世界を魅了する日本キャラクターの今と未来——「サンリオ」「ちいかわ」が語るキャラクタービジネスの最前線

2025年7月4日(金)、「キャラクタービジネスの最前線」と題した特別セミナーがコンテンツ東京2025の中で開催。キャラクター・データバンク代表取締役の陸川和男氏がモデレーターを務め、株式会社サンリオ 代表取締役社長の辻朋邦氏と、株式会社スパイラルキュート 代表の…

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世界を魅了する日本キャラクターの今と未来——「サンリオ」「ちいかわ」が語るキャラクタービジネスの最前線
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2025年7月4日(金)、「キャラクタービジネスの最前線」と題した特別セミナーがコンテンツ東京2025の中で開催。国内外のキャラクター市場に精通するトッププレイヤーが一堂に会し、キャラクタービジネスの最新動向や戦略、グローバル展開の鍵について議論されました。

キャラクター・データバンク代表取締役の陸川和男氏がモデレーターを務め、株式会社サンリオ 代表取締役社長の辻朋邦氏と、株式会社スパイラルキュート 代表の川上洋一氏が登壇しました。

日本のキャラクター商品市場の現状と拡大の背景

講演の冒頭で、日本のキャラクター商品市場の現状について詳細な説明がありました。 2024年における日本のキャラクター商品市場規模は、前年比103.4%増の1兆6,860億円となり、大きく伸長しています。 これは、キャラクター・データバンク株式会社が統計を開始して20年以上で、2014年の妖怪ウォッチやアナと雪の女王が好調だった時期とほぼ同水準の規模です。 このデータはフィジカル商品のみの市場規模であり、デジタル商材(デジタルコンテンツ、オンラインゲーム内アイテムなど)を含めると、市場規模は2兆円を超えるのではないかと陸川氏は述べました。

市場規模を牽引する主な要因としては、以下の点が挙げられています。

  • インバウンド消費の拡大: 2024年の訪日外国人数は約3,700万人、消費金額は8兆円を突破し、いずれも過去最高を記録。 外国人比率が8割を占める店舗も存在し、インバウンド消費がキャラクター消費全体に大きな影響を与えています。

  • キダルト市場の拡大: フィギュア、プラモデル、カードゲーム、ぬいぐるみなど、キダルト層までを対象とした商品分野が好調に推移しています。

  • SNSの影響力拡大: コロナ禍を境に情報入手経路がテレビからYouTube、X(旧Twitter)、Instagramへと大きく変化しました。

  • 推し活の定着: 推し活人口は国内で1,400万人、市場規模は3.5兆円を超え、グッズの購入が3割を占めています。 推し活がメディアで取り上げられなくなったのは、それが日常に定着したからという見方もできます。

  • クリエイターエコノミーの拡大: SNS発の個人クリエイターによるキャラクター(例: スパイラルキュート社のキャラクター群)の影響が拡大し、SNS派生型IP(Intellectual Property: 知的財産)市場が顕在化しています。

  • 定番キャラクターの好調: ブランド価値が定着している定番キャラクターは、コストパフォーマンスを重視するZ世代やα世代にとって安心できる存在となっており、市場を牽引しています。

  • 体験型消費の活発化: テーマパーク、展覧会、ポップアップストアなど、キャラクターの世界観を体感できる場が非常に活発化しています。

サンリオ:ハローキティ依存からの脱却とIP多様化戦略

辻氏は、サンリオが2025年3月期に売上1,449億円・営業利益518億円と過去最高益を記録した背景について説明しました。中でも注目すべきは「脱ハローキティ一本足」の取り組みです。

「10年前はグローバル売上の約7割をキティが占めていました。現在は約3割に減少していますが、これはキティの売上が落ちたのではなく、他のキャラクターが伸びたからです。多角化により、IPのボラティリティ(価格変動性)からの脱却を図りました」と語り、

ソーシャルメディア戦略の強化として常に話題性のあるコンテンツを発信し、シナモロールやクロミなど複数キャラクターが各市場に存在することで「誰かが市場の前線に立っている状態」を維持できていると見解を示しました。

価値創造サイクル(プロモーション→SNS拡散→ライセンス展開→ブランド価値向上)を国内外で回していくことでIP全体の成長につながっているとまとめました。

スパイラルキュート:「ちいかわ」の快進撃とSNS時代のキャラ戦略

川上氏は、「ちいかわ」の商品展開から約5年経過して、なお人気が衰えない背景について「常に新しい体験とクリエイティブの提供」を挙げました。

例えば「ちいかわパーク」のような体験型施設、「ちいかわラーメン豚」や「ちいかわベーカリー」といった常設飲食店、アプリ「ちいかわポケット」のリリース(DL数350万超)、海外展開など、話題を切らさない工夫を重ねてきました。「去年よりも今年、今年よりも来年」という意識で、クリエイティブの質を重視しているようです。

また、グローバル展開も急拡大しています。中国・台湾・東南アジアを中心に高い人気を博し、2024年には上海や台湾で大規模イベントを開催。ロサンゼルスには「スパイラルキュート・インターナショナル」を設立し、北米市場本格参入への準備も整えつつあります。

「我々の中では“グローバル展開”という言葉はもう使わない傾向になってきています。例えば、日本と中国で同日に商品を発売している実績などからも国境はなくなってきています」と語り、キャラクターの流通におけるスピード感を強調しました。

海外市場攻略のポイントと課題

セミナーの後半では、辻氏と川上氏からグローバル展開を成功させる上でのポイントと課題を整理したまとめがありました。

辻氏は、価値の蓄積と価値の創造というキーワードを掲げ、顧客がいつでもどこでもプロダクトやキャラクターに触れられる現代において、どのような価値を提供できるかが重要です。 ショート動画や広告など最初の接点(タッチポイント)で価値を創造し、質の高いコンテンツを提供することで価値を蓄積していくブランド構築の大切さと、話題性を維持しつつ、多角化戦略やキャラクターのブランディングを継続するブランド依存からの脱却が鍵だとコメントしています。

川上氏は、認知度向上とエンゲージメントの獲得という観点では、SNSを駆使し良質なコンテンツ(動画、アニメーションなど)を制作することで、インプレッションとエンゲージメントを高めることの重要性や、「世界基準で良いものを作る」という側面でのグローバル展開や海外進出という言葉を使わずとも「これが日常」という意識で、世界中の人がシェアしたくなるようなインパクトのあるコンテンツ制作を目指していくべきと提唱しました。


キャラクター市場に精通する3者の座談会を通して、時代の変化への即応・SNS・ライセンス・リアルイベントを巧みに組み合わせる緻密なビジネス戦略が共有されるセミナーとなりました。

《杉田大樹@MediaInnovation》