。
▼その他、イタリア、ポルトガルがそれぞれが打ち出した国内ロケ誘致を含む税制措置も下記記事でまとめている。
Other Sources:ドイツ:Deadline、イギリス: Screen Daily