東映は『ONE PIECE』『SLAM DUNK』大ヒットの反動から抜け出すことができるか【決算から映像業界を読み解く】#51

アニメーション映画の大ヒットを飛ばした東映がその反動に苦心している。

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東映は『ONE PIECE』『SLAM DUNK』大ヒットの反動から抜け出すことができるか【決算から映像業界を読み解く】#51
東映は『ONE PIECE』『SLAM DUNK』大ヒットの反動から抜け出すことができるか【決算から映像業界を読み解く】#51
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アニメーション映画の大ヒットを飛ばした東映がその反動に苦心している。

2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)は1.7%の減収、2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)は9.0%の減収を見込んでいる。今期は純利益を前期比22.7%減の108億円と予想しており、決算発表後に東映株は失望売りが加速。5月15日の高値3,870円から5月24日は一時12.1%安い3,405円をつけた。

ただし、東映は映像事業の強化に向けた様々な取り組みを行っており、結果を出すステージに立たされている。

映画セグメントの売上高は6割減少

東映は『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットで、2023年3月期の売上高は前期の1.5倍となる1,743億円、営業利益は2倍の363億円に急増した。『ONE PIECE FILM RED』は興行収入200億円、『THE FIRST SLAM DUNK』は158億円を超えたモンスター級の映画だ。『THE FIRST SLAM DUNK』は2024年1月23日に復活上映をしているが、1日で1.3億円を稼いでいる。

2024年3月期は『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』(30.4億円)、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(27.8億円)、『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』(23.8億円)を公開したが、3桁億円台のメガヒット作には恵まれなかった。

ただし、反動減の影響は限定的だ。東映は2024年3月期の期首予想において、売上高を前期比16.7%減の1,452億円と予想していた。実際の着地は期首予想のおよそ1.2倍だった。

決算短信より筆者作成

2024年3月期の映像関連事業における、映画セグメントの売上高は98億円。前期よりも143億円低く、6割減少している。映像関連事業全体で91億円(6.8%減)の減収だった。好調だったのが建築内装関連事業だ。売上高は86億円で、前期の38億円(81.4%増)のプラスだった。

建築内装事業は100%子会社東映建工が手掛けるもので、映画館や劇場施設、飲食店、商業施設などの建築、リニューアル工事などを行っている。2024年3月期はシネコンの新規工事、改装工事、マンション建築などを受注して大幅な増収となった。

つまり、2024年3月期は主力の映像関連事業は予想通り落ち込んだものの、建築工事が思いのほか好調で業績を支えることができたというわけだ。

2023年の中国洋画興行収入ランキングでスラムダンクが3位に

注目したいのは、映画セグメントの売上高が6割も減少したにも関わらず、映像関連事業全体が6.8%の減収で済んだことである。下支えしたのが映像配信やDVDの販売、海外上映権販売などのコンテンツセグメントだ。売上高は前期比2.6%増の841億円だった。

DVDの販売は『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の2作によって前期の1.4倍に増加。そして海外配信権、海外上映権で売上を伸ばした。『THE FIRST SLAM DUNK』は中国だけで興行収入が134億円を超えている。2023年の中国における海外映画の興行収入において、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』、『すずめの戸締まり』に次いで3位となった。

中国の海外映画年間興行収入ランキングにおいて、日本の作品が上位を占めるのは珍しい。『トランスフォーマー/ビースト覚醒』、『オッペンハイマー』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』などの大作も上映されたが、日本のアニメーションが上位に食い込んだ。巨大な中国市場で人気を獲得できた意義は大きいだろう。

テレビ朝日とパートナーシップを構築

2025年3月期は、『帰ってきたあぶない刑事』、『35年目のラブレター』、『逃走中THE MOVIE』、『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』などの公開を予定している。


《不破聡》

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