2桁増収の快進撃を続けたクリーク・アンド・リバーの業績に暗雲? 映像・ゲーム領域の今後は【決算から映像業界を読み解く】#58

映像制作やゲームの受託開発、クリエイター人材の派遣・紹介などを行うクリーク・アンド・リバー社の業績にブレーキがかかった。

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【決算から映像業界を読み解く】#58
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映像制作やゲームの受託開発、クリエイター人材の派遣・紹介などを行うクリーク・アンド・リバー社の業績にブレーキがかかった。

2025年2月期第1四半期(2024年3月1日~2024年5月31日)の売上高が前期比0.8%増の128億円、営業利益が同20.2%減の12億円となったのだ。同社は実質的に6期連続の2桁増収を重ねており、5期連続の営業増益となっていた。2025年2月期も2桁増収、営業増益を予想しているが、軟調な滑り出しとなった。

売上高が伸び悩んでいる一つの要因に、大手ゲームパブリッシャーの案件の縮小がある。ゲーム会社はタイトルの開発の見直しを進めており、中期的に影響を受ける可能性もある。

映像とゲーム領域が売上高の半分を占める

2024年2月期(2023年3月1日~2024年2月29日)の売上高は前期比12.9%増の497億円、営業利益は同3.7%減の41億円だった。2023年2月期の売上高は前期比5.6%の増加だが、このタイミングで収益認識の変更を行っている。従来の収益認識を適用した場合、売上高は10.1%の増加。2019年2月期から実質的に2ケタ成長を続けていた。

決算短信より筆者作成

クリーク・アンド・リバーは事業内容や収益構造がやや分かりづらい会社だ。ただし、展開する事業はIPの開発などを行うライツマネジメント、映像制作やゲームの受託開発を行うプロデュース、人材の派遣や紹介を行うエージェンシーの3つとシンプル。事業領域が映像、ゲーム、マーケティング、メディカル・ヘルスケア、法曹・会計・コンサルティングなどと多岐に渡っており、これが複雑な事業体系に見える要因の一つになっている。

しかし提供しているサービスは基本的には同じだ。法曹・会計・コンサルティング領域では、会計・経理人材の派遣、経理部門の人材育成、会計業務のアウトソーシングなどを行っている。つまり会社の強みは、各領域のプロフェッショナルを多数抱えており、その人材を活用して自らコンテンツを作り(ライツマネジメント)、受託を行い(プロデュース)、クライアントに派遣(エージェンシー)を行っていることになる。

2024年2月期の売上構成比率はライツマネジメントが4%、プロデュースが49%、エージェンシーが47%。ライツマネジメントは周辺事業の一つであり、業績を支えているのは受託と派遣だ。領域別においてTV/映像関連は21.9%、ゲーム26.2%、Web17.4%、医療10.8%となっている。映像とゲームがおよそ半分を占めており、業績へのインパクトが大きい。

大手ゲーム開発会社がタイトルの見直しを図る

2020年2月期の映像領域の利益率は5.1%。2024年2月期は5.9%だ。ほとんど変化していない。その一方で、ゲーム領域は7.6%から11.4%に上がっている。ゲーム業界は技術の進歩が速く、ユーザーが求めるクオリティも年々高まっている。開発には多額の資金を投じるようになった。トーセのようなゲームの受託開発専門の会社も営業利益率を高めていた。

クリーク・アンド・リバーにとってゲームは強化したい領域の一つだったはずだ。しかし、ゲーム業界は転換期を迎えた。大型タイトルの開発中止や見直しをする会社が相次いだのだ。


《不破聡》

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