ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下、SPE)が、北米第7位の映画館チェーンのアラモ・ドラフトハウスを買収したことを発表した。
25の都市圏に35の劇場を展開しているアラモ・ドラフトハウスは、館内での飲食(ハンバーガーやピザ、オリジナルカクテルなど)に力を入れ、また私語厳禁という厳格なルールによって映画ファンに一躍人気となった。しかしコロナ禍で大打撃を受け、2021年3月に破産を申請。一方最近は業績も回復し始め、昨年は興行収入が前年比30%増となっていた。
ハリウッドの他のスタジオがストリーミング配信に乗り出す中、SPEのCEO兼会長であるトム・ロスマン氏は、映画館へのコミットメントを表明し、「この契約は、SPEの劇場興行への長年のコミットメントと、体験型エンターテインメントへの継続的な取り組みを強化するものです」とコメント。ソニーはライブ体験の分野にも積極的に進出しており、昨年はエンターテインメント施設「Wonderverse Chicago」をオープン。『ゴーストバスターズ』や『ジュマンジ』のバーチャルリアリティ体験、『ゾンビランド』をテーマにした乗り物、『バッドボーイズ』のレーシングシミュレーターなど、映画に関連したアトラクションをフィーチャーしている。さらに、同社がプロデュースする大人気ゲーム番組「ホイール・オブ・フォーチュン」のライブ旅行ツアーも発表した。
プレスリリースによると、アラモ・ドラフトハウスは新部門ソニー・ピクチャーズ・エクスペリエンスの下で運営されるとのこと。CEOのマイケル・クスターマン氏も留まるが、今後はSPEのプレジデント兼COOであるラビ・アフジャ氏の直属となる。また、ホラーからSFまで様々なジャンルの映画に焦点を当てた映画祭「Fantastic Fest」もこの買収に含まれている。なお、The Hollywood Reporterによると、1948年から2020年まで米国司法省が映画配給会社が興行会社を所有することを禁じていたため(パラマウント訴訟)、ハリウッド大手スタジオが映画館を所有したのは2020年に廃止されてから(一定の例外を除き)初の出来事で、実に75年ぶり。「この規則は1980年代に一部で緩和され、ソニーやユニバーサルを含むスタジオが特定のチェーン店の様々な株式を購入したが、結局のところ経済的な意味はなかった」とのこと。2000年以降に映画館を買収したのはNetflixとAmazonのみであり、どちらも大スクリーンでオリジナル作品を上映することとそれらの作品を賞の選考対象とするために買収していた。