また、2,000人の消費者に年2回インタビューを行っているAmpereの「メディア消費者行動追跡調査」によると、民放各社は2016年以降、ヨーロッパの主要5市場(イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア)で消費者エンゲージメントが平均16%低下したことが明らかになった。その結果、リニアTV広告市場は過去10年間で10億ユーロ(約1,686億円)近く減少している。
公共放送および民放各社の投資額はほぼ横ばいであるのに対し、ストリーミングの投資額は20%増加するだろうと述べられている。Netflixは、ギネス王朝を題材にしたスティーブン・ナイト脚本のイギリスのドラマシリーズや「グレートウォーター:ヴロツワフの大洪水」の脚本家によるポーランドの番組、イザベル・アジャーニ主演のフランスのTVスリラーなど多数のヨーロッパオリジナル作品を発表。Amazonプライム・ビデオのドイツオリジナル作品「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」は、プライム・ビデオの中で最も視聴された海外(米国外)オリジナルシリーズとなっている。
このように放送局は、資金力のあるストリーミングとの強力な競争、自局のコンテンツ予算へのプレッシャーの増大、視聴者のエンゲージメントレベルの低下という大きな課題に直面しているが、一方で今後数年間は「大手ストリーミングサービスによる支出が鈍化する中、放送局にとって戦略的なチャンスとなる」という。ストリーミング各社は米国外での支出を増やしているが、総合的には支出よりも収益性を重視しており、2021年から2024年までの年平均成長率が35%であるのに対し、ヨーロッパコンテンツへの投資額は2025年には前年比8%増になると予測されているためだ。
加えて、Ampare Analysisのシニアアナリストであるニール・アンダーソン氏は「経済不況下の短期的なコスト削減のメリットはあるものの、コンテンツとストリーミングの両方への長期的な投資を優先することは、放送局各社が熾烈なヨーロッパのテレビ市場で優位性を維持するために極めて重要である」と述べている。