米国最大の映画館チェーンAMC、物議を醸した「座席位置で異なる料金システム」を撤回

新料金システムの試みは、AMCが期待したような結果を出せなかったようだ。

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Photo by Scott Olson/Getty Images AMCシアター

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今年2月、アメリカ最大の映画館チェーンであるAMCが、座席の場所に応じてチケット価格が増減する新料金システム「Sightline at AMC」をニューヨークとシカゴ、カンザスシティで試験的に開始した。しかしAMCは、それから半年も経たないうちに同計画を撤回すると発表した。

「Sightline at AMC」の内訳は、最も一般的な座席で従来のチケット料金にて利用できる「スタンダードサイトライン」、主に前方の座席および障害を持つ人がアクセスできる一部の座席に適用され、無料のAMC Insider会員を含むAMC Stubs会員にのみ安価で提供される「バリューサイトライン」、中央部の座席で標準席よりも少し割高となる「プリファードサイトライン」となっていた。


Business Insiderによると、一部の映画館における新料金システムの試行では、望ましい結果が得られなかったという。 最前列の割引チケットは、より多くの観客を映画館に引き付けるには至らず、通常より高額な座席を選ぶと期待されていた観客の25%が、割増料金を理由にチケットを購入しなかったとのこと。

AMCはプレスリリースにて、「AMCのチケット価格の競争力維持を確実にするため、Sightline at AMCは今後の数週間で試行が終了後、現在テストを行なっている地域でも継続せず、全国的にも展開されません」と説明している。しかし、観客を劇場に引き付け、チケットの売り上げを再活性化させるAMCの試みは続くようだ。Varietyによると、AMCの次なる計画では映画館の最前列のみに焦点を絞り、2023年末までに新しいタイプの座席を試験的に導入する予定だという。

AMCは声明にて、「次の革新的な取り組みとして、広々とした最前列の座席を充実させ、座席のリクライニング機能を強化する予定です。広く快適なラウンジスタイルの座席エリアでは、観客は背もたれに横たわってくつろげます。また座席の角度により、スクリーンに最も近い最前列席からの映画観賞がより楽しくなるでしょう」と述べている。

「Sightline at AMC」が発表された際、この新料金システムがソーシャルメディアで非難の対象となり、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの主演で知られるイライジャ・ウッドが声高に非難。 「映画館は全ての人にとって神聖かつ民主的な場だし、今までもずっとそうだったはずだ。AMCシアターによる、この新システムは必然的に低所得の人を不利にして、高所得の人に報奨を与えることになってしまう」とツイートしていた。

《Hollywood》
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ロサンゼルスに11年在住していた海外エンタメ翻訳家/ライター。海外ドラマと洋画が大好き。趣味は海外旅行と料理、読書とカメラ。

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